リバイヴ・オブ・ディスピア 対策
なんか五日も空いてしまい、申し訳ない。
二日目もいよいよ大詰め。ここから頑張って三日目まで書いていきたい。
……って思ったけど、テストダメで追試ですorz
グラシオン・ゲーティスの実力が、想定していたものよりも、ずっと強いかもしれない。
その事実はすぐさま五大ギルドのトップたちに伝えられ、急遽対策会議が行われることになった。会議室にアポロ、レイ、ガンダールヴ、マギステル、アテネの五人のほか、各ギルドの幹部が集まっていた。
円卓に座るギルドマスターたちは、【ソロモン】のメンバーの手で配られた資料に目を通し……難しい顔で黙り込んだ。
「万を超えるアンデッドの大群……」
「さらに詳細が不明な召喚魔法の使い手……」
「本人の実力は人間の時ですでにレベル100を超えている可能性がある……か」
「それが不死の王となっているんだ。どれほどの脅威か分かったもんじゃない」
「こりゃぁ、厳しい戦いになりそうだな。流石、ここの運営。鬼畜具合に拍車がかかってるぜ」
おどけたようにいうアポロも、今ばかりは真剣な表情を崩さない。そのくらいの空気を読むことはできるのだ。……決して、背後に立つサファイアの眼光が怖いからではない。ないったらない。
「さて、どうするよ? 万を超えるとなると、今の戦力で対抗できるか分かんねぇぞ?」
「こっちの戦力は……大体三千か。数の有利は向こうにあるな」
「一人一人の質は……まぁ、こちらの方が上か。あたぁ、俺らの作る兵器群がどれだけ機能するかだな。アンデッド相手なら、バリスタよりも投石器の方がいいだろう。あいつらには刺突より打撃が効果的だかんな。一応、罠の類も作っておく」
「あとは、炎の魔法と神聖魔法……神聖魔法は置いといて、炎魔法は……マギステル?」
「無論だ。すでに炎魔法が得意なメンバーでチームを組ませてある。少なくとも、四方に分けられるだけの数は用意した」
「よしっ、じゃあとりあえず、明日の戦いの時の配置をもう一度見直して……」
ギルドマスターたちによる対策会議は、恙なく進んでいく。誰もが積極的に意見を出し合い、議論はどんどん熱を帯びていく。彼らの表情は真剣そのものであり、全員がこの危機を乗り越えようと意志を一つにしているのだ。
やがて会議は、各ギルドの副ギルドマスターや幹部のプレイヤーをも巻き込んで、大規模な議論に発達していく。人数が増えたことで、時に罵声が飛び、取っ組み合いの喧嘩をする者が現れたり、色々考えて出した結論がたった一つの情報で台無しになったりと、会議は混沌を極めていった。
それでも、彼らは徐々に作戦を形にし、決まったことを迅速に各箇所へ伝え、必要な準備を続けていた。
そんな中、このイベントの最重要人物たる聖女イーリスと、その護衛であるリューはというと……。
「……皆さん、すごいですね」
「……ええ、そうですね。本当に、凄いと思います」
会議室の隅っこで、大量に積まれた書物に囲まれ、二人そろって遠い目をしていた。
ペラリペラリとページをめくりながら、内容を読み解き、時折会議の方へ耳を傾ける。本の中から何やら重要そうな情報を見つけた時には、逐一まとめて会議の場に報告するという作業を静かに遂行していた。
何故二人が会議に参加せず、そんなことをしているのかといえば、単純な話。敵の対策や作戦の立案に置いて、二人がまるで役に立たなかったからである。
最初は二人もギルドマスターたちと一緒に、会議へ望もうとしていた。
しかし、考えてみて欲しい。片や、戦いとはほぼ無縁な生活を送って来た聖女様。片や、パーティープレイに置いて壊滅的な才能を持つソロ特化の神官(笑)である。
そんな彼らに、まともな作戦立案などできるだろうか? 答えは、否だ。
会議開始十分程度で話にまるでついていけなくなった二人は、ガックリと項垂れて自らギブアップを宣言。
だが、このまま何もしないというのは情けないにもほどがあるということで、量があり過ぎて中途半端になっていた本の確認をすることになったのである。
「こんなことなら、少しは戦いについても学んでおくべきでした。お役に立てないのが悔しくて仕方ありません」
「いやいや、イーリス様は聖女じゃないですか。戦法の類に対して無知だろうと、誰も悪いとは言いませんよ。……問題は俺ですよね。ただ単に敵を倒すだけなら、殴って蹴って斬って……みたいな感じでいいんですけど、複数人での戦いとなると、何をどうしたらいいのかさっぱりで……はぁ、情けない」
どんな敵だろうと撃ち砕いてきたリューも、ことこの分野に関しては本当に手も足も出ない。もはや得意不得意に収まらず、そう言う星のもとに生まれてきてしまったというレベルでパーティープレイが苦手な自分。
そんな自分自身では、この場に置いて何の役に立つこともできない。それが分かっているからこそ、こうして自分にできることをしているのだが……それでも、ふがいなく思う気持ちを抑えることはできなかった。
そして、リューが何よりも辛く感じていること。
ちらり、とリューの視線が円卓の方へ向けられる。
彼の瞳に映るのは、会議が紛糾する円卓の中心に立ち、立派にギルドマスターの役目をはたしているアポロと、その隣で言葉少なでありながら、話の要所要所で的確な指摘をするサファイア。
普段のグータラ&ダメな二人からは想像も付かないほど頼りがいのある姿に、思わず涙腺が緩くなりそうなリュー。
