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ソロ神官のVRMMO冒険記 ~どこから見ても狂戦士です本当にありがとうございました~  作者: 原初
二章 ランクアップ編

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にぎやかな朝

前回の少しだけ意味深な引き。

その次話がこれである。

「おはようだぜ! 流!」


「……ん、おはよ。流にぃ」


「………………」



 目を覚ました時刻午前六時。いつも通りの時間である。

 昨日は寝る時間が少し遅かったせいで、体にダルさが残っている。

 けど、さっさと起きて朝ご飯を作らなければいけない。俺が食事を作ることを放棄したら、あっという間に餓死者が二名出来上がりである。

 なんとなく虚しい気分になった心に何とか気合を入れ、いつも通りキッチンへと向かった俺の目に、信じられないモノが映っていた。


 ニパっ、と腹が立つほどに明るい笑顔を浮かべた太陽が、ダイニングテーブルに座って携帯ゲーム機をピコピコしていた。その対角線上には、カバーをかぶせた文庫本を読んでいる蒼の姿。

 ……お、俺より先に、こいつらが起きている……だと?


 ちらりと時計と窓の外を確認する。時間は六時十分。外は朝日に照らされている。うん、時間を間違えたか、午後六時まで寝てしまったのかと思ったが、そうではないようだ。


 時間を間違えた訳でも、午後午前を間違えたわけでもないとすれば……なるほど、夢か。やたらリアルだけど、夢だなこれは。うんうん、間違いない。俺が起こすことなく二人が起きてきてくれたらいいなーという俺の願望が、夢にまで現れてしまったのだろう。うん、いい夢を見せてもらったよ。俺は満足だ。というわけでそろそろ目覚めてくれませんかね、俺?



「おーい、流。何考えてるか大体わかるけど、それは違うぞー?」 


「流にぃ、これは夢じゃない。現実」


「……はっはっは、面白いことを言うなぁ、太陽、蒼。お前らが俺より早く起きる? そんな天変地異が現実に起きるわけないじゃないか。いやー、それにしてもリアルな夢だなー。けど、そろそろ起きたいんだけどなー」


「「そこまで言うかッ!!」」



 ……ふぅ、さてと。ふざけるのはこのくらいにしておこうか。



「で? 一体どういう風の吹き回しだ? 返答によっては災害用の備えを充実させなければいけないんだが……」


「あー、稀なことが起こると雪が降るってやつか? ……って、俺らが起きてきたことは、災害が起こるレベルで稀なのかよ! ただたんに流をどうやって【フラグメント】の皆に紹介しようか考えてたら、寝られなかっただけだ!」


「わたしは、流にぃとのでー……街を案内するのが楽しみで寝れなかった」


「子供かお前らは……ッ!!」



 予想以上にあほらしい理由に思わず頭を押さえる俺。まんま遠足前の小学生じゃねぇか……。高校生にもなって何やってんだか。

 ……まぁ、童心を忘れないのがこいつらの良いところだと思っておこう。



「まぁ、俺に起こされることなく起きてきたのは、素直によくやったな。えらいぞ、二人とも」


「へへっ、それほどでもあるな!」


「ん、流にぃに褒められた。うれしい」


「これが、明日からも続くといいんだが……なぁ?」


「「………………」」



 無言でそっぽを向く二人。はいはい、分かってましたよ。例外だろ例外。まぁ、こいつらがいきなり規則正しく模範的な生活なんて始めたら、俺の調子が狂う。……あれ? もしかして俺、毒されてる?


 ふと浮かんだ嫌な考えを振り払い、ダイニングテーブルの上に畳んで用意してあったエプロンを素早く身に着ける。何はともあれ、さっさと朝食を作ってしまおう。



「まぁ、珍しいこともあったことだし、朝食を和食にするか洋食にするかくらい選ばしてやろう。二人とも、どっちがいい? ちなみに、和食はご飯に味噌汁焼き魚に漬物。洋食はパン冷たいコーンスープオムレツ付け合わせのサラダな」



 キッチンに立ち、テーブルでだらける二人にそう声をかけると、二人そろってむっ、と眉をひそめた。考え込む姿がそっくりで、こういうところは双子なんだよなーと再確認してみたり。

 で、二人が出した答えは……?



