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ソロ神官のVRMMO冒険記 ~どこから見ても狂戦士です本当にありがとうございました~  作者: 原初
四章 初イベントと夏休みの終わり編

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リバイヴ・オブ・ディスピア 護衛隊①

今回はそこまで遅くならなかったじぇ……。

というわけで更新です。


ソロ神官の三巻が発売中です。へいろー様の素晴らしいイラストは必見! そしてサファイアがついに……サファイアファンは必見だぜ!


どうぞよろしくお願いいたします。

「聖女親衛隊?」

「おう」


 アポロの口から告げられた言葉をオウム返しにしたリューは、怪訝な表情を浮かべた。

 会議が紛糾する中、役割の決まったリューは本の確認作業に戻っていた。作戦立案にはまるで役に立たないことを自覚しているリューが自主的に行ったことなのだが、これが大層歓迎された。

 ゾッとするほどの怒りを無意識の《威圧》でまき散らしているリューがそばにいるのが、彼らにとってかなりの精神的負担になっていたのだ。だが、気配だけで小動物くらいなら殺ってしまえそうな今のリューに、「怖すぎるので離れててください」と言えるだけの勇気を持った者はおらず、どうしたものかと思っていたところ、リュー本人から出されたこの提案は、幸運以外の何物でもなかった。

 こうして、リューは「なんか周りの視線がおかしい気がする……?」と思いつつ、中途半端だった積み本確認の作業に準じていたのだった。

 そして、それから少しの時間が経った後、リューの元にアポロがやってきてこういったのだ。


 ―――――聖女様の護衛部隊、聖女親衛隊の結成が決まった。


 と。

 いきなりの話に困惑を隠せないリューは、取り合えずアポロに事情を説明するように促した。


「まぁ、急に言われても分かんねぇよな。聖女親衛隊ってのは、其の名の通り聖女様をお守りする部隊のことだ」

「まぁ、それくらいは予想できるんだが……どうしてまたそんなものを作ることになったんだ? 護衛が俺だけじゃ足りないってことか?」

「んにゃ、リューの力が足りてないなんて誰も思ってねぇよ。むしろ、力が足りてねぇのは俺らの方だな」

「ん? アポロたちの力が足りてないから、イーリス様の護衛部隊を作る……? どういうことだ?」

「あーっと、つまりだな。リューの明日の役割は、悪魔の相手と聖女様の護衛の二つだ。聖女様はこの城の中に造られた祭壇で儀式を行うから、護衛としてそれに付いていないといけないリューは戦場に出れないだろ?」

「ああ、そうだな。多少残念だが、イーリス様の安全には代えられんからな。もし俺が戦場に出て、その隙にあの悪魔にイーリス様が襲われた、なんてなったら大変どころの騒ぎじゃない」

「そうだな、リューの言う通りだ。……だが、そうも言ってられなくなってな…………」


 難しい顔でため息を吐いたアポロが説明するところによると、こういう理由だった。

 潜入していた悪魔によって、ほぼ完成しかかっていた部隊編成や作戦などが敵に対して筒抜けになってしまったことで、その全てをやり直さなくてはならなくなった。

 一度完成に近づいたものをほぼ全て作り直さなくてはならないと言うのは、なによりも精神的な苦痛を伴う。例えるなら、あと一問で終わる宿題を目の前でビリビリに破かれ、「初めからもう一度やってね(はぁと)」と言われるようなものだ。

 それでも、トップギルドの面々はめげることなく、部隊編成を改め、作戦を練り直していた……のだが、ここで問題が発生した。

 悪魔にバレてしまったほうの案がほぼ完璧であったせいで、新たに出された案では想定される戦力に届かなくなってしまったのだ。

 浮かび上がった問題に頭を抱えそうになった彼らに、ふと天啓の如き思い付きが舞い降りる。

 それは、部隊編成に組み込めないプレイヤー―――どこのギルドにも所属していないせいで、情報が不明瞭なプレイヤーたち。『遊撃部隊』という名目で好き勝手やらせる予定―――から募った者たちで聖女様の護衛を務めてもらい、代わりにリューを戦場に投入するというものだった。

