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ソロ神官のVRMMO冒険記 ~どこから見ても狂戦士です本当にありがとうございました~  作者: 原初
四章 初イベントと夏休みの終わり編

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リバイヴ・オブ・ディスピア 護衛隊②

更新です。

「ヤマトさんも、イーリス様の護衛役に立候補したんですか?」

「おう、サファイアに、このままだとリューが戦場で暴れまわることが出来ないって聞かされてな。それは俺らも望むところじゃねぇからな。協力させてもらうぜ」

「それは大変ありがたいんですけど……あの、俺が戦場に出られないことを望まないっていうのは一体……?」

「えっ、……あーえっと、それはアレだ。ほらっ、やっぱりリューみたいな強いプレイヤーが戦場にいるほうが、他のプレイヤーたちも安心できるだろ? それに、リューも戦場で戦いたいんじゃないかってな」


 流石に、『掲示板のネタ的に美味しくないので』という理由を話すわけにもいかず、不思議そうに首をかしげるリューへそれっぽい言い訳をするヤマト。

 そこまで上手くないヤマトの言い訳に、『バレたらどうするんですかっ!』と抗議の視線を送るナナホシ。ヤマト本人も、さっきのは流石に……と、背中に冷たいモノが流れる。

 だが、ヤマトの話を聞いたリューは訝しがることもなく、「そうなんですか」と頷き、ニコリと好青年的な笑みを浮かべた。


「俺のことを考えてくれたんですね。ありがとうございます、ヤマトさん!」

「……お、おう! どういたしましてぇ!」


 リューの混じりっ気のない感謝の言葉に、ヤマトは罪悪感を覚えずにはいられない。

 最初、リア充死すべし慈悲はないのスタンスでリューに突っかかっていたヤマトだが、当の本人からは妙に懐かれていた。

 リューからしたら、自分の不手際(真剣勝負に防具無しで挑む)を笑って許してくれ、困っていた時は親切に助けてくれたヤマトは、信用できる人物なのだ。

 

(あっれー? ナンデ俺、リューにこんなに懐かれてるわけ? 特にこれと言って何かをした覚えはないんだけどなー。……まぁ、敵意をもって接されるよりいいか)


 リューの懐きっぷりに、どうしてこうなったと困惑するヤマトだが、どこぞのパーティーや女プレイヤーのようになるよりも何十倍とマシであると結論を出し、自分を納得させた。

 気を取り直したヤマトは、コホンと咳払いを一つし、にかっと笑みを浮かべて見せ、彼の後ろ……部屋の中で彼らのやり取りに注目していた者たちを示すように両手を広げた。

 

「それじゃま、ここに集まった奴ら……聖女親衛隊のイカれたメンバーを紹介するぜ!」

「いや、イカれてたら困るんですけど……」

「まずは、ナナホシっ!」

「はいっ! リューさんの一番弟子、烈剣士のナナホシです! リューさん、聖女様、よろしくお願いします!」


 リューのツッコミをさらりとスルーしたヤマトは、ナナホシを皮切りに、次々と名前を叫びあげる。


「ヴァーミリオンッ!」

「おうっ、業焔導師のヴァーミリオンだ。炎の魔法を使わせたらちょっとしたもんだと自負してる。やるからにゃ全力で護衛を務めさせてもらうからな!」


 赤髪の魔法使いはビシッとサムズアップをし、


「黒炎ッ!」

「フゥーハハハハハハッ! 我が名は黒炎ッ! 暗黒にして漆黒の炎を操り、あまねく万象に破滅の運命を与えし昏き灼火の咎人也!! リュー、そして聖女よ。汝らを阻む障害のすべからくを、この黒炎様の《漆黒焔舞》にて焼き払ってやろうではないかっ!! くくっ、くははっ、はーっはっはっはっはっはっはっはっはッ!!」


 漆黒ローブに眼帯を付けた厨二少女は、香ばしいポーズをとりながら手のひらに黒き炎を灯し、


「カトリックッ!」

「ご紹介にあずかりました。司祭のカトリックです。精一杯、貴方たちのお役に立てるように頑張ります」


 司祭服に身を包む亜麻色の髪の男は、静かに微笑み、


「ネロッ!」

「はいはい、戦鞭錬士のネロよ。よろしくね?」


 金髪碧眼の少女はヤマトのテンションに呆れつつも、二人に笑みを向け、


「ヒビキッ、マキノッ、サンジョウッ!!」

「ヘイブラザー! 双牙獣士のヒビキ、ここに見参ッ!」

「おっすおっす、斧槍闘士のマキノだ。呼ばれて飛び出てやって来たぜ!」

「投擲錬士のサンジョウッス。初めましてこんにちわ、どうぞ良しなにッス!!」


 チャッキーン! という効果音が付きそうなポージングをする三人組に、


「イスカッ!」

「ふふふっ、はい。星球凶士のイスカです。よろしくお願いしますね、神官さん」


 ほわっとした笑みを浮かべながら、紫髪の女性は小さくお辞儀をし、


「アザミナッ!」

「ハッ! 魔薬師のアザミナ。不肖ながら、偉大なるリュー様の助けに少しでもなれると伺い、馳せ参じました。矮小なるわが身ですが、どうぞいかようにもお使いください」


 ザッと音を立てながらリューの前に跪き、深々と頭を下げる鈍色の髪の女性。


「…………はい?」


 その人物を見て、リューはこてんと首を傾げ、あまりの衝撃に停止した。


「ナナホシのパーティーメンバー諸君!」

「なんかひとまとめにされた!?」

「も、もうちょっと丁寧にやってくれないかなぁ……?」

「ハァハァ……ナナくんとリューさんの絡み……! これは中々素晴らしき題材じゃありませんこと……! ナナ×リュー……いえ、リュー×ナナ? うう、どっちにしろマーベラスッ!!」


