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ソロ神官のVRMMO冒険記 ~どこから見ても狂戦士です本当にありがとうございました~  作者: 原初
四章 初イベントと夏休みの終わり編

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リバイヴ・オブ・ディスピア 敗北

誰のとは言わない。

 《狂信の聖戦士》。リューがそう告げた瞬間、リューの体が白菫色のオーラに包まれた。穏やかにリューの身体に巻き付くオーラは、それでいてどこか圧迫感を感じるようなモノだった。

 オーラに包まれたリューを前にして、残った三人は怯んだのか体を硬直させ、顔色を悪くした。



「……お、お前ぇ! どういうことだよ! お前は魔法が使えないと何もできないんじゃねぇのかよ!」


「いや別に、誰もそんなこと言った覚え無いぞ? 確かに出来ることはだいぶ減るけど、俺の戦闘スタイルって基本的に近接戦闘だし。強化手段も魔法だけってわけじゃないからな」


「な……!」



 リューの言葉に、オロボスは絶句する。

 確かに、リューは戦闘に置いて魔法をよく使う。回復魔法然り、付与魔法然り、【ソードオブフェイス】然り、召喚魔法然り。

 さらに、掲示板に上がっているリューの動画は、魔法の使用頻度がかなり多いのだ。近接戦闘を行う前に必ず付与魔法を使っていることから、「リューの近接戦闘は、付与魔法あってこそ」と勘違いしてもおかしくはない。神官という職業自体に、近接戦闘がまるでダメというイメージがある分、「神官の近接戦闘に置けるデメリットを付与魔法で打ち消している」とされ、その勘違いは真実味を帯びることになる。

 実際、オロボスに魔法封印薬を渡した人物は、リューのことをそう判断したのだろう。それが恨みつらみからくる視野狭窄か、自分が恨みを持つ人物に何かしら弱点があってほしいという想いからくるものかは本人しか分からないが、その勘違いのせいで、オロボスはリューのことを過小評価し、こうして窮地に陥っているのだ。

 リューの戦いの根底を成すのは、一度相手の攻撃を見れば、次からは確実に対処できる記憶力。そして、戦闘とあらばどれだけ不利な状況だろうと楽しめる精神性。特に後者は自分が追い込まれれば追い込まれるほどテンションが上がるという謎仕様になっている。

 詰まる所、オロボスがリュー対策としてしたことはすべて、リューを楽しませるためのものでしかなかったというワケだ。自業自得とは言え、あんまりである。



「フル強化には及ばないけど……まぁ、自分が魔法を使えない場合どうなるのか。それの、いい勉強になったよ。どうも、ありがとう」


「……ッ! ……ッ!! ふ、ふざけんなァッ!!」



 リューの言葉と浮かべる笑顔に、邪気は一切含まれていない。リューは本心からその言葉を口にしていた。

 オロボスにとっては、(方法を致命的に間違えているとはいえ)ギルドの威信をかけた戦い。だが、リューにとっては「貴重な体験ができたなぁ」という認識に過ぎない。



「ふざけてなんかないぞ? ……まぁいいか。さぁ、続きをしよう。まだ三人も残ってるんだからな」



 ニコリ、と朗らかに笑い、リューはタンッと地面を蹴った。



「クソッ、やるぞテメェら! あの神官をぶっ殺せぇえええええええッ!!」


「う、ウォオオオオオオオオオオッ!!」


「ぬぅッ!」



 オロボス、オッドム、オルダは駆けてくるリューを迎え撃つ。

 疾駆するリューはすでに紅戦棍を構えており、すぐにでも強力な打撃を放つことのできる体勢にあった。



「三度目の正直だ! 今度こそ止めさせてもらおう!!」


「はッ、いいだろう。真正面からぶち破ってやるよ!!」



 まず、前に出たのは守護騎士オルダ。一度目はふっ飛ばされ、二度目は無視された彼は、今度こそはッ! と決意を漲らせる。

 リューは笑みを深め、オルダの構えたタワーシールドに紅戦棍を叩きつけた!



「【パワークラッシュ】!」


「【ガーディアンシールド】ッ!」



 ガキンッ! と、衝突音が響き渡る。

 


「グッ……! やはり重いなッ! だが、今度は受け止めたぞッ!」


「うーん、やっぱさっき見たいにゃいかないか」



 《狂信の聖戦士》は、《信仰の剣》と《信仰の盾》の二つが融合進化したスキルだ。筋力と耐久を一度に上げるのでMP効率は上がり、また強化率も上昇している。だが、流石に強化魔法をいくつも発動させた状態よりは強化率に劣る。

 しかし、元のスキルの段階ですでに、『信仰心(MIND)物理(STR)耐久(DEF)に変え、神官を戦士に仕立て上げる。次いでに剣とか盾とか出る』というゲテモノ。その進化系が、この程度で終わるはずがない。



「使い勝手はあんまりよくないんだけど、この状況なら関係ないか……」


「何をぶつぶつ言っている!」


「おっと、悪い悪い。別にお前のことをほっといたわけじゃない…………」



 リューがそこで言葉を止め、左右から襲い掛かって来たオロボスとオッドムに素早く視線を巡らす。オルダがリューの足止めをしてい隙を狙ったであろう挟撃。左からオロボスの大剣での振り下ろしが、反対側からオッドムの炎を纏った突きが繰り出される。

 リューはとっさにオルダの盾を蹴り付け、その反動で後ろに跳ぶ。オロボスの大剣は空を斬り、オッドムの突きは正面にいたオロボスに刺さりそうになる。

 


