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ソロ神官のVRMMO冒険記 ~どこから見ても狂戦士です本当にありがとうございました~  作者: 原初
四章 初イベントと夏休みの終わり編

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リバイヴ・オブ・ディスピア 岩山

更新が遅れてすみませんでした。


あれですね、久しぶりの戦闘シーンだったので、どうも勝手がつかめず……といったところです。

 草原をハヤテにのって駆け抜けること三十分。リューとイーリスは、最初の目的地である岩山フィールドの入口に到着した。



「思ったより速く着きましたね」


「途中でイーリス様が使ってくれた強化魔法のおかげですよ」


「……というか、リュー様も一応は神官職なわけですし、強化魔法は使えますよね?」


「あはは……えっと、俺の強化魔法って、自分にしか掛けられないんですよね。職業特性でそう制限されてまして……」


「……リュー様、神官とは、神の代行者として他者を救い、導く者のことですよ? 分かってますか?」


「ちなみに、回復魔法も自分にしか効果がでません」


「リュー様!? 本当に神官を何だと思ってるんですか!」


「ははは……実は俺もよく分かってないんですよね」


「笑い事じゃありません! もうっ、リュー様には神官が何たるかを、私が教えてあげなくては!」



 ぷんすかと怒るイーリスに、苦笑を浮かべるリュー。やはり、本職であるイーリスからしたら、自分は異端な神官なのだと、今さらなことを再確認した。

 

 ハヤテから降りて、魔法陣に還した後、二人はそろって岩山フィールドに足を踏み入れた。まだ誰も入ったことのない、未知の場所へと。

 風にたなびく草の絨毯から、砂と岩だけで構成された世界に切り替わり、そして。



「グォゥオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」



 ――――フィールドに入ってすぐに現れた、巨大なモンスター。


 その姿を一言で表すなら、鬼。


 赤銅色の肌に、筋骨隆々な巨体は三メートルほど。天を突く二本の角が額から生えている。大気を振るわせる咆哮を放つ口には、ずらりと並んだ鋭い牙。

 

 そして、その手に持つ武器は、鋭い突起の付いた六角棒。とても重そうなそれを、軽々と片手で振り回していた。


 岩山フィールドに入ってすぐの場所は、開けた広場になっている。ここがボスエリアであることを、リューは瞬時に理解した。


 即座に紅戦棍を取り出すと、赤鬼の頭上に視線を巡らせる。そこに表示された名前は『獄緋鬼』。レベルは60。

 この程度ではあまり楽しめそうにないな、という内心の不満をおくびにも出さず、リューは赤鬼を見て呆然としているイーリスに声をかけた。



「イーリス様、とりあえずあれを倒してきます。少しだけ待っていてください」


「え、あ……。わ、私も一緒に!」


「お気持ちだけいただいておきましょう。それに……あの程度の敵なら、俺一人で十分ですので」



 そう言って、リューは笑みを浮かべる。いつもの優し気な笑みではない、戦いに飢えた獣の笑みを。


 リューのその笑顔を始めてみたイーリスは驚いたように目を見開く。それに気づかず、リューは言葉を続ける。



「俺がアレと戦っているときの護衛は、アヤメにしてもらいます。『我がうちより目覚めよ、我が使い魔。その名はアヤメ』」



 詠唱。魔法陣が展開。そこから現れたアヤメは、すでに状況を理解しているのか、イーリスの側にそっと寄り添った。



「よろしくな、アヤメ」


「………………(ぐっ)」



 任せて、とでも言うように親指を立てるアヤメ。

 イーリスは、どこかぼーっとした瞳で、リューに視線を送り続けていた。

 それを、いきなりモンスターが出てきて驚いているのだろうと結論付けたリューは、次々とスキルと魔法を発動させ、自身を強化していく。



「では……行きますッ!」



 そう声を張り上げたリューは、地面を強く蹴り、紅戦棍を肩に構えて赤鬼に躍りかかった。



「リュー様!? えっ、いきなりすぎません!?」



 リューの見たことのない表情に目を奪われていたイーリスは、急速に動き出した事態に取り残されていた。

 赤鬼に向かっていったリューを見て、慌てて自分も戦いに参加しようとする。

 けれど、それをアヤメが遮った。両手を広げ、イーリスの前に立ちはだかる。



「あ、アヤメ様、どいてください! ボスモンスターは一人で相手に出来るような、簡単な存在じゃ…………ふぇ?」



 立ちふさがるアヤメの、その向こう側。

 そこで繰り広げられる光景を見たイーリスは、気の抜けた声を上げ目を見開いた。

 


