いろいろ確認
ちょっと説明多いかも。
思いっきりメイスを振るったら、ゴブ将軍の頭部が爆散した。レベル差が結構あるとはいえ、まさか一撃で殺れてしまうとは……。うん、結局どのくらい成長したのかは分かんなかったな。
えっと、ゴブ将軍のレベルが15だから……。ああ、レベル差20もあればああなるのか。『ヘッドクラッシュ』や【頭蓋砕き】の効果もあっただろうし。
ともあれ、結構お世話になった将軍道場も、これにてお役御免というわけか……。今まで、ありがとうございました!
『乾燥した荒野』をてくてくと歩きながら、メニュー画面にて我が新武器である[紅戦棍【ディセクトゥム】]の効果を見てみることに。というか、最初から詳細検索しとけや、俺。
[紅戦棍【ディセクトゥム】]
種類:メイス
STR+100《封印中》 AGI+50《封印中》
アビリティ:《能力封印レベルⅣ》
《重量無視》
《裂傷付与》
《封印中》
《封印中》
《封印中》
《封印中》
強化上限:なし
説明:征伐された紅月の巨狼の力が集まって創り出された戦棍。封印が施されており、使用者の実力が一定の領域まで高まると段階的に解放されていく。柄頭からは鋭利な牙状の突起物が生えており、打撃での攻撃の際にその突起物が相手を斬り裂き、裂傷を与える。また、巨狼の俊敏さが能力に現れており、使用者はその重量をほとんど感じない。使用者が感じないだけで重量はしっかり存在しているので攻撃が軽くなることは無い。
※これ以上の情報は《能力封印レベルⅣ》により封印されています。
……ほう。なんじゃこら。
御大層とかそういうレベルじゃねぇぞ? ちょっと[鉄のメイス]の詳細検索と比べてみるか。
[鉄のメイス]
種類:メイス
STR+5
アビリティ:なし
強化上限:2
説明:鉄で作られた、長さ80センチほどの何の変哲もないメイス。
この格差である。つくづく紅月の試練ってんのがどれだけ無茶苦茶なものかってことを思い知らされた。
この分だと、三つあるスキルブックもヤバい代物なんじゃないか?
とはいえ、三つのうち二つは魔法。狼野郎との戦いで俺の遠距離攻撃の貧弱さ……というか無力さを思い知らされたから、攻撃魔法の一つでも覚えたいんだけどなぁ。俺の魔法攻撃力、脆弱にもほどがあるし……。今まで、INTを無視し続けた弊害がこんなとこで立ちふさがるとはっ。
と、後悔の念にさいなまれていた俺はふと、新しく《信仰の剣》と《信仰の盾》で覚えた魔法があることを思い出した。
ただのステ強化スキルだと思っていたのに、いきなり魔法を覚えて驚いたんだよねー。
えっと、何だったっけ? ……ああ、【ソードオブフェイス】と【シールドオブフェイス】か。直訳すると『信仰心の剣』と『信仰心の盾』ってなるな。うん、そのまんまやないか。
とまぁ、名前がシンプルなのは置いといて……。詳細検索の結果、この魔法がかなり『使える』魔法であるということが判明した。それも、さっきまでの後悔を丸ごと解決できそうなくらい。
なんとこの二つの魔法。効果がINTではなくMIND依存なのである。なんて都合のいい……。まさに神官のためにある魔法と言っても過言ではないだろう。
さらに、込めるMP量を任意で増やすことで威力や規模を変えることができるらしいが、そんなもんMIND依存の魔法であることの事実に比べたらカスみたいなもんだ。
とはいえ、説明だけではどんな魔法なのか分かりにくい。百聞は一見に如かず。百見は一行に如かず。というわけで、試してみましょう。
この魔法なのだが、面白いことに『詠唱』が存在する。きめられたキーワードを唱えないと発動しない魔法。普通の魔法とは違うということなのだろうか?
標的を荒野にぽつんと置かれていた、高さ4メートルくらいの大きな岩に定めて、そこから10メートルくらい距離を開けたところに立つ。
「えっと……。『我、真摯に主を信う者。我が心に宿る信仰を剣に変え、神敵を滅す』【ソードオブフェイス】」
詠唱を唱え、魔法名を宣言。
とりあえず、実験ということで込めたMPは100。
視界の端でMPゲージが削れる。消費された魔力が、俺の体から燐光となってあふれ出し、時間をかけて収束していく。
そして、俺の眼前に現れる、光の線で縁取られた、一本の大剣。刀身には幾何学模様が刻まれており、どこか近寄りがたいような、威圧感のようなものを放っている。
「……刻め」
そう、一言命じる。その瞬間、俺の眼前に浮いていた大剣は、標的に設定した大岩へと飛翔した。
大岩に接近した大剣は、突き刺さる寸前に軌道を変え、空へ。
空中でぴたり、と静止した大剣は、ひとりでに刀身を振りかぶり……、猛スピードで、大岩目がけて落ちていった。
――――ザンッ!!
一刀両断。まさしくその言葉が似あう光景だった。
まったく抵抗を感じさせない動きで大岩のてっぺんから地面までを駆け抜けた大剣は、魔法の効果が切れたのか、地面に刀身を半分ほど埋めた状態で消え去った。
後に残ったのは、真っ二つになった大岩。
「おおー、かっこいいなー」
うん、かっこよかった。攻撃魔法としてどのくらい有能なのかは分かんなかったけど、演出はかなり好みである。
しかし、発動までに結構な待機時間があるんだよなー。それを調整できるんだろうか? 詳細検索によると、込めるMPが多ければ多いほどに発動までに時間がかかるらしいです。発動時間は調整できないのかー。できるのは、威力、出てくる剣の数や大きさ、出現時間、射程。この五つらしい。
いろいろできるなら、全部試してみよっか! ということで、その後、標的の岩が粉々になるまでこの魔法の実験を行った。
前に太陽に見せてもらったアニメの真似で、腕組みながら仁王立ちで背後にいっぱい剣を浮かべる……なんてこともできた。まぁ、MP全部使ったし、発動までに三分くらいかかったから、完全に遊びだけどね。
【シールドオブフェイス】は【ソードオブフェイス】の盾バージョン。盾の大きさや硬さを選べたり、盾じゃなくて結界みたいにすることもできた。
攻撃面も防御面も、より強化されたんじゃないだろうか? この新しい魔法を戦いの中でどう使っていくかを、頭の中でシミュレーションしてみたり。
そんなことをしている途中、ピロリンという音がして、メッセージが届いた。
差出人を確認してみると、アッシュからだった。また料理の件かな?
そんな風に思いながら、メッセージを開く。えっと何々……、『お願いしたいことがあります』?
どうやら、アッシュは俺に何か頼みごとがあるようだ。シルさんの時のこともあるし、ちょっと気合い入れてその頼み事とやらに当たってみますか。
そうと決まれば、始まりの町にダッシュだな。
【アジリティエンハンス】を使用し、紅戦棍を片手に持つ。たぶんこれが、今の俺の最速スタイルだ。
「じゃ、帰るかッ!」
そう宣言し、地面を強く踏みつけて、走り出す。
巨大なメイスを肩に担ぐように持ち、俺は荒野を砂煙を上げながら爆走するのだった。
真っ赤なメイス(2メートル)担ぎながら荒野を爆走する神官。何それ怖い
https://goo.gl/images/965NNH
紅戦棍【ディセクトゥム】のイメージは、上の画像のメイスを赤くしてもっとトゲトゲさせた感じ。
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