高慢女登場! いや、だから呼んでないから帰ってくれる?
注意:今回は、読んでいて気分が悪くなる場合があります。お気を付け下さい。
いきなり現れた、やたらと気の強そうで偉そうな女性プレイヤーを前にして、俺は内心でこっそりとため息を吐いた。
だって、ねぇ? これあれだろ? この後絶対に厄介ごとが起こる例のアレ。ただでさえロリコンショックで疲れてるのに、勘弁してもらえないかな……。周りの生産プレイヤーの反応から、この集団が有名なのは予測できる。問題は、俺にいったい何の用があるのか……。
頼むからこっち来ないで! という願いも虚しく、女性プレイヤーは俺に向かって話しかけてきた。
「ねぇ、貴方が噂の神官さん? 名前は何て言ったかしら? えーっと……」
おい、俺に用があったなら、名前ぐらい覚えて来いよ。いや、やっぱり覚えなくてもいいから帰ってください。
疲れから、若干やさぐれた思考に陥っていると、綺麗に並んでいるツナギの集団の一人が、頭をひねっている女性プレイヤーにそっと声をかけていた。
「姉御、そいつの名前はリューですよ、リュー」
「ああ、そうだったわね。どこにでもあるような名前だから忘れてたわ」
「……俺がリューで間違いありませんけど? 俺に何かご用ですか?」
初対面でのそいつ呼ばわりや、女性プレイヤーの失礼な言葉に若干イラつきつつも言葉を返す。落ち着け俺、まだ怒るような段階じゃない。
アッシュはどうしてるのかと、ちらりとそちらを見てみれば、完全に緊張でカチコチになっていた。ああ、そういえばアッシュって人見知りだったもんね……。いきなりこんなことになったら、そりゃそうなるよね。
アヤメは……。あ、警戒心マックスだ。尻尾が『フシャー』って感じで逆立ってる。どうやら、こいつらはアヤメに嫌われてしまったらしい。ザマァ見ろ……おっと、邪念が漏れてしまったようだ。
改めて、声をかけてきた女性プレイヤーを観察してみる。
歳は二十代前半といったところだろう。豊かな胸部に巻いた布とショートパンツの上からポケットが多くついたエプロンを着ている姿は、まさしく職人、という感じだ。鈍色の髪は肩にかかるほどのミディアム。瞳の色は黒。顔立ちは美人と称しても構わない程度には整っているが、こちらを見下したような色が見え隠れしているので、欠片も魅力的に感じなかった。第一印象からして無理ってやつだ。
女性プレイヤーは、俺の態度が気に食わなかったのか、不愉快そうな視線を向けてくる。いや、不愉快なのはこっちなんですけど? こっちなんですけどぉ!? って、言ってやりたい。言わないけど。
「なーんか、気に食わない態度ねぇ……。まぁいいわ。さっさと用事を済ませて、こんなところからおさらばしましょう。なんか、ここ、空気が埃っぽい気がするのよねぇ」
そう顔をしかめて言う女性プレイヤー……もう高慢女でいいや。高慢女に同調するように後ろの集団が「そうですね」だの「こんな場所にいたら気がめいってしまいそうです」だの、好き放題言っていた。
……すでに俺の中で、こいつらの評価は地に落ちていた。というか、いったい何様なんだよこいつ。周りのことが目に入ってないのか? この合同生産場で生産行為にいそしんでいたプレイヤーたち全員が嫌そうな顔してるじゃねぇか。文句を言えないのは、あの取り巻きがにらみを効かせてるからか。
はぁ、もうこいつらに敬語とか使わなくてもいいよね? これ以上疲労をためたくないし、遠慮なくいかせてもらおう。
「……で? 用事ってなんだ?」
「なっ!? 貴方、私に向かってそんな口をきいていいと思ってるの!?」
「……はぁ。で? 用事ってなんだ?」
「ふ、ふざけないで! 私をいったい誰だと……」
「で? 用事ってなんだ?」
「だから……」
「で? 用事ってなんだ?」
「…………ッ!!」
必殺、NPC化。返答があるまで同じ言葉を繰り返すだけのものだが、アポロ曰く俺がやると威圧感がすごいらしい。サファイアも同じことを言っていた。まぁ、二人を説教するときによくこうしていたら、あの二人につけられた名前だしな、NPC化って。
おーおー、怒ってる怒ってる。忌々し気にこちらをすんごい形相で睨んでくる高慢女に、あくまで無表情を保って視線を返す。取り巻きが何か喚いてるけど、無視。
「……まぁいいわ。これ以上は時間の無駄ね。だから、単刀直入に言うわ。リュー、貴方が紅月の試練で手に入れた素材のすべてを、私に渡しなさい」
「…………………は?」
なにをいっているんだこいつ?
あのロリコン野郎とは違ったベクトルの気持ち悪さに襲われた。どうしてこいつは、ここまで人を見下した態度で、平然とあんなことが言えるのだろうか?
「もちろんタダでなんてことは言わないわ。私が作れる最高級の武具と交換ってことにしてあげるわ」
「断る」
「どう? こんな機会滅多にあることじゃ……は?」
「断るって言ったんだよ。話しは終わりだ。帰れ」
気が付けば、己のうちからあふれる拒絶感のままに、高慢女の申し出を断っていた。断られるなんて考えてなかったのか、高慢女が信じられないといった表情を浮かべている。ハッ、随分と間抜けな顔だな?
けど、このくらいで終わらせるわけがない。追撃だ。
「どうした。聞こえなかったのか? お前に素材は渡さないと言ったんだ。理解できたか?」
「はぁ!? わ、私の提案のどこに不満があったのよ」
「全部」
「…………なッ!?」
「というか、この素材の使い道はすでに決まっている。今更くれといわれてもやれん。あきらめて帰れ」
「~~~~~っ!!??」
にべもなくいってやれば、言葉にならない叫びをあげ始める。その様子は動物園のサル……いや、それは流石に失礼か。サルに。
高慢女は、なおも何かを言いつのろうとしていたが、俺が何を言っても聞かないことが分かったのか、何も言えなくなっていた。
少しの間黙り込んだ高慢女は、彷徨わせていた視線をある一点で止めると、口元に邪悪な笑みを浮かべた。一体どこを見て……?
高慢女の視線の先にいたのは……アッシュ? …………ッ!! ま、まさかッ!?
「ねぇ、貴方の言う使い道って、そこの白髪女に何かを作らせるとか言うんじゃないでしょうね? まさかねぇ、そんな雑魚に装備を依頼するなんて、ありえないじゃない? きゃははははははははははははっ!!」
ちなみに、この高慢女ですけど、私の中学時代のクラスメイトにモデルがいます。あのまま治らずに進化してったらこうなるんだろうなって想像しながら書きました。そいつの名前は憶えていません。
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