「うおッ! な、何しやがるオッドム! 気を付けやがれ!」


「ワザとじゃねぇよ!」


「お前ら、言い争っている場合か! 何か仕掛けてくるぞ!」



 罵り合うオロボスとオッドムに注意をしたオルダだったが、少し、遅かった。



「――――制定」



 リューが紅戦棍をくるり、と手の中で弄びながら、『宣言』を始める。



「『我、神の名のもとに教義を【戦棍による打撃】と定め、これを絶対順守の掟とする』」



 言葉が紡がれると、紅戦棍をリューが纏っているものと同じ色のオーラが覆っていく。紅戦棍を覆ったオーラは凝縮され、その表面を薄く覆う形に圧縮された。



「【自己本位的教義エゴイスティックドグマ】。さぁ、実戦で使うのは初めてのアーツだ。お披露目に付き合ってもらうぞ?」



 まるで新しいおもちゃを自慢する子供のような無邪気な笑みを浮かべ、リューは三人に襲い掛かる。



「何がお披露目だこのクソがッ! オルダ、さっきみたいにアイツを足止めしろ! 俺とオッドムで隙を突くぞ!」


「了解したぜ!」


「うむ、もう一度受け止めて見せよう!」



 先ほど、リューがオルダの防御を抜けなかったことに味を占めたのか、同じような戦法を使おうとするオロボス。

 彼の指示に従い、オルダが突進してくるリューの前に立ちはだかり、【ガーディアンシールド】を発動させる。ついさっき自身の攻撃を受け止めたそれを前にしても、リューは立ち止まらない。紅戦棍を振りかぶり、上半身の捻りで生んだ力を乗せて振り下ろそうとする。



「【パワー………」


「ふんッ! 先ほどの同じ技とは舐められたものだな! そんなものが効…………」



 そう、余裕の表情でリューの一撃を受け止めようとしたオルダは――――



「クラッシュ】ッ!!」


「くぐべぺらッ!!?」



 ――――――僅かな抵抗すら許されずに吹き飛ばされた。


 地面と水平に飛んでいったオルダは、そのまま母なる大地へヘッドバット。HPこそ全損していないが、転がったままピクリともしない、ゲージの隣には星がくるくると舞っている様子をデフォルトしたアイコンが表示されていた。『気絶』のバッドステータスを示すものだ。



「ハァ!? どうなってんだよ、それ!?」


「驚いてる暇なんて無いぞ? 時間もあんまりないんでな、さっさと決めさせてもらう。【フォースジェノサイド】」


「あがッ!? ちく……しょぉ…………ッ」



 オルダが吹っ飛んだことに驚き、動きを止めてしまったオッドムに、下から掬い上げるようなスイングで放たれた紅戦棍が突き刺さり、宙を舞った。空中で身動きが取れないオッドムに切り返しのような二撃目が直撃。勿論のようにHPは全損である。



「ォオオオオオオオオッ!!」


「最後はお前か、オロボス」



 そして、最後の残ったたった一人。オロボスが大剣を両手で握りしめ、リューに斬りかかる。

 彼がそろえた十二人は、瞬く間に倒された。嵐の中でなぎ倒される草木の如く、戦闘と言うより蹂躙といった様でやられていった。

 今のオロボスに、リューをどうこうしようとか、ギルドのことなどは頭になかった。ただ、仲間を血祭に上げた目の前の輩を倒すことしか考えていなかった。……まぁ、自業自得なことには変わりないが。



「【デモンストライク】ゥウウウウウウウウッ!!」


「くはははははッ! オラァッ!」



 オロボスのアーツを発動した袈裟斬りの一撃を、同じく袈裟に振り下ろした紅戦棍ではじく。斬撃を打撃で迎撃し、攻撃で防御を成していく。



「くっ……オラァアアアアアアアアアアアッ!!」


「クハハ、ハハハハハッ、ハーッハッハッハッハッハッハッ!」



 両者はその場に足を止めると、壮絶な打ち合いを始めた。防御など一切考えない攻対攻のせめぎ合い。大剣とメイスが幾度となく打ち合わされ、甲高い音を連続で鳴らす。そこに混じるオロボスの絶叫とリューの哄笑。血塗れで物騒な二重奏デュオが闘技場に響き渡った。

 だが、その二重奏デュオは、やがて均衡を崩し始める。あからさまにオロボスが押され始めたのだ。リューの連撃によって行動そのものを阻害され、攻撃も防御も上手く出来なくなった。

 オロボスの表情が焦りでいっぱいになる。このままでは、確実に……。

 そんな、弱気なことを考えたからだろうか。ついにリューの一撃がオロボスの手から大剣を吹き飛ばした。



「…………ぁ」


「クハッ、【フォースジェノサイド】ォ!」



 トドメは一瞬だった。両手で紅戦棍の柄を握ったリューによる、全力の振り下ろし。オロボスの脳天を粉砕するかの如きその一撃は、二重奏デュオに終幕をもたらした。



「(くそ……どうして………畜生…………ッ! 神官野郎がッ……!)」



 最後までリューへの悪態をつきながら、粒子となり消えていくオロボス。彼が最後に見たものは、『気絶』したまま動けないオルダへと、容赦なく紅戦棍を叩きつけるリューの姿だった。

これが神官。


感想、評価、ブックマを付けてくださった方々、本当にありがとうございます!


『彼岸の華が咲く頃に』もよろしくね!

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― 新着の感想 ―
[一言] 【自己本位的教義】って流石に宣言の内容によって効果の度合いが変化するか宣言できることが制限されてますよね? じゃなきゃ『戦闘行為』とか宣言するとデメリットないようなものになりますし
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