リバイヴ・オブ・ディスピア 真相・下
五日ぶりですねどうもこんにちは、原初です。
さて、オタク式の更新もこの作品の更新もせず、アホな作者が何をしていたのかというと……。
FGOです。
どうぞクソ野郎と罵ってください。
FGOもどうせキャメロットとかで詰まるので、その辺りからはペースが落ちると思います。
ジャンタと婦長とアルトリアお迎えしたぞやったー。
……そう言えば、総合評価が五万超えましたね。めっちゃ驚いてます&めっちゃ嬉しいです。
これからも、どうぞソロ神官をよろしくお願いいたします。
「あく……ま……?」
「ああ、悪魔だ。この女性の姿は擬態ってとこか? 悪魔の持つ能力の一つらしい。まぁ、とにかくこいつはプレイヤーじゃないってことだ」
リューの言葉を反芻するサファイアに、リューが追加説明をする。
だが、リューを取り囲む面々の表情に納得した様子はなく、さらにリューへの不信感を募らせていた。リューの言葉には何の根拠もなく、適当なことを言っている可能性があるからだ。内容が突拍子の無いものであったことも、彼の警戒に拍車をかけていた。
「……その発言の根拠は?」
声音に多大な警戒を滲ませながら、レイがそう問いかける。リューが下手なことを言えば、即座に斬りかかりそうな雰囲気である。
『勇者』の二つ名を持つレイは、人一倍正義感が高い性格をしている。悪しきもの許さず、断固として対抗する。それが彼の在り方である。
そんなレイにとって、不意打ちで女性に殴りかかったリューの行動は『悪』だった。今、レイがリューに襲い掛からないのは、聖女であるイーリスがリューに協力しているからである。リューの行動が暴走や悪意あるモノであるなら、イーリスがそれを許すはずがない、という判断だ。
レイの質問に、「確かに、俺の言葉だけじゃ信じられませんよね」と頷いたリューは、イーリスの方を向き、視線で合図を送った。
イーリスはその合図に頷きを返すと、手のひらをリューへと向け、目を閉じて呪文を唱え始めた。その詠唱は、先程、女性プレイヤーに向けてしたのと同じモノだった。
「――――【ホーリープリズン】」
やがて、魔法が発動し、リューの足元に聖気で構成された魔法陣が現れ……一拍の後、パリンッ! と音を立てて魔法陣が砕け散った。
それを見ていた者たちから、ざわめきがこぼれる。それは、魔法が発動しなかったことに対する驚きと、なぜいきなり魔法を使ったのかという戸惑いがまじりあったざわめきだった。
そんな彼らに向けて、イーリスは説明を開始する。
「私の使う神聖魔法【ホーリープリズン】は、詠唱にもあるように悪しきものを閉じ込める聖域牢獄です。邪や魔に属するモノに対しては絶対の拘束力を誇りますが、その反面、聖や善の属性を持つモノを拘束しようとすると、今のように砕け散ります。……つまり、【ホーリープリズン】が正常に発動しているということは、悪魔かどうかは兎も角、この者が悪しき存在であることの証明になります。今の私の発言に嘘が無いことを、我が神に誓いましょう」
まさしく聖女様、といった神聖さを感じさせられる佇まいで放たれたイーリスの言葉は、他者を強制的に納得させるほどの説得力に満ちていた。
イーリスの雰囲気に飲まれ、リューを取り囲んでいた者たちは何も言えなくなる。彼らの中にあったリューの行動に対する疑念は薄れ始めていた。
もしかして、神官の言っていることは正しいのではないか。いや、まだ疑わしいことには変わりない。けど、話におかしなところはないぞ。……そんな言葉が、プレイヤーたちの間で交わされる。
それを尻目に、リューはレイへと笑いかける。
「レイさんも、納得していただけましたか?」
「………………ああ。聖女様が……万神教の者が、神に誓ってまで証明したんだ。嘘は言っていないだろう。けれど、いきなり襲い掛かるのはどうかと思うよ。もし、間違いだったらどうするつもりだったんだい?」
「その時はその時です。……悪魔が紛れ込んでいると気づいた後、会議室にいる人の顔と人数を確認しました。幸い、ここにいる全員の顔と、ここにいる人数は覚えてましたから、確認は簡単でしたよ。そのあと、イーリス様にも確認していただいたので、間違いは無いとほぼ確信していましたが」
「お、覚えていた? ここにいる全員を?」
「ええ、自己紹介はしてもらってますし、顔と名前くらいは」
