リバイヴ・オブ・ディスピア 決戦3
うん、なんとか連続更新できてるの……か?
最近、時間間隔が危うい作者です。
というわけで、ラストバトルpart3じゃー!
地上の戦いが激化の一途をたどる中、リューとグラシオン・ゲーティスの空中戦も激しさを増していた。
「ええい、ちょこまかとッ! 【ダークスフィア】!」
グラシオンが闇色の球体を放つ。それはリュー目がけて飛んでいき、命中する寸前で肥大化した。
リューは【バックステップ】でそれから逃れると、一度左手に持った【ソードオブフェイス】の短剣を手放す。
自由落下に身を任せ、数メートル降下したリューは、自身の周囲に侍らしていた剣を足元に移動させ、一時的な足場とした。
刀身に足を乗せ、ぐっと膝をたわませる。力を籠め、一瞬のうちに解放する。生み出されたのは跳躍力。リューの身体は砲弾となり、肥大化した闇の球体に向かう。
「【ブーステッド・MIND】、《闇色覇気》」
砲弾となりながら、自身のMINDを強化。そして、自身を守るオーラを纏い、闇の球体に突っ込んだ。
勢いよく飛んだおかげで魔法との接触時間はほんの一瞬。また、《闇色覇気》の効果でダメージも合ってないようなもの。「【ヒール】」とお得意の回復魔法を発動すれば、僅かに減ったHPゲージはすぐに満タンになる。
そして、闇色の球体を突っ切った先には、グラシオンが無警戒で浮遊していた。
「何ィ!?」
グラシオンが驚愕の声を上げる。まさか攻撃魔法の中を突っ切ってくるとは思わなかったのか。思わないわな。
「油断大敵だぜ? 【フォースジェノサイド】!」
突進の勢いをそのままに、紅戦棍が振るわれる。凶悪極まりない神官の一撃を、死霊の王は杖を掲げることで何とか防ぐ。
拮抗は一瞬。グラシオンが杖を薙ぐようにして振るうと共に、リューは手元に戻しておいた【ソードオブフェイス】の短剣を操作しその場を離脱した。
二者の距離が開く。宙で対峙するリューとグラシオンの戦いは、始まりから今まで同じことの繰り返しと言っていい。
グラシオンが魔法を放ち、リューがそれを多彩な手段を用いて防御し、接近戦を試みる。それをグラシオンが防ぎ、また振り出しに。
しかし、グラシオンが放つ魔法はどんどん過激になり、それに応じてリューの手札もどんどんリューらしいものになっていく。
紅戦棍の一振りで魔法を砕くのはまだいい、【ソードオブフェイス】で剣を大量展開し、魔法の弾幕を蹴散らすのもだ。
だが、柄の長い剣を創りだし、それを空中に固定。その柄を両手でつかんでぶら下がり、鉄棒の大車輪のように回転し、両足で飛来してきた高威力の砲撃魔法を『蹴り折り』、回転の勢いのまま飛び蹴りを行うなど、なんかもういろいろおかしい。
そしてそれは、戦っているグラシオンが一番思っていることだった。
「……何なのだ貴様はァ!」
「何なのだ、って言われてもな? どこにでもいるただの神官だ。今は、聖女様の護衛であり、お前の敵でもある、な」
「お前のような神官がいてたまるか!」
「そう言われてもなァ……。まぁいいや。まだまだこれからだぜ、骨野郎!」
リューは笑みを深めながら、グラシオンに向かって飛翔する。迫りくる漆黒にグラシオンは単発魔法を放つが、全て紙一重で躱されてしまう。
「くっ! ならばこうだ、【ダークエクスプロ―ジョン】!」
魔法を回避し続けるリューを迎え撃つように、グラシオンは闇属性の爆発魔法を発動。広範囲にわたって闇の波動がまき散らされる。
グラシオンに接近しようとしたリューは爆破範囲に巻き込まれてしまう。HPが減少し、吹き飛ばされてしまうが、リューの笑みは崩れない。
ダメ―ジを受けたというのに毛ほども気にしてないリューにグラシオンが疑念を抱くが、それはすぐに驚きに変わる。
「がッ……!?」
いつの間にか、グラシオンの腹部に光り輝く剣が突き刺さっていた。
それは、リューがグラシオンの【ダークスフィア】を突っ切る時に足場にした【ソードオブフェイス】の剣だった。戦闘用として創り出された剣なら、一度足場にしたくらいで壊れることもない。
足場にした後、グラシオンの視界に入らぬよう下方に飛ばしておき、『回避できる攻撃』をわざわざ喰らって作った隙を狙って襲わせたのだ。
聖属性を纏った剣はグラシオンに効果抜群。そのHPゲージは確実に減少した。しかし、その減少量はHPの総数からすれば微々たるもの。
