リバイヴ・オブ・ディスピア 対策3
ちょっと短めですが投稿です。あと数話で二日目が終わり、三日目に入ると思います。
リューが放った言葉は、少なくない衝撃を会議室の面々に与えた。ざわめきが会議室に広がる。
「ひ、一人でだと!? 馬鹿な事を抜かすな、お前はあの悪魔の強さを見ていなかったのか!」
「……流石に、無謀が過ぎる。考え直したほうがいい」
「確かに貴方は強いわ。それこそ、恐ろしいほどにね。……けれど、それでもあの悪魔は……」
真っ先に反応したのは、トッププレイヤーの面々だった。無理だと、不可能だと、リューを諌める言葉を次々と投げかける。
それら全てをさらりとスルーして、リューは淡々と告げる。
「あの悪魔は俺を名指しにしました。ならば、俺が相手をするのが道理でしょう? それに……」
そう言って、リューは装備していたアクセサリーを一つ外した。アポロとサファイアが「「あっ」」と声を上げるが、リューは止まらない。
リューが外したのは、ステータス隠蔽効果のあるアクセサリー。
騒ぎになることを回避するために、アポロとサファイアが渡した例のアクセサリーである。それが外されたということは、それすなわち……。
「何を……はぁ!?」
「アクセサリー……? それがどうか……はい?」
「レ……レベル……きゅう、じゅう?」
隠していた、リューのレベルカンストが公開されるということ。
「アレの相手をするのに、俺以上の適任はいないと思いますが……どうですか?」
驚く面々を尻目に、リューがそう告げる。
リューの言葉に、思案顔で黙り込むトッププレイヤーたち。
「……確かに、レベル的にはお前以上に悪魔へ対抗できる者はいないだろうな」
最初に考えを言葉にしたのは、マギステルだった。
「ええ、この場にいる誰よりもレベルが高い……というか、アップデートから間もないというのに、どうやってカンストまでレベルを上げたのよ?」
続いて、アテネがマギステルの言葉に同意を示し、リューに疑問を投げかけた。
それに対して、リューは表情を崩すことなく答える
「それは企業秘密ということで。それで、どうです? 俺に任せてもらえますか? 集団戦闘なら兎も角、ソロでの戦いにはそれなりに自信がありますので、任せてもらえれば無様は晒さないと思いますよ」
不敵で大胆なリューの言葉に、誰もが言葉を失う。
今のリューには、有無を言わせない凄味と迫力があった。彼から発せられる静かな威圧感が場を支配し、そこにいる全員を圧倒する。
表面上は普段通りだが、心の奥底に宿った冷たい怒りは隠し通すことが出来ないようだった。
「……どうして、リュー君はそこまで悪魔にこだわるんだい?」
リューの雰囲気に呑まれつつも、レイが絞り出すように尋ねた。
「…………そんなの決まっています」
―――瞬間、リューの気配が変質する。
極寒の冷気は灼焔の熱気に、氷冷の怒気は氷解し、秘められてた激情が顔を覗かせる。場を支配する威圧感は重苦しいモノに変わり果てた。
「アレは、イーリス様を殺すと言いました。俺が守ると誓ったイーリス様を、殺すと……。俺にとって、それは許せないことなんです。だから、アレの相手は俺がやる。あっちだって俺を指名してるんだ。わざわざ名指しして来てんなら、真っ向から迎え撃って、撃ち砕く。……ただ、それだけです」
途中で言葉遣いが崩れるほどの怒りを込めてつぶやかれた言葉。
それを聞いた者たちは、もはや口を挟むことなどできず、リューを止めることも出来ない。
こうして、悪魔対策は、『リューに一任する』ということになったのだった。
リューの隣に座り、その怒りの波動の影響を最も受けているアポロは、満場一致で出された結論に深く頷いて同意を示した。
「……リュ、リューがキレてる……完全にキレてるぞ……。普段なら絶対にしないイキりムーブがそれを物語ってるぜ……。下手に刺激せずにするがままにさせとくのが得策だな」
「……ん。これで悪魔も終わり。お疲れ様でした。…………ところで、聖女様。どうかしたの?」
「……ふぇ!? な、何か言いましたか!?」
サファイアの視線を受けたイーリスは、あたふたと慌てだした。その頬ははた目からも分かりやすすぎるほどに真っ赤で、口元はニヤついていた。
そんな彼女の表情から、サファイアは全てを悟り……零れそうになったため息を寸前のところで飲み込んだ。
イーリスが自らの守護役たるリューへ、身分不相応な思い―――恋、とまではいかないが、それに似た憧れの感情―――を抱いていることを、サファイアは乙女の勘で見抜いている。
そして、イーリスの反応は、今さっきのリューの言葉が原因であることも、瞬時に見抜いていた。
リューは、己が守ると決めている対象が害されることを許さない。そんな心情から漏れ出た激しい怒りの感情。それはつまり、そんな怒りを抱くほどに、リューがイーリスを守りたいと思っているということ。
そんな思いを、こうして言葉にして示されてしまえば、嬉しいに決まっている。イーリスが真っ赤になり、口元をにやけさせているのはそういうことだ。
「はぁ……まじはぁ……」
悪魔と戦う時のことでも考えているのか、思考に没頭しているリューを見て、サファイアはそうため息を吐くのだった。
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