 実力が分からずどれほどの戦果を挙げるか分からない複数人よりも、戦場に放り込めば確実に戦果を挙げてくれるであろうリューのほうが戦力としては上と判断したのである。

 問題点は二つ。

 まず、聖女の護衛役として相応しい人員が集まるかどうかである。

 これには、サファイアがとある集団を推薦した。その集団についてサファイアが軽く説明しただけで、反対らしい反対もなく採用された。その集団も申し出を快く受け入れてくれたため、この問題点は驚くほどスムーズに解決したのだった。

 そして、もう一つの問題点は……。


「……悪魔が、戦場にいる俺を無視して聖女様を襲った時は?」

「おう、それも懸念事項として議題に上がったぜ。そんでもって、解決策もすでに出来てる」


 準備万端だぜ、と得意げな顔でアポロが取り出したのは、一冊の本……というより、冊子というべきものだった。羊皮紙を数枚重ね、それが朱色の紐で閉じられている。


「じゃじゃーん! 魔導書~~!」

「……ほう」

「あ、うん。真面目にやります。えっと、これはマギステルが見つけた魔導書なんだが……」


 リューから絶対零度の視線を受け、こほんと咳払いをしてから魔導書の説明をするアポロ。

 それを聞いたリューは、軽く目を見開いて驚きを露わにした。


「それはまた……これでもかってくらいドンピシャな魔法だな」

「だろ? 効果もそうだけど、『リューにしか使えない』ってところもそうだよな」

「出来すぎな話で、どこかに罠があるんじゃと勘繰りたくなるが……まぁ、使えるものは使わしてもらおう。それにしても、良かったのか? マギステルさんって魔導書オタ……執着が凄かったと思うが」

「ああ、それな。確かにマギステルは魔法オタクで魔導書オタク「おい俺が言葉を濁した意味」……なんだけど、本人曰く、『使い手の居ない魔法は魔法じゃない』らしくてな? 自分が使えない魔法を手元に置いておく趣味はないんだと」

「ふぅん、そういうものなんだな。まぁ、後でお礼を言っておこう」

「だな。それでだけど、聖女護衛隊の方は……」

「んー……とりあえず、その申し出を受けてくれた集団ってのに会えるか? イーリス様との顔合わせも必要だろ?」

「OK、リューならそう言うと思ったぜ。すでにとなりの部屋に集まって貰ってるから、会おうと思えばすぐにでも会えるぜ」

「了解、マギステルさんにお礼言ってから、イーリス様と一緒に行くわ」

「ほいほい、いってら~」


 本を置き立ち上がったリューは、セイと言いあっていたマギステルに感謝を告げ、サファイアと何かを話していたイーリスを連れて会議室を出た。

 

