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ソロ神官のVRMMO冒険記 ~どこから見ても狂戦士です本当にありがとうございました~  作者: 原初
四章 初イベントと夏休みの終わり編

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リバイヴ・オブ・ディスピア 決戦4

更新……二時間くらい遅れた。


四巻の発売日が明日に迫っている……だとぅ!?

 外での戦いが激しさを増す中、別の場所でも戦いが始まろうとしていた。


「……派手にやってるなぁ、リューのやつ」


 呆れたような声音でヤマトが呟くと、うんうんと頷きがいくつも返って来た。

 ヤマト以下、聖女親衛隊の面々は、中庭でイーリスの護衛役をしつつ、戦場の様子をモニターで窺っていた。

 映像の撮影者は無論のことブン屋である。

 ブン屋から送られている映像は、彼女が記者プレイヤーのトップであることを証明付けるように『上手い』ものだった。

 どの距離で、どの角度から、どんな構図で撮影すれば被写体が映えるのかをよく理解したカメラワーク。まぁ、それが発揮されているのは、リューを撮っている方のみであり、戦場の方はなんとなく俯瞰視点で写されているだけなのだが。聖女親衛隊の面々はブン屋がいるであろう方へとジト目を向けた。


「いやー、演説のセリフも中々のもんだったぜ? 神官って戦いだけじゃないのな」

「むむむ……悔しいがカッコいいではないか。我もああいうのやってみたい」

「最初の方がどこぞの少佐だったッスけどね」

「似合い過ぎてて怖いどころかちょっと笑えたわよ。……ところで、アザミナはどうして倒れているのかしら?」

「アザミナさんには、神官さんの演説はちょっと刺激が強かったみたいです~」

「あはは、アザミナさんもすっかりリュー狂いの一人って感じですね」


 警戒心は残しつつも、映像を見て会話をする面々。変わり者の集まりではあるが、トップギルドの副ギルマス(サファイア)が親衛隊に推薦するに値すると判断を下すに相応しい、確かな実力者たちなのである。

 ……まぁ、そう見えないのも確かなことなのだが。


「……え? え? まって、ねぇまって? なんでこれを見てその反応だけで済ませることが出来るの? え?」

「すごい……これがナナホシが憧れる人の実力か……」

「すごいですわー、すごすぎですわー。というか、超すごすぎてよく分かりませんわー……」


 そんな彼らの傍らで、呆然とする影が三つ。

 ひたすらに混乱した様子の、亜麻色の髪の少女。映像に見入り、何かに納得したように頷く茶髪の少年。ひたすらにすごいすごいと連呼する、金髪縦ロールの少女。

 彼らは、『リインフォース』というパーティーのメンバーだ。亜麻色の髪の少女がカレン、茶髪の少年がシド、金髪縦ロールの少女がフランソワという。

 そして、ここにもう一人加わって、『リインフォース』は完成となる。


「えへへ、でしょ? この通り、リューさんは凄いんだよ」


 呆然とした三人に、満面の笑顔で言うナナホシ。青みがかった銀色のポニーテールが、サラリと揺れる。

 カレン、シド、フランソワはナナホシのパーティーメンバーにして幼馴染。実力としては、トッププレイヤーとまでは行かずとも、プレイヤーの中でも上位に位置する。

 

