男女二人で名づけとか夫婦かよお前ら
はい、幼女です。ロリです。ちっちゃなおんなのこです! そしてケモ耳(私的に大勝利)
【サモン・サーバント】の魔法陣から現れたのは、俺と同じ髪色、そして同じ瞳の色をしたケモ耳少女。ピンッと立った三角形の耳からして、狼っ娘という奴だろう。ちゃんと尻尾も生えており、髪の毛と同じ色をしている。
身長は120センチ程度。少女というより、幼女というべきだろう。容姿は思わず撫でまわしたくなるくらいには愛くるしい。だが、その表情はピクリとも動かない。サファイア以上の無表情ちゃんだ。
シンプルなワンピースに身を包み、膝裏まである長髪を風に揺らし、直立不動でその場にたたずむその姿は、まるで精巧な人形のようだった。紫水晶を直接はめ込んだような瞳は、まっすぐ俺に向けられている。
「………………」
「こ、これは予想外の結果になったな……」
「うわー、可愛いですね!」
顔を引き攣らせる俺とは対照に、アッシュは狼っ娘を見て目を輝かせている。
いや、確かにこの子が可愛いことに関しては、全くの文句なしだ。しかし、この子が使い魔だということになるといろいろと問題が発生するような気がする。
だって、幼女と言っていいほどに幼い女の子を使い魔として使役してるって字面だけでもう犯罪臭が漂っている。この子を連れて町なんか歩いた日には、『ロ』で始まる不名誉極まりない称号をありがたく頂戴することになるだろう。
子猫のような可愛い系なら大歓迎だったけど、こういうタイプの可愛い系は……。俺の社会的地位とかそういうものが暴落する恐れがある。
そんなことを考えていると、突然俺の目の前にウィンドウが表れた。どうやら、使い魔のステータスが表示されているみたいだ。
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N:(設定してください)
RACE:白狼族
JOB:魔拳士
Lv1
HP 50/50
MP 250/250
STR 40
DEF 5
INT 30
MIND 25
AGI 45
DEX 5
LUK 30
SP 0
SKILL:《格闘術Lv1》《魔拳Lv1》《無魔法Lv1》《闘気Lv1》《回避Lv1》《自然治癒力Lv1》《魅了Lv1》
装備
武器右:なし
武器左:なし
頭:なし
上半身:ワンピース(白)
下半身:なし
足:なし
アクセサリー:なし
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ふむ……。なんか、強くないか? 初期値の合計が俺より高いような気がするんだけど……。あれかな、種族の差かな? 白狼族なんて種族は聞いたことないけど。
JOBの『魔拳士』というのは、スキルにある《魔拳》を覚えることのできる唯一の職業らしい。すべての魔法の射程が0になるデメリットと引き換えに、格闘の攻撃に魔法攻撃を乗せることができ、格闘で戦うことで補正が入るというメリットを持っている。
ステータスもそれにふさわしい、STRとINT、そしてAGIが高く設定されている。その代わり防御力は低い。スキルに《回避》ってのがあるし、ヒット&アウェイが基本的な戦い方になるのだろう。俺のH&Hとは対照的な戦い方だ。
残りのスキルは……《闘気》、《自然治癒力》、《魅了》か。さっさと詳細検索詳細検索っと。
《闘気》
種類:強化スキル 特殊スキル
効果:MPを消費して身体ステータスを上昇させる。このスキルの所持者は魔法的な回復、支援をすべて無効化する。
《自然治癒力》
種類:回復スキル
効果:自動でHPが回復していくスキル。回復量はスキルレベルが上がると上昇する。
《魅了》
種類:妨害スキル
効果:攻撃を命中させた相手を確率で魅了状態にする。
……何というか、流石は俺の使い魔だぜって感じのスキル構成だよな。魔法での回復支援を無効化したり、自己再生能力を持っていたり……。完全にソロプレイ用のビルドだ。
しかし、髪色と目の色もそうだが、このスキル構成……もしかして、使い魔は魔法の使用者に似たりするのだろうか? こう、魔力を吸い取った時にそこに含まれる情報から使い魔のベースを作る……みたいな。となると、使い魔って言うより子供って感じがするな。
