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ソロ神官のVRMMO冒険記 ~どこから見ても狂戦士です本当にありがとうございました~  作者: 原初
一章 アヤメ登場編

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アヤメ、師範を超える

 疾駆。疾走。

 《闘気》によるオーラをなびかせながら、風のごとく駆け抜けるアヤメ。縦横無尽に荒野を動き回り、ゴブ将軍の隙を見ては拳を叩き込む。一撃一撃のダメージはそれほどでもないが、積み重ねられたダメージは確実にゴブ将軍を苦しめている。


 だが、ゴブ将軍の方も負けてはいない。堅牢にて堅実。大剣をその巨大さに似合わぬ速度で振るい、直撃こそしないものの、アヤメに斬撃を掠らせている。どっしりと構え、ただアヤメに剣を当てることだけを見据えた姿は、まさに巌。


 互いに一歩も引かない戦いが繰り広げられる光景を、俺は固唾をのんで見守っている。アヤメのHPが減るたびに、紅戦棍を叩き込みたくなるが、何とか我慢。これはアヤメの修行だ、と自分に言い聞かせる。



「グワァアアアアアッ!!」


「………………(きっ)」



 ゴブ将軍が放った斜めからの袈裟斬りを、サイドステップで回避するアヤメ。反撃に繰り出した拳は鎖帷子に阻まれる。


 今度は、アヤメの方から攻撃を仕掛ける。地面を力強く推し、小さな体が弾丸のように飛び出す。疾駆の加速を乗せた拳が命中したのは、ゴブ将軍の腿のあたり。防具に包まれていない場所を狙ったのは上手い。ゴブ将軍も、その一撃は痛かったのか、顔をしかめている。


 アヤメがそのまま連撃に移ろうとするのを、ゴブ将軍は大剣での切り上げを繰り出すことで妨害。速度もあまり乗っていない一撃だったので、アヤメは軽々と回避する。


 こうしてみると、アヤメの方が優勢に思える。ゴブ将軍の攻撃はほとんど当たらないが、アヤメの攻撃はほぼすべてが命中している。たまに攻撃がかすったりもしているが、《自然治癒力》の効果で回復してしまっている。俺がゴブ将軍の立場だったら、「やってらんねー!」と大剣を投げ捨てていたところだろう。


 アヤメの最大の武器である機動力がほぼ完璧な形で機能しているのが、ここまで戦闘を有利に進めているのだろう。ゴブ将軍って筋肉ダルマの例にもれず、動くのおっそいからなぁ。剣速はアホみたいに早いんだけどね?


 けど、アヤメも己の最強の矛である《魔拳》を使えないでいる。この《魔拳》、やはり魔法を拳に込めるという特性上、詠唱時間キャストタイムが発生しているので、発動までに若干のタイムラグがある様子。そこを狙われてしまうと、アヤメの貧弱な耐久じゃあゴブ将軍の剛剣には耐えられない。


 このままいけば、アヤメが勝つことは間違いない。だが、ゴブ将軍にはHPが二割を切った時に発動するパワーアップが残っている。あれが発動してしまうと、敏捷面での優位性が著しく落ちてしまう。そうなると、アヤメも厳しい戦いになるだろう。


 さて、アヤメ。俺の小さな相棒さん? 一体どうやってゴブ将軍を破って見せるのかを俺に見せてくれ。


 そんな俺の声なき声が届いたのか、アヤメが一瞬だけ俺の方を向いて、「まかせて」とでもいうように、こくりとうなずいた。


 

「………………(きっ)」



 アヤメの身体にまとわりついていた《闘気》が、その量を膨れ上がらせる。確か、MPの消費を跳ね上げる代わりに、強化率を上げる行為だったはず。もしかして、残りのHPを一撃で吹き飛ばす気か?


 ……ダメだ。それじゃあ火力が足りない。俺が今までゴブ将軍と戦った時のことや、アヤメのこれまでの戦闘とステータスを鑑みても、ぎりぎりで削り切ることができないだろう。そうなれば、MP消費の激しい強化版《闘気》を使ってMPの切れたアヤメがパワーアップ状態のゴブ将軍にやられて終わりだ。ちなみに、使い魔はHPがゼロになると自動で召喚が解除され、その後24時間の間召喚できなくなる。


 さぁ、ここからアヤメがどうするかによって、俺が丸一日癒しから離れ……ゲフンゲフン。あ、相棒と離れ離れになってしまうかが決まる。頑張れ! 頑張れアヤメ!


