表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソロ神官のVRMMO冒険記 ~どこから見ても狂戦士です本当にありがとうございました~  作者: 原初
序章 FEO開始編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/250

紅月の巨狼 カブトムシ

森、ボス戦です。

 虫の森のボスも、やっぱり虫でした。


 『木漏れ日の森』のボスエリアに足を踏み入れた俺を出迎えて下さりやがったのは、一体の昆虫。こげ茶色をした身体。先端がかぎ爪になっている六本の足。二つの節に分かれた体構造。長くまっすぐと伸び、先端が二股に別れ、さらにその先端が二股になっている角。


 そう、このエリアのボスは、全長が五メートル以上もありそうなカブトムシだった。なんだか、自分が昆虫王者の世界に迷い込んだのではないかと錯覚しそうだ。

 カブトムシの頭上を注視すれば、HPバーと名前が表示される。こいつの名前はフォレストビートル。直訳で森のカブトムシ。そのまんまじゃねぇか。


 まぁ、でかいことを除けば、外見はただのカブトムシ。今まで出てきた虫系モンスターは体色とか無駄な器官とかいろいろと従来通りの虫の姿をしていなかったので、こいつを見るとなんとなく安心感みたいなものを感じてしまう。だが、デカい時点でその安心感はまやかしだと早く気づくんだ、俺。


 カブトムシはボスエリアに侵入してきた外敵、つまりは俺の姿を確認すると、ぎちぎちと関節を軋ませながら突進してきた。歓迎している様子は全く感じられんな。まぁ、ボスモンスターがいきなり歓迎ムードでお茶とか出してきたときには、運営の正気を疑わなくてはいけなくなるな。


 カブトムシの突進を避けながら、そんなどうでもいいことを考える。突進と言ってもカブトムシの体の構造じゃあ大した速度は出ない。それはこのモンスターにも適応されているらしく、ゴブ将軍に比べたら亀みたいな鈍さだ。その分、力はすごいようで、カブトムシの突進攻撃を俺の代わりに喰らってくれた樹木が大破していた。


 いつものように強化魔法を発動し、さらに《信仰の剣》と《信仰の盾》を発動。[鉄のメイス]を両手に持ち、こちらに体の正面を向けたカブトムシに殴りかかる。硬い甲殻があり、刃物の攻撃などは効きづらそうだが、俺の攻撃手段は打撃オンリー。何の問題もない。そもそも、メイスという武器はその昔、全身甲冑を着込んだ敵に効果的にダメージを与えるために作り出されたものだと聞いたことがある。これも太陽の無駄知識だ。


 メイスによる打撃、蹴りによる打撃。両方ともカブトムシには有効だったみたいだ。HPゲージの減りがゴブ将軍に比べてかなり早い。殴りつつ、さらに機動力をそぐために、脚への攻撃を重点的に。最終的には、ボロボロになった一本の脚を、両手でつかんで引きちぎってみた。


 カブトムシの攻撃は最初にやって来た突進攻撃。その長い角での『つのでつく』攻撃。そして、羽を広げて飛び、隕石のように地面に突っ込んでくる攻撃。まぁ、どれもこれも威力は高いが、回避するのはそれほど難しくない攻撃ばかり。試してみたところ、多少無理すれば突進攻撃を受け止めることもできた。

 だが、ここは地形が厄介だった。森の中のボスエリアということで、無数の木が立っているのだ。行動を阻害するし、カブトムシの攻撃で倒れたりするとさらに邪魔だ。


 さて、どうするか。



「うーん、何とかカブトムシの背中に乗れると楽なんだがな……」



 某狩ゲーでも使われている手段。すなわち、モンスターの背中に乗り、無防備なそこを攻撃するという方法。カブトムシは自分の背中に攻撃を届かせることが、体構造上不可能なはず。何とか飛び乗れないだろうか?

 えっと、某狩ゲーではどうしてたっけ? 確か、高いところに登って……。ああ、だからこのフィールドには木が生えてるのか? これを使えってことなのだろうか?