「うわぁー、本当、すっごく可愛いですねっ! リュー、この子のスクショ、とってもいいですか!?」
「スクショ? えーっと……このお姉ちゃんに写真撮らせても大丈夫か?」
「………………(こくり)」
「いいみたいだぞ?」
「ありがとうございます! ふっふっふ、撮りまくりますよー!」
「ほどほどになー」
頬を上気させて、だらしない顔でスクショをパシャパシ撮りまくるアッシュ。そんな目にあわされても顔色どころか表情筋すらピクリとも動かさない狼っ娘。ホント、筋金入りの無表情ちゃんだ。サファイアは表情が乏しいだけだけど、こっちは完全に『無』って感じ。
「ほーら、こっち向いてー。………そういえば。リュー、この子は何て名前なんですか?」
「名前はまだ決まってない。その子には、好きな名前を付けることができるぞ」
「そうなんですか? それは、リューがどんな名前を付けるのか楽しみです」
「うぐッ……。へ、へぇ、じゃあアッシュならどんな名前にするか、参考までに教えてくれるか?」
「私ですか? そうですね……やっぱり、この見事な白髪から、『ヴァイス』ちゃんとか……」
「よぉし! 真剣に考えるぞー!」
「ちょっと待ってください。なんですかその反応は!?」
……い、いえ、他意はありません、よ?
「目を逸らさないでください! うぅ、いい名前だと思ったのに……。ふんっ、じゃあリューが私じゃ考え付かないような、いい名前を付けてくれるんですね?」
「拗ねたフリしてハードル上げやがって……。良し、見てろ。中二病には分からないネーミングセンスってのを見せてやる」
アッシュの無茶ぶり程度。この俺が応えられないと思ったら大間違い。我が華麗なる名づけを見るがいい……って、中二病が移った?
ふむ、と顎に手をやり、改めて狼っ娘をじっくりと観察する。
やはり、まず目を引くのはアッシュも注目した純白の髪。膝裏近くまで伸びたそれは癖一つなくさらさらで、思わず指ですくってみたくなる。
顔立ちは、やはり幼い。だが、成長後に美人になること間違いなしだろうと思わせる、可愛らしさの中に確かに美しさの片鱗が存在している。大きな瞳はつり目気味で、長い睫毛がそれを縁取っている。頬はぷにぷにと柔らかく、温かそう。だが、その処女雪を思わせる肌が抜身の刀身を前にしたかのような危うい魅力を放っている。
体は、触れた瞬間に解けて消える雪結晶のように華奢で、この体で格闘戦をするなんてとても信じられない。
狼っ娘が狼っ娘である最大の要因であるケモ耳とケモ尻尾。時折ぴくぴく動くのを見るとやっぱり撫でまわしたくなる。尻尾はちょっと水平気味に伸ばされている。
そして、俺のより鮮やかな紫の瞳。透き通るような白の中にあって、唯一色彩を持つそこは、やはり目を引く。狼っ娘は筋金入りの無表情だが、この瞳から無機質な感じはしなかった。向けられる視線には、どこか親愛の色を感じることができた。
……うん、そうだな。決まった、こいつの名前が。
「アヤメ……。お前は今日からアヤメだ。よろしくな?」
俺はそういって、狼っ娘―――アヤメに、手を差し伸べた。
アヤメ。菖蒲。紫色の小さくて可愛い花。そして、その花言葉は『信頼』や『希望』。これから一緒にやっていくことになるこの子には、ふさわしい名前だと思う。
「アヤメちゃん……。うぅ、悔しいですけど、私のより絶対似合ってます……。白旗です」
そうやって悔しがるアッシュを尻目に、俺はアヤメと視線を合わせ続ける。
そして、俺の瞳を覗き込んでいたアヤメは、ゆっくりと俺の手にその小さな手のひらを重ね合わせた。
「アヤメ……。そういや、自己紹介がまだだったな。俺はリュー。改めて、よろしく」
「………………(こくり)」
俺の言葉にアヤメは小さく頷いた。……その口元に、小さな笑みを浮かべながら。
そのあと、俺とアッシュがそんなアヤメの可愛らしさに身もだえたのは、もはや言うまでもない。
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