リバイヴ・オブ・ディスピア 対策2
はい、まず私めから一言。
マジですみませんでした!!!!!!!!
更新遅れすぎですよね。なんか新年に「更新頑張ります」とか言った記憶がありますが、開始早々こんな感じで本当に申し訳ございません。
何があったのかと言われれば、『追試に落ちる』というトンデモ馬鹿をやらかしたツケを払ったりしてましたね。決してFGOとか言うソシャゲに現を抜かしていたわけではございません。いやほんとマジで素材集まらなさすぎるんだけど初心者にも優しいイベントはよ、はよ!
あとは……ハーメルンで見つけた二次創作が面白すぎたせいですかね? え、責任転嫁いくない? あ、はい。猛省します。
次話はもう少し早く更新できるように努力いたします。本当に申し訳ありませんでした。
悪魔が去った後、会議室ではすぐさま悪魔への対策会議が始まった。
決戦が始まる三日目まで、あまり余裕のないこの段階で判明した、強大な敵の存在。会議室の面々はそろって頭を抱え、どうすればと頭を捻った。
会議に参加していなかった……もとい、することが出来なかったリューとイーリスも、本の確認を他者に任せて会議の席に着いていた。
「では、これより悪魔対策及び、悪魔にバレてしまったであろう作戦の考え直しを始める」
「「「「「……うぇ~い」」」」」
あからさまに各メンバーの声にやる気が無いのは、作戦を一から考え直さなくてはいけなくなったからだろう。悪魔によってすっぱ抜かれた戦術、陣形、部隊編成……それらをまたやらなくてはいけないとか、どう考えても残業でしかない。皆大嫌い残業。このブラック企業蔓延るブラック社会の影響が、ゲームにまで及んでいるというのだろうか? 彼らはその苦しみにため息を吐く。
だがしかし、ゲームとは時に苦行にもなり得る存在なのである。レベルが上がるにつれて加速度的に必要数が増えていく経験値。物欲センサーとの熾烈な戦いを繰り広げることになる素材収集。ネット対戦ではマナーの悪いプレイヤーの回線切断に苦しめられ、ソシャゲなら欲しいキャラを手に入れるために終わりなき物欲に身を浸す……課金はほどほどにしないと地獄を見るのだ。
だが、ここに集いしはFEOを代表するトッププレイヤーたち。……つまりは、歴戦のゲーマーたちなのだ。そんな彼らならば、この程度の苦行は何度も体験しており、それを乗り越えてきている。
そう、やる気のない声を出していようと、今日の睡眠時間が削れることが確定であろうと、彼らはくじけないへこたれない。作戦の考え直しをきっかりとやり遂げてくれるはずだ。
「まぁ、作戦の考え直しはいい。面倒なのは確かだが、時間があればなんとかなる。……問題は、悪魔だ」
そう、重苦しく告げたのは、円卓に両肘をつき、ゲン○ウのポーズをとるマギステル。いつもの魔法バカは鳴りを潜め、嫌に真剣な雰囲気を醸し出している。
「あら、どうしたのマギステル。貴方らしくないわね」
「黙れ『光耀神姫』。貴様はこの情報を見てないからそんな気楽でいられるんだ」
からかうアテネに、鋭い視線と吐き捨てるような言葉を向けながら、マギステルは目の前にとあるデータを展開し、それを円卓に座る全員が見えるように拡大した。
「マギステル、これは?」
「今から対策をとろうとする相手の情報が何もないのではやり様が無かろう? これは我がギルドのメンバーが鑑定スキルによって解き明かした悪魔のステータスだ」
「! ……それは、お手柄だね」
「ああ、我がギルドのメンバーの有能さに慄きたまえ、『勇者』よ」
にやりと笑って「そら、読んでみろ」と言うように顎をしゃくるマギステル。常のように自信に溢れ、『魔導帝』の名にふさわしい威厳をその身から放っている……ように見えるが、どことなく投げやりな雰囲気が感じられる彼の態度をレイはいぶかしむが、まずは情報だと空中に投影されたデータに目を向けた。