「やっぱり和食だろ! 俺は流の味噌汁が毎日飲みたいぜ!」


「考えるまでもない。流にぃのふわふわオムレツは最強。ゆえに洋食」



 分かれるのかよ。そこはびっしりシンクロさせろよ。双子として。



「……蒼。お前、それはないんじゃないか? 確かに流の食事はどれも絶品だ。けどよ、やっぱり日本男子である流なら、和食が一番に決まってるじゃねぇか。それに、洋食だと高確率でサラダにレタスが入ってるだろうが!」



 太陽よ。和食が上手に作れることと俺が日本男子であることは何も関係ないぞ? そして好き嫌いは早く治しなさい。



「……太陽こそ。考えが浅はかすぎる。洋食こそが流にぃの力が最も発揮される料理。その証拠に、流にぃのレパートリーは洋食の方がおおい。あと、昨日は和食だった。わたし的に、そろそろ流にぃのオムレツ成分が足りない」



 蒼よ。レパートリーが多いのは、単純に洋食の方が和食よりも種類が多いだけだ。あと、お前はオムレツが食べたいだけだろ。


 二人の不毛な争いを見つめながら、いっそ中華かベトナム料理にでもしてやろうかと思い始めていた俺を尻目に、二人の主張のぶつかり合いは激しさを増す。



「こ、こ、は! 兄である俺の顔を立てるべきじゃないか? 妹よ」


「ふっ、そこが太陽が流にぃに絶対に勝てない要因。お兄ちゃんとは、なんだかんだで妹に優しいもの」


「……引く気は無いようだな?」


「……そっちこそ」


「……………………」


「……………………」



 無言でにらみ合う二人。太陽は携帯ゲーム機を閉じて机に置き、蒼は文庫本にしおりを挟んで机に置くと、ゆっくりと椅子から立ち会がった。


 そして、じりじりとダイニングテーブルから離れ、互いに身体を緩やかに動かし、何やら中国拳法っぽい構えをとった。二人の背後に、稲妻を背負う龍と虎の姿を幻視した。気がした。



「「――――最初は」」



 にらみ合う二人は、まったく同じタイミングで、全く同じ言葉を放つ。



「「――――グーッ!!」」



 ガッ! と握られる拳。二人の間に漂う緊張間は最高潮にまで高まっていく。そう、それはまるで、映画のクライマックスシーンが如くの迫力。どこからかBGNすら聞こえてきそうである。



「「ジャン…………ケンッ!!」」



 その言葉と共に、二人の手が動き始める。お互い、目の前の敵だけを見据え、そして、その先にある自分の勝利だけを目指す。

 

 そして、戦いの火蓋は切って落とされた。



「「ポンッ!!!!」」



 振り下ろされる拳と拳。仁義なき戦い(ただのジャンケン)の初手は、互いにグー。あいこだ。



「……なかなかやるじゃないか、蒼」


「……そっちも」


「ふっ、だがな……。教えてやるよ。兄より優れた妹など存在しないということを!」


「太陽に負けるわたしじゃない。勝って、流にぃのオムレツを……ううん。流にぃを手に入れるのは、わたし!」



 いつの間にか賭けの対象が変わっている気がするが、まぁどうでもいい。


 無駄に熱いバトルマンガ感を出す二人は、視線を一瞬だけ交錯させると、素早く次手を繰り出しあった。



「「あいこで、しょッ! あいこで、しょッ! あいこで、しょッ! あいこで、しょッ! あいこで、しょッ! あいこで、しょッ! あいこで、しょッ! あいこで、しょッ! あいこで、しょッ! あいこで、しょッ! あいこで、しょッ! あいこで、しょッ! あいこで、しょッ! あいこで、しょッ! あいこでェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッ!!!!」」


 

 こういうところで発揮される、双子特有の息の合いよう。はっきりと言わせてもらおう。アホである。


 永遠とあいこを繰り返す二人を丸っと無視して、朝食の準備に取り掛かる。もうあのバカ二人には付き合ってられん。


 コンロに置いたフライパンに油をひき、ボウっ、と火をつける。ちらりと、視線を太陽と蒼の方に。…………まったく、しゃあないなぁ。



「さてと……洋食も和食も両方やるか」

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