アッシュの料理は普通でした
今回は短いです。そして、アッシュさんのターンは終了です。
「普通……ですか?」
俺の言葉に、アッシュが『シュン』と落ち込んだ反応を見せる。
あ、あれ? おかしいな。褒めたつもりだったんだが……。普通は誉め言葉にならないのか? とりあえず、フォローをせねば……。
「いやいや、別に悪いとか美味しくなかったって言ってるわけじゃないぞ? 普通は誉め言葉だ」
「ふぇ? そ、そうなんですか?」
きょとん、とした直後、慌てて尋ねるアッシュ。
「ああ、アッシュが作った料理だけど、どれも丁寧に出来ていた。しっかりとレシピを守って作れてるってすぐに分かったな」
「けど、それじゃあ美味しい料理とは言えないんじゃ……」
「ソレ、よくある勘違いなんだよな……。アッシュって、まだ料理始めたばっかりなんだろ? だったら、レシピ通りに作るのが一番だ。そもそも、レシピ通りに作るのだって、初心者には難しいんだぞ? 俺も、最初はレシピを見てやってもその通りに行かなくて、何度も何度も練習した。そうしてやっと『普通』の料理は作れるんだよ」
「……えっと、普通でいいってことですか?」
「そういうこと。ま、俺の言い方が悪かったな。ともあれ、アッシュの料理は美味しかったよ」
俺がそう言って笑いかけると、アッシュは『パァアア』と眩しい笑顔を浮かべた。こんな顔が見れたなら、最初からストレートに褒めておいた方が良かったな。
「よかったぁ……。安心しましたぁ」
「なんだ、そんなに自分の料理に自信がなかったのか?」
ちょっとからかうように言ってみると、むっ、としたように頬を膨らませてジト目を向けてくるアッシュ。うんうん、そういう顔も可愛いね。
「じ、自信がなかったわけじゃないですっ。でも、自分が作った料理を友達に食べてもらうなんて、初めてでしたし……。………………そもそも、食べてくれるような友達なんていませんでしたし……」
「あーうん。ごめん。からかったのは悪かったから戻ってきてくれ」
この娘、自分から地雷を踏みに行ったよ……。うかつな発言はやめておこう。
「……ご、ごめんなさい。ちょっと、嫌なことを思い出しちゃって……」
「気にするな。謝ることでもないしな。それより、料理の方はあれで全部か? まだあるなら、満腹度の回復もかねて食べさせてほしいんだが……」
「は、はい! まだありますので……。って、私も満腹度が結構減ってますね……」
「アッシュも、自分の料理を食べればいいんじゃない? 自分で食べて評価してみるって言うのも、結構ためになるもんだよ」
「はいっ!」
何とか話をそらせたようで、そこからはアッシュの料理に舌鼓をうち、他愛のない話をするだけの、緩やかな時間を過ごした。
……けどね、アッシュ。
座るところがないからって、男と同じベッドに座るのはどうかと思うぞ?
はぁ、やっぱり無防備すぎる……。
感想、評価、ブックマを付けてくださっている方々、本当にありがとうございます。