「……君は、どういう記憶力をしているんだい?」
さらりと言うリューに、レイは呆れたような笑みをうかべた。どれほど敵意をぶつけられてもあっけらかんとしたリューと、そんな彼を強く信じているイーリスの様子に毒気を抜かれたのか、レイの表情から疑念や敵意は消え去っていた。握りしめていた聖剣を納め、武装を解除する。
レイが武装を解いたのを見て、他の者も警戒をやめ、リューへ向けていた武器を降ろした。
「ふぅ……」
「信じてもらえてよかったですね、リュー様」
「……はい。全員に武器を向けられたときはどうしようかと思いましたけど、なんとかなって安心しました。…………流石に、全員を無力化するのは骨が折れますから」
「リュー様?」
「いえ、なんでもありません」
ぼそりと恐ろしいことを呟くリュー。こてんと首をかしげて尋ねるイーリスに、誤魔化しの笑顔を返す。
そんな二人のもとに、アポロとサファイアの二人が近づいてきた。
「いやぁ、しっかし、マジで驚いたわ。リューがいきなりそいつに襲い掛かったもんだから、ついにマジもんのバーサーカーになったのかと思ったわ」
「ん。日頃の行いがアレだから、勘違いした」
「はっはっは、それはどういう意味だ二人とも?」
うんうんと頷きながら言うアポロとサファイアに、リューがにっこりと目の笑っていない笑みを浮かべて見せる。
「「ッ!? い、いえ、なんでもありません! サー!」」
「うむ、よろしい。……けどまぁ、何も言わずに決行したのは悪かったよ。お前らにも相談しようかと思ったんだが、正体が知れていることがこいつにバレたら、逃げられてたかもだったんでな……」
「……ねぇ、リュー君。それ、フレンド通信とかメッセージとかでこっそりすればよかったんじゃ……」
サファイアの言葉に、もっともらしい理由を並べていたリューがぴたりと押し黙る。
「……リュー君? もしかして……」
「……行動は、迅速なほどいいと思ってな」
「思いつかなかったの?」
「うぐっ……!」
思いっきり目をそらして誤魔化そうとするリューに、サファイアのジト目が突き刺さる。
どうやら、悪魔を滅することを考えるあまり、『周りと協力する』とか、そういった思考はお空の彼方に飛んでいってしまったらしい。恰好がエクソシストっぽくなったせいだろうか?
「リュー……お前……」
「神官……流石にそれは……」
「くふっ! ふふふふふふっ! あははははははははっ!! お、面白すぎでしょ、神官君!!」
「リュー君、ソロ活動が基本だからといって、何もかもを一人でやる必要はないんだよ?」
サファイアの鋭い指摘に狼狽えたリューを、アポロとマギステルの呆れた視線が突き刺さる。アテネは容赦なく爆笑し、レイは大まじめに忠告を送った。
トッププレイヤーたちの視線を一身に受けたリューは、しばらく「あー」とか「うー」とかバツの悪そうな顔で唸った後、ガックリと項垂れ、
「……あ、はい。反省します。ごめんなさい」
と、素直に謝ったのだった。
しょぼくれたリューの姿に、会議室中から笑いが漏れる。そこに、先程までの緊張した雰囲気は、すでに存在していなかった。
武装解除し、弛緩した空気の中、その場にいた者たちは思い思いに雑談を始めた。
「……なんか、動画の時と印象が違うな」
「それな。血も涙もねぇ鬼かと思ったけど、ああしてみると普通のヤツだな……脳筋だけど」
「脳筋……確かにそうね。あのただひたすらに敵を倒すことしか考えてないところとか、まさしく脳筋だわ」
「戦闘狂で狂戦士で脳筋で……あれ? 神官ってなんだったっけ?」
「あいつは神官じゃない、『SHINKAN』だ」
「なるほど、わからん」
「……いやあの、ホントに反省しますから、好き勝手言うのやめてもらえませんかね……?」
「「「「「だが断る」」」」」
「なぜに!?」
「…………って! 私を無視しないでよッ!!」
漫才染みたやり取りをしていたリューたちは、聞こえてきた叫びに、そちらを振り返る。
そこには、拘束された状態の謎の女性プレイヤーが、泣きそうな表情でこちらを睨んでいた。
リューにふっ飛ばされ、イーリスと二人掛かりで雁字搦めに束縛された、悪魔疑惑のある女性プレイヤーだ。
「……しまった。すっかり忘れてた。一番忘れちゃいけない相手なのに」
「私もです。認識を逸らされて……? もしかすると、これも悪魔の能力なのかもしれません」
「なるほど。ありえますね」