 と、抗議の声を上げる(一人を除く)ナナホシのパーティーメンバーにも、リューは一切の反応を示さない。

 首を傾げた体勢で、石化したかのように固まっている。

 

「……リュー様? どうかいたしましたか?」


 イーリスが動かなくなったリューに声を掛けるも、反応はない。


「リュー様? 私めが何かいたしましたでしょうか? 貴方様にご不快な思いをさせてしまったのでしょうか? ……いえ、そうですね。私の存在そのものが不快である、と。そういうことですね? ええ、そうでしょうね。私はそれほどのことを貴方様にしてしまった。…………今更謝っても遅い、遅すぎるほどですが、どうか私に謝罪の言葉を述べる機会をお与え下さい。お願いします……!」


 そして、アザミナ―――本人かどうか疑いたくなる変わりようだが、確かに本人である―――は、その場で深々と頭を下げた。それも、ただ頭を下げただけではない。アザミナは、両膝と両手と額を地面につけ、うずくまるような体勢をとっている。

 それは、日本古来より伝えられし、『土下座』であった。相手への全面降伏を、究極の謝罪の意志を伝え、慈悲を乞う屈辱的な行為。アザミナはそれを、なんの躊躇いなくやってのけた。そこには一切の躊躇がなかった。形だけの謝罪で済まそうという卑怯な思考は欠片も感じられず、アザミナの深い後悔と反省の念がこれでもかと詰められていた。

 

「ふえっ!? い、いきなりどうしたんですか? なんでいきなり……」


 事情を知らないイーリスが慌てふためく。事情を聞こうにもアザミナは土下座の体勢から動かず、リューも固まったまま動かない。

 ならばと回りに視線を巡らせる。だが、ヤマト以下事情を知っている者は「ちょっと、やり過ぎたか……?」と冷や汗を流し、イーリスのように事情を知らないナナホシの仲間たちは、ぎょっとした顔でアザミナを見つめていた。

 そうしているうちに、「はっ!?」と、リューが硬直から復活。

 

「……………………えっと、ヤマトさん?」

「おう、どうした」

「……………………これは、一体?」

「これって、アザミナのことか?」

「そうです……。……え? ということは、本当に本人何ですか? 同名のそっくりさんとかではなく?」

「正真正銘、お前さんに突っかかってペナルティを受けたアザミナだぜ?」

「何がどうなったらこんな有り様になるんですか!? ほとんど別人じゃないですか!?」


 うん、そうだね。

 ものすごく同意したい気持ちを、ヤマトは寸前のところでぐっとこらえた。

 サファイアの言葉に踊らされて、掲示板の住民総出で行ったアザミナへの改宗行為。ノリノリで行った彼らだったが、洗脳し終わったアザミナを見て、皆一斉にこう思った。

 なんてことをしてしまったのでしょう。

 刺々しかった態度はどこかに消え、代わりにどこぞの従者のような礼儀正しさを手に入れ、リューへの敵意は尊敬というよりもはや信仰の域に。

 劇的すぎるビフォーアフター。その原因をリューへ告げるわけにはいかず、ヤマトはどうしたものかと思考を巡らせ……瞬時に、誤魔化すための『嘘』を創り上げた。


「……あのな、リュー。アザミナは、あんなことがあった後、滅茶苦茶反省したんだ。反省して、自分の言動に後悔を重ねて……んでもって、リューへの償いをしたいって思ったらしい。けど、いきなり本人に突撃するのはキツかったらしいくてな。それで、リューと面識のある俺に相談してきたんだ。そんなとき、丁度良くリューの役に立てる機会があるって聞いて、それをきっかけにしようってことになった。だから、今のアザミナは嘘でも冗談でもなく、真剣にこう言ってる。……別に、絶対に許せとは言わない。お前さんにとっては、会いたいとも思わない相手だってことはわかってる。だけど、アザミナも本気なんだ。ここは、話くらいは聞いてやってくれないか?」


 そう、演技ということを全く感じさせずに言い切ったヤマト。いろいろとツッコミどころのある話だが、リューは特に疑問に思った様子もなく、逆になるほど、とでも言うようにうなずいて見せた。


「……まぁ、ヤマトさんがそう言うなら、嘘ではないんでしょうね」


 相変わらず、よく分からないほどヤマトの評価が高いリュー。そんな彼の様子に、ヤマトの心は罪の意識でぐっさぐさである。

 傷だらけの心に遠い目をするヤマトに気付かず、リューは土下座状態から動かないアザミナの前に跪いた。


「……顔を、上げてください」

「……はっ」


 アザミナがゆっくりと顔を上げる。リューの目に映った彼女の瞳。そこに宿る光を、リューはジッと観察する。

 一秒、二秒、三秒……と、無言で視線を交わし合う時間が続く。そして、きっかり十秒後、リューはアザミナから視線を外し、はぁとため息を吐いた。


「……とりあえず、アッシュにも……あの時俺と一緒にいた女の子にも、きちんと謝ってください。それで、貴女のことを許します」

「……ッ! はいッ! ありがとうございます……!!」


 もう一度、アザミナがガバリと頭を下げ、リューは再度ため息を吐いた。


「……えっと、めでたしめでたし、ですか?」

「俺にもよく分かりませんが、たぶん、そうですね」


 事態の推移を見守っていたイーリスの言葉に、リューは苦笑いで答えるのだった。

 

個人的に、黒炎ちゃんを滅茶苦茶活躍させたい。


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