VS 死霊騎士! にっ!
真面目に執筆する時間が……。
交差する紅戦棍と騎乗槍。甲高い金属音が奏でる演奏が、暗闇に響き渡る。
「ハァアアアアアアッ!!!」
「ォォォォオオオオオオオオオッ!!!」
下から掬い上げるようして放たれた打撃を、ゴーストライダーは騎乗槍で器用に受け流す。そして、反撃には戦馬の踏みつけがリューを襲う。
紅戦棍を握る両手から片手だけを外したリューは、その手で上から襲い掛かる戦馬の蹄を強引に受け止めた。がりがりと容赦なく削れるHPを【ヒール】で持ち直し、蹄を握る手に力を込める。
「オラァッ!!」
裂帛の気合と共に、リューは戦馬の蹄を押し返した。それは、技も何もない純粋な力(STR)の結果。ステータス上での有利が自分にあることを理解したリューは、戦い方をさらに激しく、苛烈に、荒々しく加速させていく。
上段からの振り下ろし。それを地面にたたきつけた反動をそのままスイングの力に変えた打ち上げ。バツ印を描くように二連を交差させ、体を思いっきりひねって横薙ぎの一撃を繰り出す。
殴る、殴る、殴る。シンプル故に強力なリューの戦い方は、ゴーストライダーの甲冑をどんどん凹ませていき、HPを確実に削っていく。
反撃は気にしない。戦馬が放つ鬼火の渦も、騎乗槍での薙ぎ払いも、連続突きも、そのすべてを一身に受けながらも攻める手は止めず、前に出る足は鈍りもしない。
戦っている相手からしたら、地獄以外の何物でもない。そして、相変わらず神官っぽさなど見る影もなかった。
「あと五割か……。何気に堅い! だがそれがいい!」
戦闘中のテンションから、後から思い返したら確実に悶絶するようなことを口走りながら、リューは一際力を込めた渾身の一撃を繰り出す。
その瞬間、ゴーストライダーの兜に隠された目が、怪し気に光を灯した。
「なにッ!?」
リューの放った渾身の一撃は、ゴーストライダーに当たることなく空を切った。いや、より正確に表現しよう。
ゴーストライダーに命中したのにもかかわらず、その体をすり抜けるようにして、攻撃が外れたのだ。
それは、レイスと戦ったときに起きた現象によく似ていた。
リューが驚いている隙をついて、ゴーストライダーが大きく跳躍する。一気に古城の天井付近まで飛び上がったゴーストライダーは、身にまとう蒼白いオーラを膨れ上がらせる。
そして、ゴーストライダーは騎乗槍にオーラを迸らせながら、地上にいるリューに向かって高速で落下していく。
「ォォォォオオオオオオオオオッ!!」
亡者の呻きと共に迫るゴーストライダーを前にして、リューは……口元に浮かべている笑みを、さらに深くする。
「……【エンチャントブースト】。こいッ!」
力強く地面を踏みしめ、紅戦棍を両手で握りしめる。自分にかかっている強化魔法の効果を一時的に上げた。迎え撃つ準備万全のリューは、上を見上げ、笑みを挑発的なものに変えた。
そして、両者は交錯する。リューの紅戦棍とゴーストライダーの騎乗槍が激突し、あたりに衝撃波がまき散らされた。ただでさえ壊れかけていた古城の床に大きくひびが入る。
「くはっ! 重たいなァ! けど……俺の勝ちだ」
リューはそう言うと、拮抗している紅戦棍にさらに力を籠める。ぎりぎりと押し返されていく騎乗槍。ゴーストライダーの巨体が徐々に浮かび上がっていく。
このままリューが押し切ろうとしていた拮抗は、またもや霊体化したゴーストライダーがすり抜けていったことで終わってしまう。
肩透かしを食らったような顔をするリューは、距離をとったゴーストライダーを、肩越しに睨みつけた。
そんなリューにお構いなく、ゴーストライダーは再度ランスチャージの体勢に入る。地面を戦馬が踏みしめ、嘶いた。
地面を砕くかのような走りで突進してくるゴーストライダー。リューはそれに背を向けた状態で、ランスチャージの軌道から一歩横にずれた。
それにも的確に反応し、ランスチャージの軌道を変えようとするゴーストライダー。だが、騎乗槍の先端をリューに向けた瞬間に、その姿が掻き消えた。
リューがいきなり視界から消えたことに、うろたえるようにして急停止するゴーストライダー。急いであたりを見渡し、リューの姿を探そうとする。
「残念、俺はここだ」
リューの声がゴーストライダーの至近距離から響き渡る。いそいでそちらを振り向いたゴーストライダーの視界に映ったのは、紅戦棍の凶悪極まるヘッドだった。
「【エコー……ブロウ】!!」
強烈な打撃と、そのあとに追い打ちを掛けるようにして発生した衝撃波が、ゴーストライダーを吹き飛ばし、ホールの奥の階段に激突した。
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