「違うわよ! 貴方たちが勝手にドンパチ始めて、勝手に忘れただけよ!! 私のせいにしないでちょうだいッ!!」
女性プレイヤーの言葉に、リューとイーリスが驚いたように目を見開く。
「何よ、その反応は!? 悪魔だからって、なんでもかんでも私のせいにするんじゃないわよッ!!」
「……あっ、やっぱり悪魔であってたのか。確信はあったけど万が一で違う可能性もあったからな。確認できてよかったよ」
「……はっ!? しまった、ついうっかり!?」
どうやらうっかり口を滑らしたらしい女性プレイヤー―――悪魔は、ぐぬぬ……と悔しそうな顔でリューとイーリスを睨みつけた。
「小癪な……! 女の顔に容赦なく打撃叩き込むわ、悪魔を悪魔の腕で拘束するわ、挙句の果てには存在を忘れるわ。何なの貴方!? 悪魔よりよっぽど悪魔染みてるわよ!?」
「いや、ただの神官だ」
「嘘よ! 貴方みたいなのが神官なはずないじゃない! バーサーカーかバンデッドの間違いでしょ!」
「……【インパクトシュートォ】ッ!!」
「ひぃ!?」
ガイィイイン! と音を響かせてリューが放ったヤクザキックが弾かれる。その結果を見て「チッ」と舌打ちを漏らすリュー。相手が敵だと判明したせいか、かなり容赦が無い一撃だった。
「リュ、リュー様!?」
「イーリス様、結界の解除を。今のアイツは抵抗が出来ません。ここにいる全員の一斉攻撃で仕留めましょう」
「え、あ、はい!」
「皆さんも、攻撃の準備を!」
リューがそう声を張り上げるが、ついさっき完全に武装解除したばかりの彼らは、少しばかり準備に手間取ってしまった。
そして、その隙をまんまと突かれてしまう。リューの意識が他のプレイヤーたちに向いた瞬間に、悪魔は全身から魔力を放出し、自らにかけていた変化を解除し、本来の姿を取り戻す。
黒色の髪はくすんだ灰色になり、瞳は真紅の輝きを放つ。肌は抜ける様に白くなり、そこに何かの紋章が入れ墨のように刻まれた。その身を包んでいた一般的な衣服は黒を基調とした、胸や局部だけを覆う水着のような鎧となった。
側頭部からはねじくれた角が伸び、背中の下の方からワイバーンのものに似た黒い翼が生え、さらに臀部の上あたりから黒く先のとがった尻尾まで生えてきた。
魔力の放出によって、リューとイーリスの拘束を吹き飛ばした悪魔は、先程の狼狽え振りが嘘であるかのような、余裕たっぷりの態度で艶やかな笑みをうかべて見せた。
「くっ……、なんて禍々しい魔力……! これが……悪魔!」
悪魔が放つ邪悪な魔力に当てられて、イーリスが苦し気な声を漏らす。その身に神聖なる力を宿す彼女にとって、正反対の性質を持つ悪魔の魔力は危険な代物だった。慌てて自らの周囲に神聖魔法による結界をはる。
「イーリス様、大丈夫ですか!?」
「結界を張ったので、大丈夫です。それよりも、悪魔を……」
「ふふっ、残ねん。遅いわよ」
嘲笑を含んだ笑い声と共に、ふわりと浮遊した悪魔が魔法を放つ。自身の背後に魔法陣をいくつも展開し、そこから雨あられと色とりどりの魔法が会議室内を埋め尽くす。
「ぐわっ!? いきなりかよ! 【ガーディアンシールド】、【フォートレス】!」
「くっ……【アイシクルウォール】」
とっさに反応出来た者たちは、魔法やアーツで降り注ぐ魔法の雨を防ごうとする。幸い、牽制用の魔法なのか威力自体はそこまで高くない。だが、その分その数は凶悪だった。前が見えなくなるほどの魔法の乱舞。弾幕という言葉そのものの光景がそこにはあった。
そして、その魔法の弾幕を、もっとも至近距離で喰らったリューとイーリスは、その脅威に最も強く晒されていた。
「うぐ……! 《闇色覇気》……!」
「リューさまぁ!」
イーリスを背にかばいながら、体に闇色のオーラを纏ったリューは魔法の弾幕をその身で受ける。《闇色覇気》によって魔法によるダメージは軽減されている。しかし、あまりに膨大な数によって、それもあまり意味を成していない。ガリガリと削れていくHPを【ヒール】で回復しながら、リューは耐える、耐える、耐える。
しかし、MP消費の激しい《闇色覇気》と連続【ヒール】によって、リューが耐え切るよりもリューのMPが絶える方が早い。そのことにそうそうに気が付いたリューの表情が険しいモノになる。
それに気づいたのは、一番近くにいるイーリスだった。リューの苦しそうな表情を見て、余裕が無いことを悟ったイーリスは、魔法の弾幕のわずかな隙間から視認した、魔法陣を背に浮遊する悪魔を見据え、叫ぶ。
