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ソロ神官のVRMMO冒険記 ~どこから見ても狂戦士です本当にありがとうございました~  作者: 原初
四章 初イベントと夏休みの終わり編

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リバイヴ・オブ・ディスピア 演説

いちにち間に合わなかったかー。

というわけで更新です。何気に難産でした。

「……今の攻撃は、貴様か?」

「ん? 《炎の氷柱》のことか? ならその通りだ。戦いの開幕を告げる狼煙には、丁度いいだろ?」


 気負った様子もなく、軽い調子で言ってのけるリュー。傲岸不遜を地で行く彼の態度を見ていると、どちらが悪役なのか分からなくなってくる。リューの装備が黒一色に禍々しいメイスというのも、それに拍車をかけていた。

 なお、リューが気取られることなくグラシオンの背後を取れたのは、彼の頭装備[黒隠紋『マーナガルム』]に付与された《気配遮断》と、懐かしき紅魔狼ディセクトゥムの討伐報酬である《絶気》を同時使用したからだ。

 半分以上忘れていた《絶気》のスキルブックの存在に気付いたのはイベントが始まる直前。何気なしにアイテム欄を漁っていたところ、随分下の方で埋もれていたのを偶然発見し、慌てて使用したのだ。……討伐報酬のスキルブックの内、一つは他者にあっさり渡され、もう一つは忘れ去られ……。実に三分の二がこの雑過ぎる扱い。きっとディセクトゥムは草葉の陰で悲し気に鳴いているだろう。

 そして、死軍の先頭集団を蹂躙した光の爆撃。それは、[黒狗装衣『マルコシアス』]のもう一つのスキル《炎の氷柱》。これは、膨大なMPと戦闘中に使うには長すぎる準備時間を費やすことで発動できる広域殲滅攻撃スキルだ。

 その効果は、『燃え盛る炎を内包した絶対零度の氷』という矛盾した存在を創り出し、それをぶつけることで相反するエネルギーが対消滅を起こし、結果大爆発が発生するというもの。この神官、一体全体どこに向かっているのだろう。

 

「……広域殲滅攻撃に、隠行からの不意打ち、召喚魔法やその巨大なメイスといい……貴様、本当に神官か? というか、何故神官が空を飛んでいる」

「失礼だな、俺は立派な神官職だ。あと、空はなんか飛べた」

「余の知識にある神官とは酷くかけ離れているが……」


 グラシオンのなんともいえないといった様子の声音に、二人の会話に耳を傾けていたプレイヤーたちは「分かる」といったように頷いた。


「……まぁいい。最大の障害となり得る存在が自分からのこのこと、それも単独で現れたのだからな……この機を逃す理由などあるまい! 我が忠実なる僕よ! 不遜にて傲慢なるその神官もどきを地獄に堕とせ!」


 気を取り直したグラシオンが、飛行能力を持つアンデッドたちに命令を下す。空を舞っていたスカルバードやレイスたちが冷たい殺意を宿してリューへと襲い掛かる。あっという間に、アンデッドに包囲されてしまった。


「ハッ、やれるものならやってみやがれ! というか、もどきじゃねぇよ!」


 だが、リューは怯んだ様子もなくそう言い放つと、握りしめた【ソードオブフェイス】の短剣を操り、軽やかに身をひるがえす。

 突っ込んできてスカルバードの胴体に紅戦棍を叩き込み、背後から強襲してきたレイスの頭部に短剣を突き刺す。そして、周囲を見渡し、包囲の密度が薄い部分を瞬時に見抜き、そこに突っ込むことで囲みから抜け出した。

 リューは一度後退し、プレイヤーたちの頭上まで移動した。

 一度ちらりと眼下に視線を向けたリューは、紅戦棍をしまうと空いた手で懐から何かを取り出し、それを口元に当てた。そして、すっと息を吸い込み――


『勇敢なる戦士諸君に問う――諸君らは、戦いが好きか?』


 戦場に、リューの声が響き渡る。

 リューが取り出したのは、マイクのように声を拡大するアイテム。それを使い、声を広範囲に届けているのだ。

 いきなりの質問に、困惑の表情を浮かべるプレイヤーたち。彼らのざわめきを、リューは少しの間無言で聞いていた。そして、はっきりとした答えが返ってこないのを確認し、再度口を開く。