「くははッ! オラァッ!!」


「グゥオオッ!?」



 ぶつかり合う深紅のメイスと鬼の六角棒。

 競り合ったのは一瞬。跳ね飛ばされたのは六角棒の方だった。赤鬼の体勢が大きく後ろに崩れた。

 そこに、狙いすましたかのようなリューの蹴り。鳩尾を的確に打ち抜く一撃に赤鬼のHPが大きく減った。クリティカルヒット。



「【ソードオブフェイス】!」



 リューの手は止まらない。魔法を発動し空中に剣を並べ、一息後に発射。赤鬼の身体に深々と切っ先が埋め込まれた。



「グゥッ!? ォォォオオオオオオッ!!!」



 これ以上好きにさせてなるものか、と赤鬼が六角棒を大きく振り回す。が、それはリューの【バックステップ】によりやすやすと回避される。

 赤鬼は、離れたリューに向かって、口から吐き出した火炎を浴びせかかる。大地を嘗める炎の波を【ハイジャンプ】で回避したリューは、空中で【ソードオブフェイス】を詠唱。作り出した短剣を握りしめ、空中に躍り出る。

 一度上昇し、脚から急降下。グリーヴの踵が赤鬼の頭頂部目がけて降り堕ちる。

 赤鬼はそれを横に飛んで回避。巨体に似合わぬ俊敏さを見せたが、地面に降り立ったリューが【バックステップ】を使用し、背面を向けたまま赤鬼に急接近。



「オ……ラァッ!!」



 そして、回転。正面を向くとともに紅戦棍をフルスイング。体勢を下げ、地を這うようなその一撃は、赤鬼の右の膝下を強く打ち据えた。

 


「グアァ!?」



 ガクリ、と打たれた膝をついた赤鬼。そのHPゲージの横には部位破壊のアイコンが無慈悲にも浮かび上がる。

 だが、赤鬼も黙ってやられるばかりではない。膝をつきながらも、胸板が大きく膨らむほどに息を吸い込んで、口から特大の火炎を吐き出す。

 攻撃後の体勢がわずかに崩れたところを狙われたリューは、その炎を回避できる状況になかった。【バックステップ】はクールタイム、【ハイジャンプ】を発動するにも大勢が悪い。

 

 結果、リューは燃え盛る火炎に飲み込まれた。



「リュー様!?」



 イーリスが悲鳴を上げる。イーリスの護衛に集中していたアヤメも、少し拙いと思ったのか尻尾の毛が逆立った。


 だが、今まで数多のモンスターと常識を破壊してきた二重の意味での破壊者デュアル・デストロイヤーたるリューは、二人の予想を軽く裏切って見せる。


 突如、地面を埋め尽くすように広がっていた炎から、闇が噴き出した。



「グォオ!?」


「……《闇色覇気》。驚いてもらえた見てぇだな、鬼野郎」



 闇夜を凝縮したかのようなオーラを纏ったリューが、炎の中で不敵に笑みを浮かべる。今まさに灼熱の波に飲まれているというのに、リューのHPの減りは驚くほど微々たるものだ。


 アッシュの作り出したリュー専用装備、[黒狗装衣『マルコシアス』]に付与されたスキル。その効果は、『自らの総合ステータスの中で一番高い能力値によって違った効果を持つ』というもの。

 現在、強化魔法を使わないリューのステータスで一番高いのはMINDだ。ここに強化スキルを加えるとSTRに変わる。

 リューは炎が自分に浴びせられる前に、自身にかけていたSTR強化を半分ほど解除。それによってリューのステータスが一時的にMINDが一番高い状態に変わり、《闇色覇気》は『魔法攻撃で受けるダメージを大幅に減少させる』という効果を持つようになる。その効果によってリューは赤鬼の炎をほとんど無傷で耐えたのだ。ちなみにこのスキル、MP消費が毎秒20となかなか厳しいところが玉に瑕だ。