「そこです! 【ホーリーピラァアアアアアア】ッ!!」
悪魔の真下の床に、純白の魔法陣が現れ、そこから天を突く聖気の奔流が放たれた。
「っ!? まず……っ!」
聖気を持つ者にとって悪魔の魔力が有害なら、その逆もまた然り。己の弱点である神聖魔法の気配を感じ取った悪魔は慌てて回避行動をとる。
とっさに飛び退いた悪魔に、聖気の奔流は当たらなかったが、代わりに空中に展開されていた魔法陣を飲み込み、それを完膚なきまでに破壊した。
それによって、リュー達に降り注いでいた魔法の雨は止んだ。
「くっ! よくもやってくれたわね、小娘! こうなったらまずは貴女から……!」
「――――貴女から、なんだって?」
「……!? きゃぁ!?」
イーリスへと怒りの視線を向ける悪魔に攻撃を放ったのは、いつの間にか紅戦棍を手にしたリューだった。魔法の雨が止むと同時にその場を飛び出し、宙に浮かぶ悪魔へと、跳躍からの渾身の打撃を放ったのだ。
寸前で悪魔はそれに気づき、身を捻って打撃を躱した。そして、反撃の魔法を空中で身動きの取れないリューへと放つ。
それを黒鎧腕で払いのけたリューは、床に着地し、上の悪魔を見やった。その視線は刃のように鋭く、そして、口元には獰猛な笑みが浮かんでいる。闘志と殺気をむき出しにしたリューから《威圧》が放たれ、悪魔にプレッシャーを与えた。
リューのプレッシャーに、僅かだが身を震わせた悪魔は、ジッとリューを見下ろす。
「やらせるかよ。イーリス様も、ここにいる奴らも」
「あのとっさによく動けたものね。……それにその笑み。やっぱり貴方、神官じゃないでしょ? 悪鬼羅刹の類よね?」
「ハッ、なんとでも言え。鬼だろうが悪魔だろうが悪鬼羅刹だろうが化物だろうが。それでお前を殺れるなら構わねぇよ。さぁ、戦おうぜ、悪魔」
「……危険ね、貴方。そこのちっちゃな聖女も、予想以上の力を持ってるみたいだし……仕方ないわね。ここは、引かせてもらうわ」
引く、という言葉に、リューがとっさに悪魔へと跳びかかろうとしたが、それよりも早く悪魔が魔法による障壁を張り、リューの侵攻を拒んだ。
後方より魔法が飛来するも、それも障壁に阻まれてしまう。全ての攻撃を防ぎ切った悪魔は、艶やかに微笑むと、リューとイーリスに向かって告げた。
「おかしな神官に、聖女ちゃん。じゃあ、また明日ね。今度は戦場で会いましょう」
悪魔の足元に魔法陣が展開され、悪魔の体が大気に溶けるように薄くなっていく。空間転移による逃げの一手だった。
【ソードオブフェイス】を発動したリューが光の剣を放つも、間に合わない。一拍早く悪魔は消え去った。悪魔がいた空間を、剣が虚しく通り過ぎていく。
―――――貴方たちは、私が殺してあげる。
悪魔が消える直前に、リューとイーリスの脳裏に、そんな声が流れた。
悪魔の残したメッセージ。冷たい殺意のこもった殺戮の予告状に、イーリスは思わず自身の体を強く抱きしめた。悪魔の放つ邪悪な魔力の気配がまだ残っているような気がして、寒気と恐怖が止まらなかった。
そんなイーリスの肩に、リューが後ろからそっと手を添えた。両肩に置かれたリューの手に、イーリスは縋りつくように己の手を重ねる。リューの暖かさが、己を守ってくれる騎士がすぐそばにいるという事実が、イーリスに多大な安心感を与えた。
小さく震えるイーリスを見下ろしながら、リューはぼそりと誰にも聞こえないくらい小さく呟いた。
―――――上等だ、クソ悪魔。
二ィ、とリューの口端が吊り上がる。口元に刻まれる、獰猛な歓喜に溢れた笑み。瞳は爛々と輝き、強者との戦いへの期待に満ちていた。
……この時の二人の様子を見ていたサファイアは、のちにこう語った。
「……聖女様は、リュー君の手に自分の手を重ねて、凄く幸せそうに笑っていた。見てるだけで、こっちが和むくらい」
「……そして、その背後で、獰猛に凶悪に嗤うリュー君。とってもかっこよかったけど、聖女様とのギャップのせいで……その……」
「………………………………だいぶ、怖かった」
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「オタク式」もよろしくね!
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