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ソロ神官のVRMMO冒険記 ~どこから見ても狂戦士です本当にありがとうございました~  作者: 原初
一章 アヤメ登場編

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スキルブック、どうしよう?

続くサファイア回

「ああ、そう言えば。これを見てもらいたくてサファイアを呼んだんだったっけ」


「……何のこと?」



 サファイアの頭から手を下ろし、今日の本来の目的である二つのスキルブックを取り出す。不思議そうに首を傾げるサファイアに、それらを手渡す。



「……スキルブック?」


「そ、紅月の試練の報酬でもらったスキルブック。三つのうち二つが魔法だったって言っただろ? 《砲撃魔法》と《召喚魔法》ってスキルなんだけど、自分で使うかどうか悩んでてな」


「そういえば、そうだっけ。でも、どうして? 紅月の試練の報酬はどれも優秀」


「いや、俺のINT、初期値から全く手を付けてなくてな。これからも特に魔法攻撃力を上げる気はさらさらないし……」


「うん、流石リューにぃ。一般的な神官とは完全に真逆の方向に突き進んでる」


「まぁ、自分のやり方が間違ってるってのはなんとなく理解しているが……。俺みたいにソロで前衛系の神官っていないのか」


「少なくとも、珍しいという言葉じゃ足りないくらいにはいない。トップ勢の神官は全員後衛。メイス振り回して肉弾戦する人はいない」


「うーん、自前で回復できる戦士って強いと思ったんだけどなぁ」


「発想は悪くない。けど、神官には『物理攻撃力低下』がある。誰も好き好んでいばらの道を進もうとはしない。殴り合いしたかったら前衛職を選ぶのが普通」


「あ、そのデメリットは解決してるぞ。『物理攻撃力低下』を無効化するっていう称号で」


「……リューにぃは、パーティープレイをする気、ある?」


「え? ない」


「即答しないで?」



 「むぅ……」と不機嫌そうな表情で脛を蹴られた。いや、お前は俺がパーティープレイダメなこと知ってんだろ……?



「まぁ、俺のことはいいじゃないか。とりあえず、その二つに付いてサファイアの意見を聞かせてくれ」


「……まぁ、いい。それじゃあ、ちょっと待って。今、調べる」



 そう言うと、サファイアは手に持ったスキルブックを一度自分のアイテム欄にしまう。鑑定系のスキルが無い限り、アイテムの効果はああしないと詳細検索ができない。ちなみに、俺があの二つのスキルブックを詳細検索したときに出てきた情報はこうだった。




[《砲撃魔法》のスキルブック]

 種類:スキルブック

 効果:スキル《砲撃魔法》を覚える。


[《召喚魔法》のスキルブック]

 種類:スキルブック

 効果:スキル《召喚魔法》を覚える。




 シンプルイズベストにもほどがある。これじゃあなんにも分からないので、ここからさらに《砲撃魔法》と《召喚魔法》について詳細検索。




《砲撃魔法》

 種類:魔法スキル・特殊スキル

 説明:魔力を砲撃として放つ魔法が使えるようになる。

 初期使用可能魔法:【カノン】【マナ・カノン】


《召喚魔法》

 種類:魔法スキル・特殊スキル

 説明:召喚に関する魔法が使えるようになる。

 初期使用可能魔法:【サモン・サーバント】【召喚『サラマンダーの吐息』】




 と、言った感じだ、


 正直に言っていいだろうか? うわっ、説明雑ッ!? 

 ……ということは、初期使用可能魔法を詳細検索したも同じような感じなのだろうか? うっわ、見る気なくす。

 こうなれば、名前からして大体の想像をつくけ……られるのは《砲撃魔法》のほうだけだな。そっちはとりあえず攻撃魔法であることは間違いなさそうだし。ということは、俺には無用の産物ってことだし。


 個人的に気になっている魔法は、《召喚魔法》の【サモン・サーバント】。これは使い魔召喚とかそういうやつではないだろうか? 使い魔と言えば……黒猫? それともカラス? どっちにしろ神官には似合わんよなぁ……。というか、神官に似合う使い魔って何?



「……ん。リューにぃ、大体わかった」



 俺が使い魔について考えを巡らせていると、複数展開していたウィンドウを閉じたサファイアがそう告げた。さて、このゲーム最強の魔法使いさんは、どんな意見をくれるのだろうか?



「お、そうか。じゃあ、さっそく教えてくれるか」


「ん。とりあえず、《砲撃魔法》の方。こっちは普通にINT依存の魔法だった。けど、かなり特殊な魔法。初期使用可能魔法の【カノン】は魔法攻撃力で威力が決まるけど、魔法攻撃じゃなくて物理攻撃としてダメージが入る。【マナ・カノン】の方は普通に魔法攻撃」


「それは……どういうことだ? それがなんかすごいのか?」


「かなりすごい。例えば、魔法防御力がすごく高い、もしくは魔法攻撃そのものを無効化するみたいなモンスターがいたとする。そうすると、わたしたち魔法職は完全にお荷物になる。けど、この魔法はそういったモンスターにも有効。これはすごい。ホントに凄い」



 どこか興奮した様子で、早口にまくしたてるサファイア。こいつがここまでハイテンションになるのも珍しいな。それだけ、この《砲撃魔法》がすごいってことなのだろう。

 うーん、凄いってことは分かったし、有能なスキルだってことは間違いなさそうだ。けど、結局はINT、魔法攻撃力依存の魔法であることには違いない。INTの値が15とかいう貧弱極まりない俺が覚えても宝の持ち腐れになることは明白だし……。



「サファイア、《召喚魔法》の方はどうなんだ? そっちもINT依存の魔法なのか?」


「違う。こっちは……MP依存? ちょっと分かりずらかったけど、大体そんな感じ。【サモン・サーバント】は魔石から使い魔を創り出す魔法で、【召喚『サラマンダーの吐息』】は炎属性の範囲魔法。二つともINTの値は関係しない」


「そうか……」



 二つのスキルブック。一つはINTが必要な(というか普通攻撃魔法ってINT依存だよな)魔法。もう一つはそうではない特殊な魔法。

 そして、この場には後衛職なのにモンスターと肉弾戦をするアホ(俺)と、このゲームの魔法職の頂点がいる。

 

 俺は、サファイアから「はい」と返却されたスキルブックに視線を落とし、しばし思考に浸る。ふむ…………………………よし。


 思考を終えた俺は、手元に返って来た二つのスキルブックのうち、[《砲撃魔法》のスキルブック]の方を、「ほい」とサファイアに手渡した。



「……?」


「いや、そんな『訳が分からないよ』みたいな顔されても……」


「……リューにぃ、訳が分からないよ?」


「わざわざ口に出さんでもいい。そっちのスキルブックはサファイアにあげるってことだよ」


「……っ!? い、いいの?」


「ああ、俺が持ってっても使いこなせるとは思わないからな。その上、そのスキルを扱うのに一番ふさわしいやつが目の前にいるんだ。あげようって思うのは自然なことだろ?」


「本当に、いいの? もう、返さないよ?」


「あげるって言ってんだから、返せなんて言わん。遠慮なく持っていけ」


「……んっ」



 そこまで言ってやれば、遠慮気味だったサファイアも折れてくれた。俺が手渡したスキルブックを自分のアイテム欄にしまったサファイアは、とんっ、と一歩俺に近づく。



「ありがと、リューにぃ」


「……ああ、どういたしまして」



 見上げるように嬉しそうな笑みを浮かべるサファイアに、何故か気恥ずかしくなった俺は、少しだけ視線をそらし、そう言葉を返したのだった。

たぶん次回で終わる。



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