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ソロ神官のVRMMO冒険記 ~どこから見ても狂戦士です本当にありがとうございました~  作者: 原初
一章 アヤメ登場編

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ご機嫌ななめ

 アッシュの護衛依頼を受けた日の翌日。今日も今日とで朝食をよどみなく作り上げ、二人を叩き起こして朝食の席に着いた……のはいいんだが。



「…………むぅ」



 ジトォーーーとした視線が蒼から送られてくる。物理的な攻撃力を持っていそうな視線がぐっさぐさ刺さって、非常に居心地が悪い。

 なんか、ものっそい機嫌が悪いんだけど? え、俺、何かしたっけ?

 うーん、蒼に話があったんだけど……。このままだと話を聞いてくれるかすら怪しいぞ……?


 とりあえず、俺の隣でのんきに味噌汁をすすっているアホの脇腹に肘を入れる。こいつなら何か原因を知っているかもしれない。


 太陽は、俺の放った肘があばら骨の下から三番目の隙間にクリティカルヒットしたせいか、プルプルと震えながら抗議の視線を向けてくる。それをサクッと黙殺し、逆に視線で問いかける。



『おい、なんで蒼があんなに不機嫌になってるんだ? どうせまたお前が何かしたんだろ』


『またってなんだまたって!? つーか、俺もあいつが不機嫌な理由はわかんねぇよ。昨日の途中からいきなりあんな感じになってて、昨日の夜には収まったと思ったんだけどよぉ。……いや、本当に昨日はひどい目にあったぜ……』


『なるほど、昨日の途中からか……。うん、わからんな。もう一度聞くけど、太陽は本当に何もしてないんだな?』


『してねぇよ! お願い信じて!?』


『分かった分かった。ふーむ。そうなると、原因は別にあるのか……』


『原因ねぇ……?』


『なんだ? その何か言いたげな視線は?』


『別になーんにも。というか、本人に直接聞くのが一番じゃね?』


『それもそうか。うん、じゃあそうしよう』


『頑張れー』


『……ちなみにだが、お前が聞くっていう選択肢は?』


『ないッ!!』


『断言するなよ……』



 以上、アイコンタクト会議終了。


 結局、太陽からは何の情報も得られなかったわけだ。やっぱり役に立たんなー、あいつ。ゲームのことだともうちょっと頼りがいがあるんだけど……。それを、別の分野にも活かすことができればなぁ。



「……なんか、酷いこと言われた気がするぜ」


「気のせいだ」



 俺の思考を感じ取ったのか、ジト目を向けてくる太陽を丸っと無視。とりあえず、直球で聞いてみることにするか。


 

「えっと、蒼?」


「…………何? 流にぃ」


「いや、さっきからずっと不機嫌そうだったから、何かあったのかと思ってな。どうかしたのか?」


「…………わたしは最近、よくアッシュとメッセージのやり取りをする」


「ああ、こないだフレンド交換してたもんな。仲がいいことのはいいことだけど……。それが?」


「……昨日アッシュから送られてきたメッセージに、流にぃが今日、アッシュの護衛をするって書かれてた」


「ああ、アッシュに頼まれてな。ドゥヴィレまでの護衛を引き受けたぞ」


「……と、いうことは。流にぃは今日、アッシュと一緒に冒険するってことになる」


「まぁ、そうなるけど……。それが?」


「…………………………アッシュだけずるい」


「……はい?」



 ぶすっ、とした顔のまま、蒼がつぶやいた言葉。そこから導き出される蒼が不機嫌になっていた原因。それは―――



「もしかして、拗ねてるだけ?」


「……ぷいっ」



 俺がぽつりとつぶやくと、蒼は顔をそらした。その態度がすべてを物語っている。

 確かに、昔から蒼をほったらかして他のことをしたりすると、こうやってよく拗ねていたけど……。



「……わたしも、流にぃと一緒に遊びたい。せっかくおなじゲームを始めたのに、まだ一回も一緒に遊べてない」



 ちょっと唇を尖らせながら、そんなことを言う蒼。うん、完全に拗ねてます。

 蒼の拗ねてる姿が、幼いころと全く変わらないことがなんだかおもしろい……じゃなくて、この拗ねた蒼を放置しておくと、さらにめんどくさいことになるのは経験上明白なことだ。


 この拗ねたお姫様は、どうすればその不機嫌そうな顔を笑顔に変えてくれるのか。

 それは存外簡単だ。ちゃんと蒼のことだけを考えて、蒼と一緒に過ごしてやればいい。幸いなことに蒼にはFEO内で用がある。まぁ、最初から言うつもりだったし、ご機嫌取りってわけじゃないけどな。

 俺は、できる限り自然に、優しげに見えるような笑みを浮かべて蒼に話しかける。



「蒼」


「……ん、何」


「えっと、今日のアッシュの護衛って、アッシュの都合で午後からなんだ」


「ふぅん」



 それがなに? とでも聞こえてきそうな蒼の態度。どうやら、拗ねレベルはかなり高いようである。早急に対処しなければ溜まりに溜まった不満が爆発して、トンデモないことをしでかしてしまうかも……。うん、全力でやろう。



「それでなんだけど……。蒼、午前中って空いてるか?」


「……空いてる……けど?」



 お、ちょっと視線にこもる険がとれた。これはいける気がするぞ。



「うん、実は狼野郎……えっと、紅月の試練の報酬で貰ったスキルブックのうち、二つは魔法スキルだったんだよ。それで、その魔法がどんなものかってものは詳細検索で調べてみたんだけど、攻撃魔法自体をまだ使ったことない俺じゃあ、詳しいことまではよくわかんなかった。だからさ、魔法に詳しいであろう蒼にいろいろと教えてもらいたいなって思ったんだが……」


「教えるッ!」


「おわっ! えっと、お、教えてくれるのか?」


「ん! わたしが流にぃに、教えてあげる……っ!」


「そ、そうか。うん、ありがとう蒼。頼りにしてる」


「ん、まかせて。わたしはFEOの魔法職の中で最強」



 得意げな顔で薄い胸を叩く蒼を見て、太陽とこっそりと視線をかわす。



『……ミッション、コンプリート』


『流石は流。俺に出来ないことを平然とやってのける。そこに痺れる憧れるぅ!』


『はぁ、お前も蒼の兄貴なんだから、こういう時は何とかしてやれよ』


『はっはっは、目の前に俺以上のお兄ちゃんがいるからな。俺がやる必要はない!』


「……はぁ」



 アイコンタクトでそんなやり取りをし、最後に小さくため息を一つ。頼りにされてるってことなのかね? まぁ、こいつらの兄貴分を自称してるのは俺自身だしなー。


 そんなことを思いつつ、俺は機嫌が直り、小さく笑みを向けてくる蒼に、微笑みを返したのだった。

 

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