『まず最初に言っておく、俺は戦いが大好きだ。武器と武器を荒々しく打ち合わせる音が好きだ。互いの技を競い合い、びりびりとした緊張感の中で一手一手を読み合い、相手を出し抜こうとするのが好きだ。全力を出し尽くした時の心地よい疲労感が好きだ。負けて己の弱さを自覚した時の無力感が好きだ。そして……相手を打ち倒し勝利した時に感じる歓喜が好きだ』


 空中で停止して言葉を紡ぐリューに、モンスターが襲い掛かる。だが、リューはそれを躱し、蹴り飛ばし、殴りつけ、短剣で切り刻む。


『諸君らはどうだ? 闘争を心から楽しみ、勝利の快楽に酔いしれたくないのか? あるいは、諸君らを散々馬鹿にしたそこの凡骨に敗北を刻んでやりたいとは思わないのか?』 


 アンデッドの群れを次々に屠るリューに、グラシオンの魔法が放たれる。杖を振りかざし、魔法陣を展開。そこから放たれる極太の砲撃魔法。リューは【決戦式・(バトルエンチャント・)魔法破壊マジックブレイク】を籠めた蹴りでそれを破壊する。


『諸君らはこの戦いに向けて、この二日間様々な努力をしてきたのだろう? 敵の情報を調べ、個人の技量を磨き、仲間との連携を高め、レベルアップのために魔物を狩る……そんなことに全力を尽くしていたはずだ』


 魔法を蹴散らしたことで、魔力が燐光となって宙を舞う。淡い光の粒子に囲まれたリューは、グラシオンや死軍に背を向け、プレイヤーの軍列を睥睨した。


『だが、今の諸君らはどうだ? 凡骨の圧に負け、骨の腐肉の群れに怯えているように見える。何故だ? 何故諸君らは恐怖している? そんな必要はないだろう?』


 まるで責めるようなリューの言葉に、グラシオンの気配に当てられていたプレイヤーたちは悔しそうに顔を俯かせる。演説をしながらも的確に敵を屠り続け、グラシオンから放たれた魔法すら無効化して見せるリューの淡々とした言葉は、『この程度の雑魚に怯えるとか何考えてんの?』と言われている気分になってしまうのだ。

 だが、次のリューの言葉はそれと裏腹に、柔らかな声音で放たれるものだった。


『そう、怯える必要なんてない。諸君らが全力を注いできたモノが、これらに対して負けているなんてことは、微塵もありはしない。諸君らの努力の前では、目の前の脅威など塵芥に等しいということを、どうか忘れないで欲しい』


 その言葉に、俯いていたプレイヤーたちは皆一斉にハッとなって顔を上げた。


『恐れるな、慄くな、下を向くな、絶望に飲み込まれるな。諸君らの先にあるのが敗北という名の暗闇であろうとも、すでにそれを払う光は諸君らの手の中にあるのだから』


 そして、とリューは言葉を続ける。


『もう一つ、今この時も、俺たちプレイヤーのために頑張ってくれている娘が。この二日間、俺たちのことをずっと気にかけてくれた娘がいることを忘れないでくれ。ここで俺たちが敗北すれば、彼女の努力は全て水の泡と化し、その命までもが失われてしまうんだ』


 何かをこらえるような声音で語るリュー。彼の言う『彼女』というのが誰なのか、そんなもの考えるまでもない。

 この二日間、誰よりもその少女のことを考え、誰よりもその少女の側にいたのは、ほかならぬリューなのだ。

 そのことは、この場の誰もが知っていた。時にほっこりして、時に嫉妬にまみれて、時に砂糖を吐きながら、リューと少女を見守っていたのだから。


「ええい! さっきから聞いていればごちゃごちゃと! 我らに背を向けるとは余裕のつもりか? ならばその慢心ごと撃ち砕いてくれるわ!! 【召喚『闇竜の爪撃』】!」


 プレイヤーを鼓舞するリューの言葉を止めようと、グラシオンが召喚魔法を発動する。広大な魔法陣が現れ、そこから漆黒のドラゴンが姿を現し、その鋭利で巨大な爪を振りかざす。

