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ソロ神官のVRMMO冒険記 ~どこから見ても狂戦士です本当にありがとうございました~  作者: 原初
四章 初イベントと夏休みの終わり編

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リバイヴ・オブ・ディスピア 過去

更新です。

 グラシオン・ゲーティス(旧暦215~238) 

 ナルメア王国に仕えた召喚士。ゲーティス男爵家の三男として生を受ける。幼少期より非凡な魔法の才能を見せ、五歳で魔導学園に最年少で入学し、僅か二年で卒業。もちろん卒業も史上最年少である。その後、魔法の修行のために各地を旅し、数々の偉業を成し遂げた。中でも有名なのは『巨獣ベヒモス』の討伐や『悪霊の迷宮』の攻略などだろう。その功績を以て宮廷魔導師の地位に就き、第一王女の護衛役に任命された。その後もナルメア王国の危機を幾度となく救い、民衆の間では英雄として扱われていた。しかし、ある時期より一部の貴族との衝突や騎士団、魔法団との確執などが増え、最後は冤罪により処刑された悲劇の英雄とされる。特に召喚魔法に高い適正を持ち、強力な魔物で構成された魔軍を支配する。通り名は『最強の召喚士』『ナルメア王国の矛にして盾』『孤高の万軍』など。

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 旧暦230年

 グラシオン・ゲーティスが最年少にて宮廷魔導師に任命される。同時に五代ナルメア国王の一人娘である第一王女エピス・メイリージュ・ナルメアの護衛役を任される。

 旧暦232年

 隣国ハティス王国の侵攻が起こる。これを、ナルメア王国南部の草原地帯に於いて宮廷魔導師グラシオン・ゲーティスが撃退。『孤高の万軍』の通り名をそのまま体現したかのような召喚魔法による魔物の軍勢を以て僅か一日足らずで敵軍を半壊させた。

 旧暦234年

 国内にて魔物の氾濫が多数発生。とある違法実験により魔界の門が開いてしまったことが原因と推測される。もっとも魔物の数が多かった西部へとグラシオン・ゲーティスが遣わされ、魔群を見事殲滅。被害は最小限に収まった。しかし、ナルメア王国騎士団及びナルメア王国魔法団の混成部隊が事態の対処に当たった土地では救助の遅れが生じた場所がいくつかあり、その土地では町や人々に甚大な被害が生じた。これにより、民衆はますますグラシオン・ゲーティスを英雄視するようになる。逆に、被害を抑えることが出来なかった騎士団と魔法団を軽視する傾向があった。

 旧暦235年

 王宮内部でグラシオン・ゲーティスを狙った暗殺事件が起こる。幸い、暗殺者はグラシオン・ゲーティスの手により撃退され、被害はなかった。この頃からグラシオン・ゲーティスを亡き者にしようとする動きが、一部の貴族を中心に密やかに進行していた。

 旧暦238年

 グラシオン・ゲーティスが第一王女エピス・メイリージュ・ナルメア暗殺事件を起こす。任務により一時的に第一王女の護衛から離れ、遠方に出向いていたグラシオン・ゲーティスは、空間魔法によって第一王女の元に転移し、その命を断とうとした。グラシオン・ゲーティスの代わりに護衛に就いていた騎士団の手によって暗殺は防がれ、グラシオン・ゲーティスは王族反逆罪にて捕らえられ、その後処刑された。『英雄の謀反』という大事件に、ナルメア王国中に激震が走った。

 旧暦240年 

 第一王女エピス・メイリージュ・ナルメアが『英雄の謀反』が冤罪であることを発表。事件の真実は、騎士団と魔法団の一部の者と複数の高位貴族が手を組んで、グラシオン・ゲーティスの排除を目的としたモノだった。

 旧暦245年

 ナルメア王国の滅亡。突如国中に現れたアンデッドモンスターの群れにより、全てが滅ぼされた。首謀者はグラシオン・ゲーティスを名乗る一体の不死の王(ノーライフキング)だった。それは、死したグラシオン・ゲーティスが深い絶望と怨念のうちにアンデッドとして復活した姿だった。当時のナルメア王国内では、すでに冤罪のことは知れ渡っており、グラシオン・ゲーティスを悪く言う者はいなかった。しかし、モンスターとなった彼に言葉を伝えることが出来る者はいなかった。誰もがグラシオン・ゲーティスを止めようと彼の前に立ちふさがり、そして殺されていった。騎士が殺され、魔導士が殺され、貴族が殺され、庶民が殺され、最後には王族までも……彼が長く護衛を務め、幾度となくその仲が噂された第一王女エピス・メイリージュ・ナルメアまでが、殺された。ナルメア王国から一切の生命を奪い去った後、その不死の王(ノーライフキング)は忽然と姿を消した。












 ……それが、グラシオン・ゲーティスの最後と、ナルメア王国滅亡の記録だった。


 リューが発見した歴史書をさっそくとばかりに読み進めた四人。何かグラシオン・ゲーティス攻略への糸口になる情報があるのでは、と四人ともが思っていたのだが、その内容は予想だにしないものだった。


「これは……酷い。酷すぎます。爵位が低い家の出で、重要な役職を任せられた者の末路としてはよくある話です。けれど、これはあまりにも……」


 目に涙を浮かべて、悲痛な表情を浮かべるイーリス。


「選民思想に染まり切った貴族ども。自らの失態からの支持の低下にも拘わらず、活躍した者を妬む騎士団と魔法団。そいつらの悪意によって殺された英雄、か……。胸糞悪い話だ。気に食わん」


