リバイヴ・オブ・ディスピア 終幕
実は生きてんだな、これが。
更新再開します。
アナウンスが流れた後、プレイヤーたちは光に包まれ、気が付けば元の『旧ナルメス王都跡』に戻っていた。王城は壊れているし、廃墟群もそのままだった。
プレイヤーたちは、皆浮かれた様子で自分らの勝利を喜んでいる。あちらこちらから歓声が聞こえ、浮かべる表情はみな笑顔。
「……あぁ、楽しかった」
そして、それはリューも例外ではなかった。憑依召喚を解き、元の姿に戻ったリューは、噛み締めるようにその言葉を発した。口元に浮かぶ笑みは穏やかで優しいもの。
「おっ! 神官さんじゃねぇか! 演説ありがとな。あれのおかげで勇気が出たぜ!」
「神官! 最後の一撃、滅茶苦茶かっこよかった!」
「リュー様!? リュー様がいらっしゃるの!?」
リューの姿を見つけたプレイヤーたちは、様々な声を投げかける。笑顔でお礼を言う者、戦いぶりを賞賛する者、恍惚の表情を浮かべる者。最後は何か違う気もするが、おおむね皆好意的な反応を示す。
そんな彼らの言葉に、あまりこういうことに慣れていないリューは、「あはは……」と苦笑を浮かべることしか出来ない。
やいのやいのと多くのプレイヤーに囲まれてしまったリュー。どうしたものかと途方に暮れていると、救世主は意外な形で現れた。
「リュ~~~~~~~~さまぁ~~~~~~~~~!!」
遠くから、リューの名を呼ぶ声が聞こえてきた。この三日で随分と聞きなれた声に、リューは真っ先に反応する。
「イーリス様? どこから……って、イーリス様!?」
声が聞こえてきた方を見たリューは、ものすごい勢いでこちらに駆けてくるイーリスの姿を見て驚き目を見開いた。
全力疾走する聖女様に、進路上にいたプレイヤーたちは自然と道を開ける。そんな彼らの口元はこれでもかとにやけており、生暖かい視線を二人に向けている。
ステテテー! と駆け寄ってきたイーリスは、そのままの勢いでリューに抱き着いた。
「リュー様ぁ! やりました! 私、ちゃんと異界の浄化をすることが出来ましたよ!」
「イ、イーリス様? それは分かりましたけど、その……」
「えへへ、褒めてください!」
ぎゅー、とリューに抱き着き、にぱぁ! と無邪気に笑うイーリス。よほど嬉しいのだろう彼女の目に、周りでニヤニヤしてるプレイヤーたちの姿は映っていない。
リューとしても、頑張ってくれたイーリスを労いたい。しかし、こうも衆人観衆に晒されている中でそれをやるというのは……。
「あの……リュー様?」
葛藤を抱えたリューに、イーリスの声が届く。その声は、深い悲しみに満ちていて……。
視線を下にずらせば、エメラルドの瞳に涙を浮かべたイーリスの姿が見えた。
「褒めて……くれないんですか?」
「そんなわけないじゃないですかー! いやー、流石はイーリス様です! イーリス様が頑張ってくれたおかげで、俺たちも全力で戦うことが出来ました! 本当に、イーリス様がいてくれて良かったですっ!」
リュー、陥落。悪魔にも不死の王にも打ち勝ったリューだが、聖女の涙には完全敗北したご様子。イーリスの小さな体を抱き上げ、頭を撫でながら抱きしめ返す。
「あ、あわわ……リュー様ぁ……」
ここまでしてもらえるとは思っていなかったのか、顔を真っ赤にしてあうあうと慌てるイーリス。なお、結構テンパってるリューは自分がかなり大胆な行動をとっていることに気付いていない。周りの視線が生暖かく、そして一部が殺意を帯びていることにも気付いていない。
しかしさらに事態はややこしくなっていく。
「あ、あの……!」