「護衛部隊か……イーリス様は何か聞いていますか?」

「あ、はい。サファイア様に丁度そのことについて説明を受けていました。なんでも、リュー様には絶対に逆らわない忠実な僕だとか……」

「僕何ぞ作った覚えはないんですが……けどまぁ、サファイアとアポロが太鼓判を押しているんですから、大丈夫だと思います」

「……ふふっ、リュー様は本当に、あの二人を信頼しておられるのですね」

「下の子の言うことを信じられない兄は、兄失格ですから」


 そんなことを言いながら、会議室の隣の部屋、小さなホールのようになっている部屋に、二人は足を踏み入れた。


「すみません、イーリス様の護衛役の件で参りました。リューと申しま……って、あれ?」


 部屋の中には、十人ほどが談笑していた。その中に見知った顔を見つけたリューが、あっけにとられたような声を上げる。

 向こうもリューに気が付いたようで、「あっ」という顔になった後、パァアと笑顔を輝かせ、リューのもとに駆け寄ってくる。

 そして、その勢いのままリューの胸元に飛び込むように抱き着いた。青みがかった銀色のポニーテールが、ふわりと宙を泳ぐ。


「リューさん!」

「おわっ! ……って、ナナホシか? お前、どうして……」

「えへへ、リューさぁん……」


 ダメだコイツ、聞いてない。

 リューの胸に顔を埋めるナナホシは、実に幸せそうな顔をしていた。リューの言葉が耳に届いているかどうかも怪しい。というか、絶対に届いていない。

 このリューに抱き着いている銀髪美少女……に見える少年は、ナナホシ。リューの一番弟子を自称する『四大……いや、『五大リュー狂い』の一人だ。

 

「ここにいるということは、お前も親衛隊とやらのメンバーなのか?」

「はい! リューさんのお役に立ちたくて、志願しました!」


 にっこりと見惚れてしまいそうな笑みを浮かべ、弾むような声音で言うナナホシに、リューは嬉しさ半分、呆れ半分の苦笑い。

 そして、そんな二人の一連の流れを真後ろで見ていたイーリスはというと……。


「な、なななななな……! 何をしてるんですか貴方はぁ!!?」


 形のよい眉をひそめ、頬を小さく膨らませ、不機嫌さ全開な表情でナナホシに食って掛かる。


「そ、そんな風にいきなり抱き着いたりして、リュー様が怪我したりしたらどうするんですか! それに、こんな人前で異性とむ、睦み合うなんて、破廉恥です!」


 私、怒ってます! ということを全身でアピールしつつ、聖女っぽくお説教をしてみせるが、誰がどう見てもヤキモチであった。

 そんなイーリスの肩をリューがちょんちょんとつつく。「なんですか!」と語気荒めに答え、イーリスがジト目で振り返る。


「だいたい、リュー様もです! そんな風に女の子と密着するのは……」

「イーリス様、ナナホシは男です」

「いかがなものかと…………はい?」

「だから、ナナホシは男です。見た目は紛らわしいですが、正真正銘、男です」


 リューの言葉にぽかーんとしたイーリスは、そのまま視線をゆっくりとナナホシに向けた。

 サラサラとした銀髪、ぱっちりとした瞳、それを縁取る長い睫毛。スッと通った鼻梁に柔らかそうで瑞々しい桃色の唇。肌は白く透明感がある。好きな人(ファン的な意味)に会えたことで興奮しているのか、ふっくらとした頬はうっすらと桜色に染まっている。

 体つきは華奢で、角ばった様子はまるで見られない。イーリスの視線を受けて「どうかしましたか?」と小首を傾げる様子など、イーリスから見ても可憐で……。


「……お、とこ?」

「はい、ボクは男ですよ?」

「……ほんとう?」

「はい、本当です。いやぁ、よく間違われるんですよね。初対面で見破ったのは、最近じゃリューさんくらいで……。やっぱり、リューさんってすごいですよね!」

「それは分かります…………って、ぇえええええええええええええええええええ!? お、男なんですか!!?」

「だから、そうだって言ってるじゃないですか~」


 やだな~、と笑うナナホシに、唖然とするイーリス。無理もないと苦笑するリュー。

 そんな三人の元に、歩み寄る人影が一つ。


「おーい、ナナホシ。いきなりトチ狂ったことしてんじゃねーよ。お前のお仲間さんビックリしすぎて止まってるだろうが。つーか、そろそろ本題に入ってもよろしくて?」

「あ、はい―――――――って、貴方は……」


 声をかけてきた人物へ振り返ったリューは、一瞬驚いた表情をした後、嬉しさを前面に押しだした笑みを浮かべた。


「ヤマトさん! お久しぶりです」

「おう。久しぶりだな、リュー」


 その人物―――ヤマトは片手を上げながら、にこやかに挨拶を返した。

 

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