 それを見ていたプレイヤーたちは、リューが斬り裂かれる光景を思わず想像し……ようとして、失敗した。背後から迫る強大な一撃。普通なら絶体絶命といってなんらおかしくない状況。しかし、そんな『普通』など、この神官には当てはまらないとプレイヤーたちは本能で理解していたのだ。

 案の定、リューに慌てた様子はなく、ちらりと背後の黒竜を一瞥すると、紅戦棍を取り出した。

 そして、すぅと息を吸い込んで、


『ウラァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!』


 轟く、咆哮。

 それが響き渡るのと同時に、黒竜の頭上に光り輝く巨大な剣が現れた。刀身が十メートル近い、幅広の両刃剣。それは、リューの【ソードオブフェイス】によって創り出されたもの。

 剣は黒竜に切っ先を向けた状態で高速落下し、竜の頭を刺し貫く。その一撃に耐え切れず、黒竜は魔法陣ごと霧散した。

 本来なら、詠唱に加えそこそこの準備時間が必要になる巨大な【ソードオブフェイス】。それを即座に発動可能にしたのは、[紅戦棍【ディセクトゥム】]に芽生えた新たなスキル、《咆哮詠唱》。

 雄叫びを詠唱の代わりとし、魔法を発動するという一風変わった魔法補助スキルだ。

 黒竜を消し去ったリューは紅戦棍をしまいながら、グラシオンへと視線を向け、ニコリと微笑んで見せた。別に親愛や喜びを示したわけではない。単なる煽りだ。

 それにグラシオンが怒るのをさらりと受け流したリューは、プレイヤーたちに視線を戻した。


『己の力を証明するために、幼き聖女を守るために! 勇敢なる戦士諸君よ! その胸に宿る闘志を奮い立たせろ! 燻る気炎に薪をくべろ! すでにこの場は戦場である! ならば、俺たちがすることはなんだ! 分かっているだろう!?』


 胸の前で拳を握りしめながら、リューは力強く叫ぶ。戦場に響き渡る彼の言葉は、プレイヤー一人一人の耳に届き、その胸に染み渡った。

 もはや、プレイヤーの中に顔を伏せている者はいない。皆が皆前を向き、手にした武器を強く握りしめ、全身から闘気を滾らせている。


『――――戦えッ!! 戦って戦って戦って戦って戦い抜けッ!! 肉は裂け、骨は折れ、魂が砕けようとも、最後の最後まで戦い続けろッ!! 我らに勝利の愉悦を、敵に敗北の屈辱を!! さぁ、諸君! 獲物は大量にいるぞ? 早い者勝ちだ。あんまりうかうかしてると……俺が全部、かっさらってくからな!!』


 ニヤリと不敵に微笑んで見せたリュー。プレイヤーたちも、皆似たような表情を浮かべている。


「うぉおおおおおおおお! やってやるぜぇえええええええ!」

「おらぁ! 神官ヤローばっかにいい思いさせんじゃねぇ! オレらも行くぞぉおおおッ!!」

「ヒャッハー! 汚物は消毒ダゼーーーッ!」

「そうよね、聖女ちゃんも頑張ってるんだもん。私も頑張らなきゃ!」

「はぁ……神官様ぁ……! もっと、もっとお言葉を聞かせてくださいぃ……!」


 口々に叫びを上げるプレイヤーたち。そこに、ついさっきまでの士気の低さは見当たらない。リューの演説は成功したといえるだろう。……若干数名、効果があり過ぎた者がいるような気もするが、些細なことだ。


『それでは諸君ッ! 俺に続けぇえええええええッ!!』

「「「「「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」」」」」


 猛るプレイヤーたちを見て、苛立たしげに眼窩の光を揺らすグラシオン。殺意を籠めた視線をリューに向けるも、帰ってくるのはどこまでも楽しそうな笑み。


「……貴様ァ!」

「くくっ。さぁ、行くぞ骨野郎。言っておくが……俺たちを甘く見るなよ?」


 上空の二人のやり取りを皮切りに、両軍が激突した。

感想、評価、ブックマを付けてくれた方々、本当にありがとうございます!

誤字報告もいつも助かっております。


そして、四巻が来月発売です! 

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― 新着の感想 ―
[一言] クリーク!クリーク!クリーク! ウラァァァァァァァァァァ ソ連の底力見せてやんよー!
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