 俺がそんなアホなことを考えているうちに、アヤメは膨れ上がったオーラを両足に集中させた。あれは……部分強化? 足に集めたってことは敏捷を強化したんだろうけど……。さらなるスピードでかく乱するつもりか?


 アヤメはぐっと膝をたわませると、大剣を構えるゴブ将軍に突進。その速度は、遠くで見ていた俺が見失いそうになるほどだった。


 その速度のまま、アヤメはゴブ将軍に接近し、その巨体を駆け上るようにしてゴブ将軍の肩に乗った。そして、眼下にあるゴブ将軍の頭に全力の拳を……叩き込むことなく、なぜかぺちぺちと平手で頭を高速でたたき始めた。ダメージは発生していない。どうして……。


 鬱陶しそうに頭を振るうゴブ将軍。その揺れに体勢を崩しそうになったアヤメは、ゴブ将軍の顔面を踏みつけるようにして跳躍。あ、今のダメージでゴブ将軍のHPが二割を切った。ということは……。



「グガァアアアアアアアアアッ!!!」



 発狂モードの始まりである。


 全身から怒りを体現するかのような深紅のオーラが放たれ、ゴブ将軍の筋肉が膨れ上がる。そして、片手で装備していた大剣を両手持ちに切り替えると、アヤメへと向かいながらそれを思いっきり振り上げる。

 

 それを迎え撃つアヤメは……何故か、《魔拳》の発動準備に入っていた。強化版《闘気》の部分強化を片手に集め、そこに帯状の魔法陣を巻き付かせる。どっしりと構え拳を弓のように引き絞る姿から、回避や防御といった選択肢を考えているようには見えない。迎撃? そんなことは不可能だし……。


 そうしている間に、ゴブ将軍がアヤメの眼前にまで接近し、両腕の筋肉を隆起させながら大剣振るう。銀閃と化した斬撃がアヤメの小柄な身体を一刀両断しようと迫りくる……!



「アヤメッ!! ……って、あれ?」



 思わず、素っ頓狂な声を上げてしまった。真っ二つにされるアヤメの姿を幻視して、思いっきり叫んだ俺の目には、それくらい信じがたい光景が広がっている。


 

「グ……グギギ……」



 なんと、ゴブ将軍の斬撃は、アヤメに命中する寸前に、ゴブ将軍自身の手によって止められていたのである。な、何があったっ!?


 驚く俺を尻目に、アヤメは軽やかに跳躍すると、ゴブ将軍の顔面と同じ高さまで上がる。そして、限界まで引き絞っていた拳を、俺と同じく驚愕に染まるゴブ将軍の顔面向かって叩き込んだ!


 小さな身体から放たれたとは思えないような激突音と共に、アヤメの拳に込められた【ブレイク】がゴブ将軍の頭部をドグシャッ! と破壊。HPゲージは一瞬でゼロになり、真っ黒く染まった。


 仰向けに倒れた首から上が吹っ飛んだゴブ将軍が粒子に変換される光景をポカーンと眺めていた俺の元に、トテトテとアヤメが近づいてくる。



「………………(パタパタ♪ ぶんぶん♪)」



 いつもよりもご機嫌な様子で尻尾を振るい、ケモ耳をぴこぴこと動かすアヤメ。顔に出ずとも、「勝ったよ! 褒めて褒めて~!」と言っていることは明白だった。



「いろいろ気になることはあるけど……。とりあえず、お疲れ様、アヤメ。よく頑張ったな」



 なでなで、なでなでなで、なでなでなでなで。

 いつもより多くなでなでしてあげると、尻尾の振りがさらに加速。耳のぴこぴこも動きが激しくなった。そんな可愛らしいアヤメを見ていると、さっきの不自然な光景のことなどどうでもよくなってくる。 


 うんうん、やっぱり俺の相棒は最高だな! 

感想、評価、ブックマを付けてくださっている方々、本当にありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 魅了のスキルってことかな?だとしたら強いな
[一言] 空腹度設定忘れてませんか?
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