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ソロ神官のVRMMO冒険記 ~どこから見ても狂戦士です本当にありがとうございました~  作者: 原初
一章 アヤメ登場編

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一難去ってまた一難

えー、昨日更新のロリコンが気持ち悪すぎると感想で書かれましたので、ちょっと加筆させていただきました。なので、この話を読む前にそちらを見ていただけると幸いです。

 アヤメの活躍によって変態ロリコン野郎から逃げることができた俺たちは、ドゥヴィレの共同生産場を訪れていた。

 ドゥヴィレの共同生産場は、一度だけ見学しに行ったことのあるアンヴィレのとは規模が違った。そして、中で生産にいそしんでいるプレイヤーたちの熱気も比べ物にならないほどである。


 そんな熱気あふれる生産場の奥の一角で、俺たちはどんよりとした空気を纏いながら生産台に突っ伏していた。アッシュは疲れ果てた顔をしているし、アヤメの狼耳がへにょんとたれ下がり、尻尾も力なく揺れているだけ。たぶん俺も似たような状況だろう。

 変態ロリコン野郎との邂逅がどれほど疲れるものだったのか、一目で分かる惨状だった。



「いやもう……。酷い目に遭った……。普通に恐怖体験だったぞアレ……」


「本当ですね……。怖気が走りました……」


「………………(ぶるぶる)」



 力なくそう言葉を漏らす俺とアッシュ。アヤメはロリコン野郎のことを思い出したのか身体を小刻みに震わせていた。

 

 そのあと、十分ほどそうやって突っ伏していたが、流石に周りの目が気になり始めたので、いい加減本来の目的である防具の生産に入ることに。



「そういえば、防具ってどのくらいの時間で出来上がるんだ?」


「そうですね。使う素材によっても時間は変わっていきますよ。希少な素材を使えば強力な装備が出来上がりますけど、その分時間はかかります」


「じゃあ、アッシュがすでに作ってある防具の中で、とりあえず使えそうなやつはあるか? 俺の分は無くてもいいから、最低限アヤメのやつだけでいいんだが……」


「勢いに任せて素材の限り作りましたから、あるにはありますが……。どうしてそんなことを?」


「いや、どうせ作って貰うなら、強力な装備の方がいいと思ってな。それで、こいつの素材を使ってもらえばいいんじゃないかって。希少な素材って、こういうのを言うんだろ?」


「えっと…………。え、えぇえええええええッ!? りゅ、リュー!? これって……」



 俺がアイテム欄から取り出したそれを見て、アッシュは驚愕に目を見開いて、俺と俺が取り出したそれの間で視線を彷徨わせる。

 一体何を取り出したのかと言えば、見事な真紅に染まった毛皮。


 そう、紅月の試練にて俺が倒した狼野郎、ディセクトゥムの毛皮だった。


 紅月の試練に付いてアポロから聞いたとき、その素材はどれも希少で、その素材で作った装備はすべからく強力なものになる、と。

 そんな素材をアイテム欄の肥やしにするのもあれなので、この機会に装備に変えてしまおうと思ったのだ。

 俺が毛皮を取り出した瞬間、周りの生産職の目が一瞬剣呑なものになった。やはり、紅月の試練で手に入る素材というのは特別なものなのだろう。



「こ、ここここれ、紅月の試練の……?」


「その通り。あの狼野郎の毛皮。防具の素材に使えるだろ? これ以外にも爪とか牙とか血とか骨とかいろいろあるから、必要な分だけ言ってくれ。あ、ほかにもドゥヴィレ以降のボスの素材とかもとってくれば、もっといい装備になるのか? なら、そういう素材もアヤメのレベル上げついでに取ってきて……」


「ちょ、ちょっと待ってください! ……こ、こんな希少な素材、私なんかが使ってもいいんですか? たぶん生産ギルドあたりに持っていけば、私より腕のいい職人プレイヤーがたくさんいますよ? そういうプレイヤーに頼んで作って貰ったほうが……」