 リューは驚いている赤鬼に牙を向くような笑みを浮かべると、《闇色覇気》を解除して、紅戦棍を振り上げながら跳躍した。

 振り上げられた紅戦棍に対し、赤鬼は六角棒を立てて防御の構えを見せる。片足が動かない今、赤鬼には防御の選択ししか残されていない。

 リューはそんな赤鬼の対応にニヤリと笑みを浮かべると、何を思ったか紅戦棍を手放した。

 そして、空になった両手で赤鬼が立てた六角棒を、突起を掴まないように注意しながらつかみ、落下中だった紅戦棍を強く蹴りつけ、その反動で体を横向きに振り回した。

 過激なポールダンスとでも言うべき動きは遠心力を生み、それはそのまま攻撃の威力に反映される。



「《獣撃》ッ!!」



 そこに、威力を上げる系のスキルが加わった。凶悪な破壊力を籠めた蹴りが、赤鬼の顔面にクリーンヒット。衝撃がまき散らされ、一対の角の片方が砕け散る。



「グゥウウウウウウウウッ!!?」



 苦し気なうめき声が赤鬼の口から漏れる。そのHPゲージの隣に、今度は暗闇の状態異常を現すアイコンが表れた。顔面を強く打ち据えたリューの蹴りは、赤鬼から一時的に視力を奪ったのだ。


 だが、その巨体から連想される頑丈さは伊達ではないのか、一秒と立たずにそのアイコンは消え去り、赤鬼に視力が戻ってくる。

 


「グゥウ……、グゥオオッ!?」



 だが、視力が戻った途端、赤鬼は戸惑いの声を上げた。

 赤鬼の視界内からリューが消えていたのだ。突然の敵の消失に、赤鬼は不用意に辺りに視線を巡らせてしまった。


 それが、致命。


 

「【スラッシュ】、【ファングエッジ】、【サークルスラッシュ】」



 声が聞こえてきたのは、赤鬼の足元。そして、剣閃が三度煌めいた。

 一刀目は赤鬼の無事な方の足の筋を斬り裂き、二刀目は同じ足の膝に突き立てられた。三刀目は両足に斬撃を走らせた。

 無事な片足を徹底的に壊した後に、両の足にとどめとばかりの一撃を叩き込むリューは、間違いなく鬼畜の類である。

 赤鬼の足を破壊したのは、剣ではなく、リューの片腕甲冑。アッシュ製の『防具であり武器である』という特殊な装備[黒鎧片腕甲冑『ヘジン』]によるもの。


 

「【クロスアサルト】」



 両足が使えなくなって前のめりに倒れた赤鬼に、容赦ない追撃が襲い掛かる。リューが発動したのは、二本の剣による十字斬りを叩き込むアーツ。

 これは、剣が二本ないと発動しないアーツだ。しかし、リューは片腕甲冑しか剣が無い。


 リューがミスをしたのか。そうではない、今この瞬間、リューは剣をもう一本隠し持っているのだ。


 一撃目、手刀の形にした片腕甲冑が横薙ぎに振るわれる。

 次いで、横に薙いだ腕を真上に振り上げたリューは、もう一本の剣の名をつぶやく。



「《黒刃展開》!」



 その宣言が、片腕甲冑に、片刃の剣の幻影を重ねた。

 それは、実態を伴った幻影。そして、スキルで生み出された剣は、『装備とは別の武器と判断される』。

 


「ハァアアッ!!」



 幻影の黒刃が振り下ろされ、アーツが成立。十字に刻まれた斬撃痕に、赤鬼が苦し気な呻き声を上げた。


 ここまで、圧倒的な戦い振りを見せるリュー。だが、苦しむ赤鬼から離れ、その頭上を注視したリューの浮かべる表情は、苦々しい。



「……これだけやっても四割ちょい。硬すぎないか、この鬼」



 赤鬼のHPゲージは、あれだけの猛攻を受けても、半分も削れていなかった。


 しかし、リューが苦々しい表情を浮かべたのも一瞬。すぐに元の獰猛な笑みを口元に刻む。



「――――まぁ、それならHPが無くなるまで(死ぬまで)殴るだけだ」



 耐久値が高い? ああ、そんなことは関係ない。


 殴って叩いて潰して斬り付け突き刺し穿ち抉り続ければ、最後に勝つのは俺だ。


 さらに笑みを深めたリューは、【バインド】や【召喚『束縛する悪魔の黒腕』】を使いすでに動けない赤鬼の動きを徹底的に封じると、MPポーションで減ったMPを補給。


 地面に投げ捨てたままだった紅戦棍を拾い、【ソードオブフェイス】で作り出した大剣を握りしめる。


 

「じゃ、行くぞ」



 語尾に『♪』が付きそうなほど上機嫌で、軽い声音で吐かれた死刑宣告。


 そして、執行人は、両足を破壊され、魔法で拘束された哀れな咎人に、容赦ない攻撃の嵐を叩きつけ始めた。


 その光景を唖然呆然と眺めていたイーリスは、のちにこう語る。



 ――――鬼の目にも涙、とは、ああいうのを指すのでしょうか? と。



 

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[一言] 多分ちゃうんやで聖女ちゃん…
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