そして、
「なっ…………」
絶句。
レイだけでなく、その情報を見た誰もが言葉を失っていた。いつも飄々としているアテネまでもが、難しい顔で黙り込んでいる。
『上位悪魔 Lv100』
それが、マギステルが提示したデータの一番上に書かれていた情報だった。
レベル100。それは、未だプレイヤーがたどり着けぬ高み。そこにたどり着くまでに、どれほどの経験値が必要になるのだろう。少なくとも、経験値の他にアップデートが無ければ不可能な領域に、悪魔はいた。
「れ、レベル100……!? ほ、本当なのか!? この情報は……」
「我がギルドのメンバーは優秀だ。間違いではない……で、どうする? この情報を元に、どう悪魔対策を立てるんだ?」
そう問いかけるマギステルの声音には、余裕がまるで感じられなかった。
「レベルだけじゃない。別ゲーかとツッコミたくなるほどの密度を誇る魔法を、詠唱無しのため無しで放つ魔法力。《魔法耐性》や《属性耐性》といったスキルも驚異的だな。悔しいが……魔法職としてあの悪魔と戦い、勝つ自信は俺にはないぞ? 『魔導蒼妃』よ、お前はどうだ?」
「……私も、厳しいと思う。最低でも、フルパーティーが二つ三つは必要」
魔法職として『魔導帝』に勝るとも劣らないサファイアも、彼と同じ結論を出し、難しい表情で黙り込んだ。
それを尻目に、マギステルは皮肉っぽい笑みを浮かべ、大袈裟に肩を竦めて見せる。
「……と、言うわけだ。さらに加えて言えば、コイツに加えてあのグラシオン・ゲーティスもいるということを忘れるなよ? あちらも魔法使いとしてかなりの高みにいる存在だからな」
「……ねぇ、ギルマス?」
「むっ、どうしたセイよ」
「もしかしてですけどギルマス…………悪魔に魔法職として負けて、拗ねてます?」
ジトォ……とした視線と共に放たれたセイの言葉に、マギステルはギクリと肩をこわばらせた。
マギステルのことを側で見続けてきたセイの目には、マギステルが虚勢を張っているようにしか見えなかった。そして、長い付き合いだからこそ知っているマギステルの性格からして、魔法という自らの領分で、ああも見事に自分よりも一段上の実力を目の当たりにしたとき、どういう反応をするか……。
「そ、そそそそんなことがあるはずなかろう? 俺が拗ねているとかそんなこと絶対にありえないから! まぁ確かにあの悪魔とやらの魔法技術は見事の一言よ。だがしかし、それを目の当たりにしたくらいで拗ねる? ないから、マジでない。というか、勝つ自信はないといったがアレは一対一の話。我がギルドの力をもってすれば容易いからな? な?」
「語るに落ちすぎですよ、ギルマス」
やけに饒舌に、ところどころキャラ崩壊しながら言い訳を重ねるマギステル。その様子は、セイの指摘が図星であることをわっかりやすく示していた。
そんなわっかりやすいギルマスに、大きなため息を吐くセイ。ギルドのトップがこれとか……。と、何度目か分からないほどの呆れを込めたため息だ。
そして、そんなわっかりやすい図星を見逃すほど甘くない者が、キュピーンと目を輝かせる。
「ふーん? なるほどなるほど、そういうことだったのね。納得がいったわぁ」
「……な、何がだ『光耀神姫』」
「さっきから魔法バカが魔法バカしてない理由よ。まさか、虚勢を張ってるだけだなんてねぇ……ふっ、ふふふっ! あははははははははっ!! お、お腹痛い……面白すぎるわ!!」
「ええい! 笑うな! 違うといっておるだろうが!!」
「はいはい、ソウデスネー…………くふっ」
「わ・ら・う・なぁああああああああああああああああああああ!!」
