戦闘終了と変化
昨日はすみません。時間が……時間がなかったんです。いや、本当に。
「……ふぅ。戦闘終了っと」
そこそこ長かったゴーストライダーとの戦いは、俺の勝利で幕を閉じた。
渾身の【エコーブロウ】であの亡霊騎士をぶっ飛ばした後は、もう完全にただの殴り合いになっていた。俺は紅戦棍でゴーストライダーを殴り砕くことだけを考え、ゴーストライダーも、俺を刺し貫くことだけに執着していた。
まぁ、真っ向からの殴り合いなら、回復手段があり、そもそも基礎ステータスの段階で有利な俺が負けるわけない。ちゃんとトドメは頭蓋を砕いてやったぜ!
いやー、久しぶりに心躍る戦いができて、俺はとっても満足だ……って、こういうことを自然と考えるあたり、俺ってやっぱり戦闘狂なのか……? い、いや、そうじゃない。RPGで戦闘を楽しむのは恋愛ゲーで恋愛を楽しむのと変わらない。要するに、俺は何もオカシクナイ。ボク、セントウキョウジャナイヨ。
ま、まぁ。それは置いといて……。とりあえず、戦利品を確認しようかな? ここんところ、敵が弱すぎたせいでレベルも全く上がってなかったからね。さすがにボスならレベルも……。うん、上がってる。一レベだけ。これで36レベである。
スキルの方は……。うーん、《治癒魔法》、《付与魔法》、《メイス使い》の最初期から持っているスキルや、《格闘術》、《強力》などの、ディセクトゥム戦でレベルマックスになってしまったスキル群がやっぱり気になる。これ、スキルが進化やらパワーアップやらしないんだろうか? それ以外だと、《夜目》が結構育っていた。ずっと暗かったもんね。夜の探索ではこれからもお世話になります。
さてと、レベルアップで得たSP6ポイントは、STRとMINDに3づつ振り分けてっと。次のレベルアップではDEFとAGIに割り振ろう。こうやって必要なステをバランスよく育てるのだ。まぁ、バランスを考えるなら、AGIとDEFを優先すべきなんだけどね。
それで、ドロップアイテムはどうかなっと。
えっと、魔石に、素材に……お、スキルブックがある。えっと、《霊体化》のスキルブック、か。
霊体化というと……。あの物理攻撃が全く効かなくなるアレか? そいつは有能そうなスキル……って、霊体化状態だと魔法で受けるダメージが二倍になる? しかも、魔法防御が無視されるのか……。ダメじゃん。回避を主体にするヤツなら使えそうだけど、俺みたいにダメージを受けることを前提にしてるヤツには向かないな。……どうでもいいけど、『ダメージを受けることを前提にしているヤツ』ってどう考えてもやべーヤツだよなぁ……いまさらだけど。
で、このスキルの扱いだけど……あ、そっか、アヤメに覚えさせればいいのか。アヤメはヒット&アウェイが基本だし、スキルに《回避》がある。このスキルを覚えさせるにはピッタリじゃないか? うんうん、これでアヤメがダメージを受ける可能性がまた下がったな。
……ついでに、ディセクトゥム戦で余ってる《絶気》も覚えさせようかな? ちなみにこれは、どんな状況だろうとほんの一瞬だけ相手から認識されなくなるという、紅月の試練の報酬にふさわしいスキルだ。ディセクトゥムがいつの間にか後ろに回ってたりしたのは、このスキルを使っていたのだろう。
「ふぁわ……。って、ンなことは明日考えるか……。眠い……」
時刻はもう少しで日をまたぐくらい。いつもならベッドにもぐりこんでいる時間である。夏休みだからといって、夜更かしをして生活リズムを狂わせるつもりはない。ディセクトゥム戦みたいなのは例外だ例外。
というわけで、さっさとトロワヴィレに行きましょうか。そんで、とっととログアウトだ。アンデッド共の相手は、ホラーが平気でも結構精神に効いている。こればっかりは、MINDが高かろうが関係ない。
また込みあがって来そうなあくびを噛み殺し、俺は古城のホールの中心で輝きを放つ魔法陣に乗った。
―――視界が、暗転する。
一瞬で目の前の景色が不気味な古城から、夜闇に沈む街並みに変わった。無事にトロワヴィレに来ることができたようである。
トロワヴィレがどんな場所かが気になるが、それは明日になればサファイアが教えてくれる。今はおとなしく宿屋を探してログアウトしよう。
昼間になれば活気で満ち溢れているであろう街並みを視界に納めてから、俺は宿屋を目指して歩き始める。
歩きながら考えるのは、明日のこと。【フラグメント】との顔合わせのこと……ではなく、蒼との約束のことだ。
二人で街を見て回り、案内をしてもらう約束。まるで、というか客観的にみたら完全にデートである。まぁ、似たようなことはリアルでも何度もやっている。別に、意識するようなことでもない。ないはずなんだが……。
どうにも、明日のことを考えると、心がざわついた。その身に覚えのないざわつきに首を傾げるも、それが何なのかは分からない。今までに感じたことのない感情の波。だが、それは不思議と嫌な気はしなかった。
宿屋にたどり着き、ログアウトをし、ベッドにもぐりこんで眠りに落ちるまでの間、心のざわつきについて考えていたが、結局答えらしき答えは出なかった。
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