 おっと、いつもの自虐モードに入ってしまったようだ。自信なさげに視線を彷徨わせながら、否定的なことをまくしたてるアッシュ。

 


「いや、アッシュに頼んだのは俺なんだし、それを後になってから、お前にはふさわしくない。だから別の職人を探させてもらう! なんてことは言えない。そんなの、アッシュに対して失礼すぎるからな」


「で、でも……。私はまだ低レベルですし、失敗して素材をダメにしたら……」


「……聞いた話だと、生産ってのはランクの高い素材でアイテムや武器を作るとレベルの上りが良くなるんだろ? だったら、練習用として俺が持ってきた素材でレベル上げをしてから本番のやつを作ったらどうだ? 別に今すぐじゃないといけないってわけでもない。出来上がりを待つ時間だってそれはそれで楽しいもんだぞ? それともあれか? アッシュは、俺の装備を作るの、嫌か?」


「そ、そんなことありません! でも、でも……」



 ちょっと、意地の悪い言い方で聞いてみれば、帰ってくるのは強い否定。相変わらず自分の評価が低いアッシュに、苦笑が漏れる。

 とはいえ、アッシュの言っていることも、ゲーム的に考えれば何もおかしいことじゃない。より良い装備を手に入れることができるのであれば、そちらを優先するというのがゲームの基本。……まぁ、見た目があまりにもダサいとかだと考えるけどな。それでも、性能第一というのがほとんどのゲーマーの根底にあるだろう。

 それならば、よりスキルレベルが高く、腕のいい職人プレイヤーに頼んだ方がいいといい、というアッシュの言い分は普通であり、それを拒んでいる俺がおかしいのだが……。これは一応理由があってのことなのである。


 昨日、蒼にアッシュとのことを話した時に言っていたのだが。サファイア曰く、アッシュは生産職としては『化物』と称したくなるレベルらしい。



『……アッシュとフレ交換をしたあと、一回だけアッシュがアイテムを作ってるところ、見せてもらったことがある。作ってたのはポーションとか毒消しとかだったけど、アッシュは一度も失敗しなかった。低レベルの生産職でそんなことができるプレイヤーはいない。高レベル生産職が低レベルアイテムを作るならそうでもないけど……。同レベル帯のアイテムをミスなしで作るなんて異常。アッシュはレベルが上がれば絶対にすごい生産職になる。そんなアッシュの一番最初のフレンドになるなんて、流石流にぃ。ぐっじょぶ』



 だそうだ。蒼が長文をしゃべる時はかなり興奮してるときだ。蒼のいうことがどこまで正しいのか分からないが、それでもアッシュが生産職として優秀である。というのは間違いないのだろう。


 というわけで、俺はアッシュの生産職としての腕は全く疑ってない。レベルが上がれば最高の装備を作ってくれると信じている。なので、レベル上げの手伝いをすることに関しては全く不満が無いのだが……。それを、どうやってアッシュに伝えようか……。うーん、困った。


 そう俺が頭を悩ましてると、何やら生産場内が騒がしくなり始めた。なんだろうと思い、入口の方に目をやると、そこにはきれいに横並びで整列をしたツナギ姿のプレイヤーと、その前に仁王立ちする女性プレイヤーがいた。その集団をみて、生産場にいたプレイヤーたちが、驚いたようにざわめき始める。


 その女性プレイヤーはざわめくプレイヤーたちなど眼中にないような態度で生産場内を見渡し、ちょうどそちらを見ていた俺と目が合うと、ニヤリ、と真っ赤な唇を笑みの形に変えた。


 ……何だろう、凄く嫌な予感がする。さっき目が合ったのって気のせいじゃないかな……という俺の淡い願望は、その女性プレイヤーがかつかつと靴音を鳴らしながら、まっすぐこちらに来たことで霧散してしまった。


 はぁ、やっと変態から逃げれたと思ったら……。今度は一体何なんだよ……。

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