ガタンッ! と大きな音を立てて椅子を蹴っ飛ばし、勢いよく立ち上がったマギステルが、笑いを我慢できず口元を手で押さえながら肩を震わせるアテネに指を突き付ける。
相性がいいのか悪いのか、顔を合わせるたびにこんな感じのやり取りをしている二人に、呆れとあきらめのため息を吐いたレイは、話の流れを元に戻そうと、口を開いた。
「じゃれ合いはそのくらいにするんだ、二人とも。今は悪魔対策をどうするかの話合いのはずだぞ」
「じゃれ合ってなどいないわ!」
「ふふふ……。はーい、分かったわ」
怒鳴り返すマギステルに、笑い続けながらも素直にうなずいたアテネ。そんな二人をひとまず置いておいて、レイが視線を向けたのは、リューとイーリスだった。
悪魔の正体を暴き、拘束するまで至ったのは、間違いなくこの二人の功績である。もしあそこでレイたちがリューの言うことを全面的に信じ、すぐに討伐に移行していれば……と、レイは後悔の念を浮かべるが、過ぎたことを口にしている余裕はない。今はとにかく悪魔へどう対抗するかを考えなくてはならない。
レイは、この二人こそ悪魔攻略のカギになると直感的に思っていた。集団戦は兎も角、単独戦力としては最高峰といっても差し支えないだけの実力を誇るリューと、悪魔に対して有利な神聖魔法を扱えるイーリス。
その利点をどうやって活用するべきか……とレイが考えていると、今まで沈黙を貫いていたリューが、スッと手を挙げた。
「発言、いいでしょうか?」
そう、告げられた言葉。
さして大きい声でもなく、円卓に座る者に行き渡る程度の声量で放たれたそれ。しかし、それを聞いた者は皆そろって、背筋が寒くなった。
まるで、背中に氷の塊を放り込まれたかのような感覚に襲われた、その原因はリューの声音にあった。
トーンも声量もこれまでとなんら変わらないのに、どうしてかブリザードが吹き荒れている雪原を幻視してしまうほどに、リューの声は冷たかった。
具体的には、言い合いを続けていたマギステルとアテネがぴたりと黙り、いそいそと席に行儀よく座るくらいの冷たさだった。
「「「「「ど、どうぞ……」」」」」
「ありがとうございます」
お礼と共に、にこりと微笑むリュー。戦闘中に浮かべる獰猛な笑みではない、好青年染みたスマイル。しかし、そんな笑顔がなぜだかとっても恐ろしい。よく見れば、リューの隣に座るアポロが青ざめた顔でガタガタと震えている。
戦闘中のリューが、激しく燃え盛る火炎だとすれば、今のリューは氷原を吹き荒ぶ冷風。ありとあらゆるものを凍てつかせるような凄味を放っていた。
会議室に妙な沈黙が訪れるなか、元凶たるリューは一切気にした様子もなく、さらりと告げる。
「では――――あの羽む……悪魔の相手ですが、俺に任せてもらえませんか?」
感想、評価、ブックマを付けてくださった方々、本当にありがとうございました!
「オタク式」もよろしくね!
あっ、そう言えば、五日後にソロ神官の三巻が発売です。よろしければぜひともお買い求めください。見本誌を読みましたが、毎度のことながらへいろー様のイラストが神ってますので。
表紙はサファイアとリューですね。内容的にもサファイアが活躍……まぁ活躍か、しますので、サファイアファンは必見ですよ、ええ!
四巻が出るかどうかは、皆さまにかかっているので、いやほんとマジで。
さぁて、次回のソロ神官は?
冷たき怒りを宿す我らが主人公。神官(爆笑)の怒りを買った悪魔さんの運命はいかに。この話では一度も話してない聖女様は、三日目の戦いでどんな役割を果たすのか。
そして考え直さなくてならない作戦はしっかりと完成するのか? ブラックな環境にも負けず、名もなきプレイヤーの努力が光る。
次回、『リバイヴ・オブ・ディスピア 対策3』。お楽しみに!