リューの背中に、控えめな声がかかる。その声に我に返ったリューは、抱き上げていたイーリスを降ろし、声の方に振り返る。なおイーリスは、許容量を超えたスキンシップにより熱暴走寸前で、目をぐるぐるさせていた。
「リュ、リューさん……あの……えっと……お、お疲れ様ですぅ!」
声の主は、ぎゅっと胸の前で両手を握りしめ、内股でもじもじしながら、潤んだ上目遣いでリューを見つめている。
「えっと、君は……黒炎さん?」
「は、はい!」
リューに名前を呼ばれ、顔を真っ赤にする……厨二少女、黒炎。
しかし、今の彼女はどこにでもいるただの恋する乙女。厨二病どこ行ったとツッコミたい。彼女の後方で唖然としている聖女親衛隊の面々の顔は、なんだかとても笑える感じになっていた。
いやまぁ、黒炎がこの状態に陥ったのは、リューのせいと言える。
厨二病を患っていても、黒炎は思春期の乙女。そして、もともとリューに憧れを抱いていた。
そんな状態で、ああも劇的に駆けつけられたら、それはもう乙女コスモがユニバァアアスしてしまっても仕方ないだろう。
そんな黒炎の内心など察せるはずもない鈍感クソ野郎は、くすりと微笑みながら、黒炎の頭にぽんと手を置いた。
「黒炎さん、イーリス様を守ってくれてありがとう。それと、間に合わなくてごめん」
「い、いえ! そんなっ!? け、結局負けちゃいましたし……」
「いや、君は……君たちはしっかりと役目を果たしてくれた。本当なら、俺が倒さなくちゃいけない相手だったのに……。だから、お礼を言わせてくれ。本当に、ありがとう」
視線を合わせ、にかっと笑いながら言うリューに、黒炎の顔はこれ以上ないくらいに真っ赤になった。
「あ、あう……ふきゅう」
「え、あ、ちょっ!? こ、黒炎さん!?」
やがて、ボフンと湯気を上げながらふらりと倒れた黒炎を、慌ててリューが抱き留める。軽く揺さぶってみるが、反応はない。完全に気を失っていた。
真っ赤になってふらふらしている聖女様と、真っ赤になって気を失っている厨二少女に挟まれたリュー。端的に言ってカオスだった。
そして、事態はもっとややこしくなる。
「……うわぁ」
「ロリコンっす! ロリコンがいるっす!」
「リュ、リュー……? その……何を……?」
「おい、サファイア。そのゴミを見るような目をやめろ。後輩、お前後で覚えとけよ? アッシュ、ドン引きしないで? なんかすっごく傷つくから」
「んんんんんッ! 我が同士リュー! やはり我が目に狂いは無かったようだッ! 貴殿は紳士の中の紳士ッ! キング・オブ・紳士の称号を与えようじゃないかァ!!」
「てめぇはどこから湧きやがったッ! 変態野郎ォオオオオオオオッ!!!」
わいわい、がやがや。リューを中心にして騒ぎはどんどん広がっていき、やがてイベントに参加したプレイヤーたち全員を巻き込んだどんちゃん騒ぎとなっていく。
こうして、リュー初のイベント、『リバイヴ・オブ・ディスピア』は、何とも締まらない感じで幕を閉じた。
良いことも悪いことも、様々なことがあった三日間。けれど、それを乗り越えた彼らの顔には……。
――――満面の笑顔が、咲き誇っていた。
「あははっ! リュー様、こっち向いてください!」
「何ですか? イーリスさ「ちゅっ♡」……まぁ!?」
「「「「「あぁああああああああああああッ!?」」」」」
「えへへっ、貴方の献身に対するお礼です♪」
「あ、あはは……」
……平和に、終わらないものである。
次が何時になるか分からないけど……多分、掲示板かな?
もしくは、夏休みの短編集みたいなヤツ?




