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ソロ神官のVRMMO冒険記 ~どこから見ても狂戦士です本当にありがとうございました~  作者: 原初
二章 ランクアップ編

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寂しがり屋

「え? 【フラグメント】のギルドメンバーとあってほしい?」


「おう。そろそろ顔合わせしなきゃなーって思ってな」



 太陽がそんな話を切り出してきたのは、アヤメが無事にゴブ将軍に勝利したその日の夕食の時だった。

 ちなみにだが、最後にゴブ将軍がアヤメへの攻撃を止めたのは、状態異常“魅了”にかかっていたからだったらしい。

 アヤメがゴブ将軍の肩にのり、ぺちぺちと何度もたたいていたのは、スキル《魅了》を発動させるため。《魅了》の効果は接触するたびに低確率で相手を魅了状態にするというもの。何度も何度もたたくことで、確実にゴブ将軍を魅了状態にしたというわけだ。魅了状態になると、魅了を仕掛けてきた相手を攻撃できなくなるらしい。一対一の戦いでここまで恐ろしい効果があるだろうか? まぁ、その分発生確率はかなり低いし、効果時間もごくわずかなんだけどね。


 閑話休題それはそれとして。今は太陽の話に耳を傾けよう。



「ギルドメンバーというと……。あれか、お前らがギルマスと副ギルマスとして多大な迷惑をかけてる方々ってことだな」


「いやいやいやいや! 違うから! 俺、ちゃんとギルマスやってるよ!?」


「ん。わたしもしっかりと副ギルマスとしての務めを果たしてる。迷惑なんてかけてない」


「本当か~?」



 まぁ、こいつらって俺の前以外だと意外とまともだったりするし……。蒼に至っては、外面の良さだけなら見事なものだからな。普段のこいつらに慣れ過ぎて、その辺の判断ができなくなってただけか。たまには、二人のいうことも信じてやるか。



「分かった分かった。二人がそこまで言うなら、信じてやるよ。……まぁ、他のメンバーに会ったときに、確認はするが。主に太陽を」


「それを信じてるとは言わねぇよ! てか、なんで俺だけ!? 蒼は!?」


「ふふん。太陽、ざまぁ」



 得意げな顔をする蒼。いや、お前の方が多少マシってだけだからな? 実態はほとんど変わらんからな?不満そうな太陽に対し、俺は蒼とくらべてしまうことに少しの後ろめたさを覚えながら、目を少しそらしながら口を開く。



「……だってなぁ。普段が普段だし……。蒼は猫かぶるの上手いからあんまり心配してないけどさ。太陽はなぁ……。部屋はぐちゃぐちゃだし」


「……片づければ信じてくれるのかよ」


「それはない」


「言い切った! 力強く言い切りやがった! 流のバカ!」


「ああ、しまった。つい本音が……」


「さすが流にぃ。容赦ない」


「うぅううううううう……」



 機嫌を損ねた様子で唇を尖らせてそっぽを向く太陽。その子供っぽい仕草に、幼いころの姿を幻視し、思わず笑みを漏らしてしまった。



「ほら、そう拗ねるな太陽。悪かったって」


「別に、拗ねてねぇし……」


「はいはい。それで、お前らの仲間にはいつ、どこに会いに行けばいいんだ?」


「……できれば明日、第三の町『トロワヴィレ』に来てくれ」


「トロワヴィレ、かぁ。まだいったことがないな。ドゥヴィレの先にあるフィールドのボスを倒せばいけるんだよな?」


「ん。その通り。流にぃ、大変だったら、手伝ってあげてもいいよ?」


「……いや、大丈夫だ。集合場所はトロワヴィレの噴水広場でいいか?」


「おう、それでいいぜ」


「……ん。待ってる」



 蒼がそう提案してきたが、ちょっと考えがあった俺は、その申し出を断ることにした。そのあたりで、全員が夕食を食べ終わったので、流れで解散ということになった。



「流にぃ」


「お、どうした蒼。もしかして、手伝ってくれるのか?」


「それはない」


「断言しないでくれよ……」



 食器を洗っていると、とことこと近づいてきた部屋着姿の蒼が、声をかけてきた。無地の大きめTシャツにショートパンツというシンプルな恰好。もしかして、万が一の確率で手伝ってくれるのかと思ったのだが、それは幻想でしかなか……って、ちょっと待て。



「なぁ、蒼。お前が着てるそれって、俺の目がおかしくなければ、俺のTシャツじゃないか?」


「……きっと、勘違い」


「おし、今からタンスを確認してくるか。もし服が減ってたりしたら……どうなるか、分かってるな?」


「勝手に持ち出してごめんなさい」


「おう、素直でよろしい。まぁ、今更服を持っていかれるくらいで怒ったりしないけど。欲しかったらちゃんと言えよ? で、どうしたんだ?」



 速攻で謝罪する蒼に許しを与えてから、改めて声をかけてきた理由を聞く。蒼は、じっと俺の目を覗き込むように見つめながら、ポツリとこぼすように話し始める。



「流にぃ、全然わたしを頼ってくれない。ちょっと、寂しい。わたしは、もっと流にぃと一緒に遊びたい。流にぃと一緒に、あの世界を冒険したい。……流にぃは、どう?」



 そう告げてきた蒼の瞳には、幼いころと何も変わらない、寂しさであふれていた。

 

 今の蒼の姿に、小さい頃の蒼の姿が重なる。何をするのにも俺の後ろをついてきて、何をするにも俺と一緒じゃないと途端に涙目になってしまうような、そんなか弱かった時の蒼の姿が。

 


「流にぃがパーティープレイが苦手だってことは分かってる。でも、わたしは流にぃと一緒がいい。もっともっと、一緒にいたい。……だめ?」



 まっすぐ俺の目を見ながら告げる蒼に、俺は食器を洗っていた手を止め、手についた泡を水で流すと、水気をタオルでふき取る。そして、蒼に近づくと……その頭を、優しくなでた。



「アホ、ダメな訳ないだろうが。俺が可愛い妹からのお願いを無下にするとでも思ったのか?」


「……割と、されてる?」


「お前が普段してるのはわがまま。今みたいなお願いに遠慮なんかするな。態度が殊勝すぎて、一瞬偽物かと思ったぞ?」


「むぅ……」


「はは、そうむくれるなって。まぁ、ここ最近は、蒼のことをおろそかにし過ぎだったかもしれないな。そうだなぁ……。よし、蒼。明日の午前中に、トロワヴィレを案内してくれよ」


「…………ッ!! んっ! オススメの場所、いっぱい教えてあげる!」


「ああ、よろしく頼む」



 ふんす、と気合を入れるように両手をグーにする蒼。その顔からは、先程までの寂し気な表情は、きれいさっぱり無くなっていた。

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