「ねぇ、ナナホシ? あなたのお師匠様って、一体どうなってるの? 確か神官って言ってたわよね? え? 神官? どこに神官がいるのかしら?」

「ちょっと落ち着きなよ、カレン。いやまぁ、気持ちは分かるけどさぁ……」

「すごすごですわー」

「そうだね、すごすごだねー」

「って、聞きなさいよー!」


 うきゃー! といったように両手を振り上げるカレンを、苦笑を浮かべたシドがなだめる。ナナホシとフランソワはよく分かっていないのか、こてんと小首を傾げている。

 そんな『リインフォース』の様子を、ヤマトたちはどこか懐かしむような眼差しで見つめていた。


「……ああ、俺らもあんな時があったなぁ。リューのやることにいちいち驚いて騒いで……」

「今じゃもう、『ああ、またか』としか思わなくなってきたもんなぁ」

「純粋な気持ちを失って、神官に染められてしまったのね。慣れって怖いわ」

「神官だし、という言葉が強過ぎるのが悪い」


 なんか古参面しているヤマト、ヴァーミリオン、ネロ、黒炎。実際古参だが、傍から見ると妙にイラっとする表情をしていた。

 そんな四人に、マキノとヒビキ、サンジョウが声を掛ける。


「おーい、お前らー? 警備に集中しなくていいのかよっ」

「そーだそーだ、しゅうちゅうしろー」

「『リインフォース』の子たちが微笑ましいのは分かるッスけどねー」


 茶化すように言う三人。そんな彼らに、『リインフォース』の四人を見つめていたヤマトたちはきょとんとした表情を浮かべ、それを崩し笑みを浮かべた。


「ははっ、何言ってんだお前ら」

「全くだ。誰が集中してないって?」

「はぁ、馬鹿三人に言われたくないわ」

「うむ、ネロの言う通りだ。大体――」


 ヤマトが腰の剣を抜き、ヴァーミリオンが杖を構え、ネロが鞭を取り出し、黒炎が黒炎を開いた手のひらに灯し――


「【ダブルスラスト】!」

「【フレイムカーニバル】!」

「【閃光鞭】!」

「【魔神焔・瞬】!」


 一斉に、中庭の上空に向けて攻撃を叩き込んだ。

 飛ぶ斬撃が、炎の演舞が、高速の一撃が、漆黒の炎が、空のある一か所を正確に打ち抜き、爆発を起こす。

 その爆発の中から、何かが吹き飛んでいった。


「きゃぁあああああああ!?」

「「「「「あっ」」」」」


 くすんだ灰色の髪、真紅の瞳、捻子くれた角、黒い翼、尖った尻尾、水着のような鎧。

 間の抜けた悲鳴を上げながら吹っ飛び、「ふぎゅッ!?」と地面に激突したのは、特徴を聞かされていた悪魔だった。

 

「ハッ、魔法で姿を消していたようだが、その程度お見通しなんだよ!」

「くくっ、我が魔眼を誤魔化そうなど、百億光年早いわ! 我が漆黒の炎の前に散れ、悪魔よ!」

「さぁ、消し炭になる準備はいいか? あと、光年は距離な」

「そこの三馬鹿、呆けてるんじゃないわよ。さっさと戦闘準備をしなさい。あと、光年は距離よ」


 ネロの言葉に、親衛隊の面々の顔つきが変わる。視線が鋭くなり、真剣な表情となった。手にはいつの間にかそれぞれの武器が握られている。――戦闘態勢だ。

 『リインフォース』の三人も、遅れて武器を構える。さっきまでふざけていた三人も、笑みを口元に浮かべつつも表情を引き締めている。


「くっ……! 忌々しいわね! そこをどきなさい! 私が用があるのは聖女ちゃんだけよ!」


 再度空に浮かび上がった悪魔がそう叫ぶ。すでに禍々しい魔力を全身から放出し、臨戦態勢だ。

 悪魔の言葉に、親衛隊の面々の視線が一度後ろに向けられる。

 そこには純白の祭壇と……その中央で、一心不乱に祈りを捧げる幼き聖女の姿があった。

 全員が、己の守るべき対象を確認し、悪魔に向き直る。


「さてさて……リューに頼まれてんだ。ぜってぇに通さねぇぞ?」


 笑みを……まるで、どこぞの神官のような笑みを浮かべながら、ヤマトがふてぶてしく言い放つ。悪魔が苛立たし気に眉を吊り上げた。


「よし、行くぞおま……「うぉおおお! やったるぜー!」「ヒャッハー、悪魔は消毒だー!」「滅殺ッスー!」「さぁて、頑張りますかね」「うふふ、いきますよ~」「リューさんのお役に立てるように……!」「不肖の身でありますが、全力をお見せしましょう」「相手は格上よ、油断せずに行きましょう」「燃やし尽くす! ……なんてな」「くくくっ、漆黒の悪夢に沈め、悪魔!」……え……ら…………」


 ちょっとかっこつけて合図を出そうとしたヤマトを丸っと無視して、親衛隊は悪魔に向かっていく。取り残されたのは、剣を突き付けたポーズで固まったヤマトと、周りに付いていけなかったカレン、シド、フランソワの三人。

 

「え? ……あっ、ああ! シド、フラン! 私たちも行くわよ!」

「あ、うん。……すごい団結力だ。この人たち、普段はソロなんだよね……?」

「ふふっ、面白くなってきましたわー!」


 『リインフォース』の三人も先に飛びだした者たちに続く。

 後に残されたのは、固まり立ち尽くすヤマトのみ。


「……………………はッ!? て、てめぇら! 待ちやがれぇえええええええッ!!」


 数瞬後、我に返ったヤマトが駆け出す。

 こうして、どうにも締まらない感じに、中庭での戦いの幕は切って落とされた。

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