一方、グラシオンの魔法を喰らったリューのHPゲージは、約三分の一が削られていた。MINDを重視したステータスに、各種強化魔法を発動している状態でもこのダメージ。ステータスの差は大きそうだと、回復魔法を使いながら笑うリュー。
「……貴様のその笑み、非常に不愉快だ。すぐにやめろ」
「自然と出てしまうんだ。これくらいいいだろ? というか、戦闘中になに余計なこと考えてんだか」
呆れたように言うリューに、グラシオンの纏う怒気が増す。
それに気づくことなく、リューは紅戦棍を構え直しながら、グラシオンを真っ直ぐに見据えた。
「そんなこと気にしてるようじゃ……すぐに負けちまうぞ?」
「抜かせッ!」
怒号と共に、グラシオンが今までよりも苛烈に魔法を撃つ。全身から威圧と殺意を迸らせる姿からは、グラシオンの憤怒がこれでもかと伝わってくる。
対照的に、リューは凄く嬉しそうだった。戦闘狂にとって、相手が強くなり殺る気を出すのはご褒美のようなもの。むしろ、もっともっととか思っているかもしれない。
手元の短剣を操作し、リューはグラシオンから放たれる魔法を避け、迎撃し、時に無効化し、少しづつ距離を詰めていく。
真正面から飛んできた闇の矢を降下して潜り抜け、続く砲撃は紅戦棍を叩きつけることで霧散させ、その勢いを推進力にして突き進む。
それならばとグラシオンは漆黒の杭をリューの周囲に大量展開。球体上にリューを閉じ込める杭の包囲網を創り出す。
「貫かれろッ!」
「はッ、お断りだ!」
グラシオンの言葉を合図に、杭がリューへと殺到する。リューはとっさに【ソードオブフェイス】を発動すると、紅戦棍をしまい、手元の短剣を手放しそれを足場にした。
そして、魔法で創り出した剣を両手で握りしめ、気合を入れる様に「ハァ!」と咆哮した。
斬閃が煌めく。
リューの両手が霞むような速度で振るわれ、光の軌跡が闇色の杭を砕いていく。全方位から放たれるそれを、たった二刀で防いでいく様は、絶技と呼んで差し支えないものだった。これでメインウェポンは剣ではないのだから、剣を本職としている者たちからしたらたまったものではない。
そして、戦いの場で彼の敵として立っているグラシオンからしてもそうだ。
二日前、聖女を殺そうとした時に邪魔をしてきたのが始まりだった。おかしな方法で飛行し、召喚魔法を操り、巨大なメイスを持っているというわけの分からない輩。その時は、道端に転がる小石程度にしか思っていなかった。腹立たしい存在ではあるが、気にする必要もないというほどだった。
だが、次第にその存在は無視できないモノになってくる。異邦人どもの活動を邪魔する目的で置いた召喚獣はそうそうに討伐された。戦闘力よりも戦闘継続力に重きを置いた、所謂『厄介な』モンスターを選んだが、知るかそんなものと言わんばかりに一蹴された。
二日目には、協力者である悪魔の策が破られた。これによって、異邦人どもの動きが分からなくなり、対処することが出来なくなった。
そして、今日。死軍の威容を見せつけることで異邦人の集団の士気を削いだが、それもリューの演説によって意味が無くなってしまった。
グラシオンの計画の最大の障害。それは間違いなくリューの存在。
「つくづく腹立たしいな貴様はァ……!」
杭を迎撃し続けるリューを睨みつけながら、グラシオンは恨みの籠った言葉を吐き捨てた。
しかし、すぐにハッと我に返り、怒りで染まりかけてきた思考を振り払う。
「……くっ、死霊の王たる我が、高々一人の異邦人などに執着するなど……! ……まぁいい。あの神官モドキはもう少し釘付けにしておける。ならばその間に……」
グラシオンはそう呟くと、眼下の戦場を見下ろす。プレイヤーたちは、トップギルドの面々を中心にして、死霊軍を押し返そうとしていた。
「こちらを片付けようか。――――【召喚『四門守りし獄の凶獣』】」
グラシオンが杖を振るうと、彼の真下の地面に巨大な魔法陣が四つ現れる。
そこから現れる、巨大なモンスター。
見るからに強力そうなモンスターの出現に、プレイヤーたちからざわめきが漏れる。
「さぁ、異邦人ども……絶望の追加だぞ?」
そう、ラスボス感満載で言うグラシオン。先ほどまでのリューに怒り散らしていた雰囲気は消え去り、強者の風格が漂っている。
……漆黒の杭を大量展開している中央から漏れ聞こえてきた、「あぁ! ズルい!」という声は、聞かないフリをした。
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