「リュ、リュー様? どうしてそんなに優しい目をして会議を見守ってるんですか?」
「いやぁ、あの二人がああしているのを見るのが嬉しくて……。いいところもいっぱいありますけど、同じくらいダメなところもある奴らですから」
「リュー様はお二人の母親か何かですか……」
なんだかんだで兄馬鹿なリュー。
だからこそリューは、こうして今、直接二人の力になれないことがとても悔しかった。二人を見つめる視線に、そっと寂しさの色が混ざる。
はたから見ると、手のかかる子供が独り立ちすることを寂しがる親以外の何モノでもなかった。
「ま、まぁ、嘆いたところで出来ないものは出来ませんし、取り合えず私たちにできることをしっかりこなすとしましょう!」
「……ええ、そうですね。本もまだまだありますし…………本当に全部読めるんですかね、これ」
「この作業を始めてすぐ位に、《速読》というスキルを覚えましたよ。今もレベルがすごい勢いで上がってます」
「またピンポイントな……って、いつの間に習得できるようになってる!? ……スキルポイント1だし、俺も習得しておこう」
こうして、スキルの力を借りつつ、二人は通常では考えられないようなペースで本の山を攻略していく。特にリューはレベル90の高ステータスを以て、残像が見えるような速度でページをめくっていた。高ステータスの無駄遣い、ここに極まれり。
何冊もの本を読み解き、情報を抜きだし続けていると、ふとリューの目に気になる記述が飛び込んできた。一旦手を止めて、そのページをじっくり読んでみる。
「ふむ……『アンデッドの発生原因について』?」
そこには、こう書かれていた。
『アンデッドとは、一度死に、魂が抜けた肉体だけが何らかの原因で動き出した存在。または、負の魔力によって存在を保っているものの総称である。
肉体だけで動き出した存在は、ゾンビやグール、スケルトン。負の魔力によって存在しているのはレイスやスペクター、リビングアーマーなどである。
こういったモンスターは、放置された死体に負の魔力が宿ったり、負の魔力と残留思念が混ざり合って発生する。また、ネクロマンサーの死霊術によって強制的にアンデッド化されることもある。
しかし、そのどちらにも分類されないアンデッドが存在する。それは、不死の魔導士やその進化種族である不死の王だ。
このモンスターは人間の力ある魔導士が、さらなる魔導の深淵を求めるために、生命の楔から解き放たれた存在である。膨大な魔力と複雑怪奇な儀式によってなされる秘術が必要となる。
不死の魔導士や不死の王が普通のアンデッドと決定的に異なっているのは、明確な自我を持つところと、自然発生や死霊術での強制発生が皆無なところである。
不死の魔導士も不死の王も、人間の魔導士が秘術を使ってアンデッド化した個体しか存在しない。
魔導士がこの二種になる時に必要なものは、秘術の他にもう一つある。それは魔導追及に対する執念だ。狂うほど強い執着の感情が、生命から外れた存在であるアンデッドになった後も明確な自我を持つことを可能とするのである。
そのため、不死の魔導士も不死の王も魔導の追及にしか興味がなく、そのためならどんな非道な手段もいとわないが、それ以外のことは本当に眼中にない。それを証明するかのように、不死の魔導士にばったり遭遇してしまった冒険者が、研究において何の役にも立たないと判断され、あっさりと見逃された例が存在する。そして……』
「へぇ、そんな設定があったのか。…………おん?」
そこまで読み終えたリューは、猛烈な違和感を感じ、首を大きく傾げる。
何かが、変だ。そんな曖昧な疑問が胸中に湧き上がる。具体性は何も無い、だが、気のせいだと切り捨てるにはあまりに大きな違和感に、リューは眉をひそめた。
そんなリューの様子に気付いたイーリスが、手を止めて声を掛ける。
「リュー様? 何か見つけたんですか?」
「ええ……。アンデッドに関して記述されているんですが……この文章を読んだ途端、何かこう……大きな違和感を覚えまして」
「違和感、ですか?」
「はい。けど、何が引っかかってるのかが分からなくて……」
そう言って、リューは近づいてきたイーリスに、自分の読んでいたページを見せる。リューの横に腰掛け、その体にもたれかかるようにして身を乗り出したイーリスは、差し出されたページに目を通した。
「ふむ、確かにアンデッドに関する情報ですね。それも、かなり詳しいもののようです。教会でもアンデッドの研究はしていますが、ここまでの資料は無かったと思います。……それで、どこら辺が違和感何でしょうか?」
「えっと……」
リューはもう一度どこをおかしく感じたのかを確かめるべく、ページに目を通した。
すると、二度目の読み込みで理解度が深まったおかげか、今度はどの部分が違和感なのかが少しだけはっきりした。
「……後半部分、ですね。不死の魔導士と不死の王の記述がされているあたりです」
「後半部分ですか……」
今度は、二人で一緒にページの後半部分に目を通す。一度でだめなら二度。二度でだめなら三度。それでもダメなら四度五度と、何度も繰り返し読み込んでいく。
そして、
「「……あっ!?」」
違和感の正体に、たどり着いた。
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