 まぁ、その真相はここのフィールドを設計した者しか知らない。運営かみのみぞ知るってやつだ。


 思い立ったが吉日。カブトムシが突進で木に角をめり込ませている隙に、その近くの木に登ってみる。低い位置にも枝があるので、結構簡単に登ることができた。そして、木の上からカブトムシの背中を見てみる。……うん、この距離ならジャンプすれば届くだろう。仮に落ちたとしても、落下ダメージはそれほどでもないはず。


 ということで、アイキャンフライ! 枝から勢いよく飛び、空中で体勢を整えてカブトムシの甲殻の上に両足で着地。丸みを帯びている甲殻に足を滑らせそうになったが、気合で耐える。

 カブトムシも自分の背中に異物が乗ったとなればすぐに排除にかかる。だが、六本足をばたつかせて体を揺らすくらいしかできていない。ロデオみたいになっているが、頑張ってバランスをとれば、まぁ何とかなる程度の揺れでしかない。


 そうなればあとは、ボーナスタイム(殴り放題)。メイスをカブトムシの頭部に叩き付けていく。カブトムシの上にある小さな角をへし折り、甲殻にひびを入れ、砕く、砕く、砕く。ガリガリとHPバーが削れていき、あっという間に残り三割ほどまで減った。


 だが、カブトムシもこれでやられるほど楽な相手ではなかったらしい。背中の翅を開き宙に浮かび上がったカブトムシは、その体を横回転させ始めた。普通のカブトムシではできない動きをやってみせるのは、やはりモンスターだからなのか……とか考えてるうちに、回転の勢いで放り出される俺。上空に打ちあがった俺に、さらなる攻撃が襲い掛かって来た。横回転するカブトムシから放たれた風の刃。それが俺の体を打ち据え、斬り裂いていく。

 回復魔法を連続で発動させ、それに耐える。だが、風の刃の衝撃でさらに高く打ち上げられてしまった。流石にこの高さは背筋が凍るな。


 やがて風の刃がやみ、カブトムシも地面に降り立った。俺はいまだ空中にいる。すでに自由落下が始まっており、このままだと地面に叩き付けられてしまう。くそう、あと一回カブトムシの背中に乗れれば、確実に屠れるというのに……。何か、何か手はないだろうか?

 ……そういえば。荒野で試してみたあのアーツ。あれを使えば……うん、行けるかもしれない。失敗したら地面に思いっきりダイブだけど、やってみる価値はありそうだ。


 考え付いた作戦を実行するため。落下の位置を空中で調整。丁度、カブトムシの角の先あたりに来るようにする。そして、できるだけ直立の体勢になるように体を動かしたら、あとは重力に身を任せる。

 落ちる、落ちる、落ちる。どんどん近づいてくる地面。そして、その瞬間は訪れる。カブトムシの角が、俺の足に触れる直前で、一つのアーツを発動させた―――!



「【バックステップ】!」



 身体がググッ、と引っ張られる感覚がして、一瞬で視界が前に流れる。そして、俺の両足は、カブトムシのところどころ砕けた甲殻に、しっかりと張り付いていた。

 よしっ、成功だ! と、内心でガッツポーズをしながら、両手のメイスを我武者羅に振るう。取り合えず当たればいい。アーツ【パワークラッシュ】を織り交ぜながらの攻撃は、カブトムシの残り少ないHPをあっという間に削り切る。


 ポリゴンとなって消えるカブトムシ。だが、ここで一つ問題が。


 俺、まだカブトムシの上に乗っかったまんまなんだけど。



「急いで飛び降り……! って、もう足場無いっ!? え、あ、ちょっ!!?」



 いきなり消え去った足場に慌てた俺は、そのまま地面に落下。思いっきり後頭部を打ち付けることになってしまったのだった。……くそう。

【バックステップ】の説明は後の話で。



感想、評価、ブックマを付けてくださっている方々、本当にありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