 しかめっ面で吐き捨てる様に言うマギステル。


「そして、死した英雄は亡霊となって国を滅ぼしました、と。……おとぎ話のようですが、とても子供には読み聞かせできませんね」


 どこかおどけたように……それでいて沈んだ声で淡々と言葉を吐くセイ。


 まさしく悲劇と呼べるグラシオン・ゲーティスの生涯の記録は、少なくない衝撃を彼らに与えていた。倒さなくてはならない敵であるにも関わらず、その救いようのない終わりから、同情心を抱いてしまっている。

 駄目だと思いながらも、湧きあがる感情を抑えることが出来ない。複雑な心模様が、三人の胸中を満たしていく。

 だが。


「ふむ……なるほど。召喚魔法にだけ注意すればいいというわけではないようですね」


 そんな言葉が、沈んでいた三人の耳に届いた。

 自然と下を向いていた視線を持ち上げれば、そこには難しい顔で歴史書を読み込むリューの姿。

 そんな彼の表情からは、グラシオン・ゲーティスの悲劇的な生涯に対する感情は何一つ見つけられない。

 それどころか、心なしか楽しそうですらあった。ただ淡々と、グラシオン・ゲーティスを『倒すべき敵』だと見なし、その攻略方を模索している。

 そんなリューを、三人はどこか信じられないモノを見るかのような目で見つめた。この話を知って、何も思わなかったのか、と。


「しかし不思議ですね、騎士団と魔法団はどうやってグラシオンを捕らえたのでしょうか? 実力的に、とても達成できるとは……」


 ブツブツと考え事を進めるリューに、イーリスは思わずといったように声を掛けた。


「あ、あの……リュー様?」

「……ん? ああ、すみません。考え事に集中していました。どうかしましたか、イーリス様」

「えっと……リュー様は、グラシオン・ゲーティスの話を知って、どう思いましたか?」


 え、別に何も。

 そんな返答が返ってくるのではないかと恐れながら、イーリスは突然の質問にきょとんとしたリューの答えを待つ。

 リューが心優しい人物であることは間違いない。しかし、それと同じくらい戦いが好きで、敵と見れば容赦も慈悲もないのは付き合いが短いイーリスにも分かることだ。普段は柔らかな笑みをうかべていることが多いリュー。しかし、戦闘中の彼は、控えめに言っても修羅か鬼でしかない。

 すでに、リューがグラシオン・ゲーティスのことを倒すべき敵と断定しているのなら……。とイーリスが考えていると、リューは「ああ」と何か得心がいったというような声を漏らした。

 そして、すぐに表情を笑みに変えた。修羅の如き獰猛な笑みではなく――――酷薄で、冷たい笑みに。

 リューが初めて見せた表情に、イーリスは思わず息を呑んだ。そんな彼女に構わず、リューは平坦な声で話し始めた。


「確かに、悲劇的な話ではありますね。身内の裏切りによって、若くして処刑された英雄。……ええ、ここだけを聞けば悲劇的です。……その後、グラシオンは死霊となって復讐に走った。まぁ、冤罪を掛けられ罪人に仕立て上げられて、理不尽に命を奪われたんですから、気持ちは分かります」


 けれど、とリューは言葉を続ける。


「彼は―――守るべき存在にも、手を掛けた」


 その言葉は、やけに重くイーリスの耳を打った。


「それ以外の部分には同情もしますが……俺には、それがどうしても受け入れられない。そんな選択をしたことが、許せない。……だからまぁ、グラシオンに関しては、倒すべき敵以外の何物でもないって感じですかね」


 これでいいですか? と笑みの質を柔らかいモノに戻したリューが尋ねる。

 もうすでに、いつものリューだ。柔らかい笑みの似合う、優しいリュー。

 けれど、イーリスの脳裏には、先程までリューが浮かべていた凍てつくような笑みと、重い言葉がどうしてか強く残っていた。


「ふふっ、それにしても。敵であろうと、こうして同情心を抱けるイーリス様は、本当に優しい方ですね。流石聖女様……と、言ったところでしょうか?」

「おい、神官。なぜそこで聖女だけを指す。俺も同情はしただろうが」

「それに関しては僕も同意ですね。ひいきはいけませんよ?」

「おっと、失礼しました。お二人も、大変すばらしい人格者かと」


 おどけたように頭を下げるリューに、マギステルとセイはふっと笑みを漏らした。今まで流れていた暗い雰囲気が払拭された。

 

「さて、それじゃあ……気合を入れて、グラシオン・ゲーティスの攻略法を考えましょう。敵はかなり強大ですし」

「そうだな。さっきまでサボっていた分、全力でやらせてもらおう」

「おっ、ギルマスが珍しく反省してる。悪いモノでも食べましたか?」

「お前……! お前ぇ……! いちいちそういうことを言うでないわッ!!」

「あっはっは、言われたくないなら態度を改めてください、ギルマス?」

「あはは、お二人は本当に仲が良いんですねぇ」


 マギステルとセイがいつも通りのやり取りをし、それを側で眺めるリュー。楽しそうに微笑むその姿からは、あの冷たいリューの雰囲気など微塵も感じられない。

 

(気のせい……なのでしょうか?)


 『守る』ということに、強い反応を示したリュー。しかし、ほんのわずかな間であったことから、イーリスはその変化を気のせいだと思ってしまった。

 ……そのことを、後悔することになるのは、そう遠くない未来の話だ。

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