意識しないという意識がすでに意識しているような気がする。
どうでもいい回。そして本当に時間がない。誤字報告を受けていてもそれを直す暇がない(指摘してくださっている方々、本当にありがとうございます。そして、本当に申し訳ございません)。
そして更新が遅れまくっており本当に申し訳ないです。今週が終わればまた普通に投稿できると思います。
太陽と蒼の仁義なきジャンケンは、両方がゼロ勝ゼロ敗二百三十五引き分けという戦績で終わりを告げた。ジャンケンをやるたびにこんな感じで勝負がつかないというのに、どうしてこの二人は頑なにジャンケンをし続けるのだろうか? 謎だ。
で、そのアホな勝負を延々と繰り返していたアホ二人は、ダイニングテーブルにて俺の作った朝食に舌鼓を撃っている。太陽は和食で、蒼は洋食。ええ、作りましたよ両方。まぁ、せっかくの夏休みだし、学校がある時にゃできないことだからね。たまにはこういうことがあってもいいさ。
俺? 俺は蒼と同じく洋食にしたよ。トーストをコーンスープに浸して食べたい気分だったのさ。
顔を綻ばせて料理にがっつく二人に、感想を聞こうと声をかける。まぁ、見ているだけで大体わかるんだけどね。それでも、こういうのって本人の口からききたいじゃないか。
「で、満足してくれたか?」
「おう! 満足も満足、大満足だぜ! やっぱり流の味噌汁は最高だな!」
「ん、大々満足。このふわふわのオムレツは最強」
「そりゃよかった。一人一人メニュー変えるのってかなりめんどくさいんだがな。やった甲斐があったようで何よりだ」
「はっはっはっ、流の和食が美味しすぎるのが悪い!」
「ん、流にぃの完璧な洋食がわたしを魅了するのが悪い」
「……何言ってんだ蒼、和食に決まってんだろ? 議論の余地もない完璧なQ.E.Dだ」
「……そっちこそ。洋食に決まってる。それは世界によって定められた絶対の理」
「………………」
「………………」
「「――――ジャン……ケン……ッ!!」」
「お前ら、それ以上同じことを繰り返すと、明日からの朝食は自分で作って貰うぞ?」
「「ごめんなさい」」
双子ならではの見事なシンクロで頭を深々と下げる二人の姿に、ため息を吐く。まったく、こいつらは……。
そのあとは、特にこれといった問題も起きず、朝食タイムは終了。いつものように食器を流し台に運び、洗い物を開始する。
皿を洗剤まみれにしながら、文庫本の続きを読み始めた蒼に声をかける。
「蒼、ちょっといいか?」
「ん。何?」
「今日の午前中なんだが、何時くらいにどこに行けばいいかを先におしえてくれるか? その時間に合わせて家のことを終わらせとくから」
「つまり、待ち合わせ……。流にぃと二人で待ち合わせ……。いい響き」
「はいはい、言ってろ。で、時間と場所は?」
「んー……。時間は九時半。場所はトロワヴィレの噴水広場。あと……できれば、戦闘装備じゃなくて、日常装備で来てほしい」
「日常装備って言うと……。ああ、分かった。アッシュからいくつか貰ってたのがあるから、それを着ていく」
「……アッシュ、ぐっじょぶ!」
虚空に向かって親指を突き上げる蒼は放っておこう。なんとなく、サムズアップを受けたアッシュが苦笑を浮かべた姿が思い浮かんだ。
日常装備か……。どんなのがあったか、あっちに行ったら確認しないとな。
そんなわけで、速めにログインするためにも、家事を迅速に終わらせよう。水回りは明日に回すとして……。うん、今日は洗濯と掃除くらいにしておこう。買い物は……冷蔵庫の中身を見る限り、あと二日は持つか。まぁ、明日にでも一週間分を買っておかないと。太陽と蒼のぶんもあるし、どうしても量が多くなりそうだ。……あ、そういえば、洗剤が切れかかってたっけ? うーん、この際だから、日用品も買ってしまおうか。そうだな、その方が後々楽かもしれない。特売とかやってないか、今日の夜にでもネットで調べておこうか。さ、そうと決まれば洗濯物から。天気がいいし、布団を干したい。まぁ、それも明日だな。FEOをやるとなると、最低限マットレスはいるし。床に寝てやるのはきついよなー。布団といえば、あの二人はちゃんと布団畳んでるのだろうか? ……やっぱり、三日に一回くらいの頻度で布団を干す必要がありそうだな。夏は特に汗をよく掻くし、最低でもファブ〇ーズで除菌と消臭を毎日させるとか……。うん、買い物リストに追加。このままだと、明日は買い物で一日が潰れそうだな。二人にも手伝ってもらう……いや、一人で行った方が効率的かもしれんなぁ。
そんなことを考えながら、てきぱきと動くこと一時間。夏の暑さに汗だくになりながら、洗濯物と掃除を終わらせる。掃除機だけで終わらせるつもりが、拭き掃除までしてしまったが……まぁ、時間は余裕だし、大丈夫だろ。
で、後は日課というか夏休みの宿題なんだけど……。正直、もうほとんど終わってるから、そう急ぐ必要もないんだよなぁ。今日一日サボったところで、八月に入るころには完了しているはずである。
そんなわけで、時刻は八時五十分。服装を見繕う時間を考えると、そろそろログインしておいた方がいいだろう。
というわけで、ログインしました。
昨日ログアウトした宿屋の一室。俺はメニューを呼び出し、装備欄を開く。いつもの戦闘用の装備が並んでいる項目を確認した後、装備変更をタップ。出てきたウィンドウを確認する。
アッシュからもらった日常装備は、過度な装飾のないシンプルなデザインのものばかりである。俺の服装の好みと完全に一致している。アッシュは俺の好みすら見抜いていたのか……その慧眼、恐れ入ったぜ。
俺はその中から襟に赤いラインの入った半袖白シャツを選ぶ。下は細身のボトムで、色は黒。何も考えなくていいコーディネートである。シンプルイズベストって言葉素晴らしいよね。
『装備を変更しますか?』というウィンドウにYESと答え、装備がパッと切り替わる。現実でも欲しいな、この超早着替え機能。
着替え終わった自分の体を見つめ、おかしいところがないかチェック。……うん、問題無し。それじゃあ、出発しようか。これからサファイアと待ち合わせをして、一緒に街を回る……そう、今更なことを今更確認すると、少しだけ緊張してしまった。……俺は何に緊張しているんだ? 昨日もそうだけど、なんかおかしいな。
もしかして……意識してるとか? ……はは、ないない。何考えてんだか、俺。
これがアッシュと二人っきりとかだったら緊張するのもわかるけど……サファイアだぞ? 妹と街を歩くのに何を緊張する必要があるってんだ。馬鹿馬鹿しい。
うーん、やっぱり少し寝不足なのだろうか? それとも、FEOを始めたことで精神的な疲労でも溜まっていたのかもしれない。今日は早めに寝るに限るな、うん。
そう結論付けた俺は、昨日感じたざわつきも今の緊張も忘れようとして……何故かそれに失敗し、結局頭の片隅に追いやっただけに終わった。
次回、デート回だぜ!
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