リバイヴ・オブ・ディスピア 護衛②
更新が遅れまくりで、本当に申し訳ないです。
そう言えば、いつの間に総合ポイントが四万超えてる……すげぇ……。
「……え、えっと……。ど、どうして俺が信頼できるって思ったんですか?」
聖女様の笑顔に固まっていたリューは、我に返ると誤魔化すようにそう問いかける。
イーリスはそんなリューの様子に気付いているのか気付いていないのか判断の付きにくい笑みで、「そうですね」とつぶやいた。
しばし考えるようなそぶりを見せ、自分の中で納得できる答えが出たのか、一度こくり、と頷いて見せた。
「……やはり、きっかけはグラシオン・ゲーティスから救ってもらったことです。あの時、私は死を覚悟しました。いくらアンデッドに対して有効な神聖魔法が使えるからといって、私自身戦闘を得意としているわけではありません。かの死霊の王と相対しているときは、正直生きている心地がしませんでした」
そう、うつむきながら告白するイーリスの肩は、小刻みに震えていた。顔も血の気が引いている。あの時のことを思い出しているのだ。グラシオンにたった一人で立ち向かい、殺されかけた時のことを。
すぐにイーリスの手を取ってその恐怖を拭ってあげたくなるリューは、ソファーから腰を浮かしかける。
だが、リューが動くよりも早く、イーリスはうつむいていた顔を上げた。胸の前で手を組むと、まっすぐな瞳をリューに向ける。
「もうダメだ。そう思ったとき―――――貴方が、来てくれた」
その瞳には、隠しきれない熱がこもっていた。その正体は羨望だろうか? それともそれ以上の感情か。その真意を知っている者は、たった一人。イーリスだけ。
「私とグラシオンの放った魔法との間に割って入り、その一撃で魔法を打ち破って見せた。あの時の貴方の背中は、今もこの目に焼き付いています。そして、グラシオンの強大な力を前にして、貴方は一歩も引かずに対峙して見せた。恐ろしい竜が出てきても、怯えることなく冷静に対処した。そして……死霊の王を、見事に退散させた」
熱に浮かされたように、速いテンポで語るイーリス。その様子はまるで、幼子が憧れの英雄のことを話しているかのよう。
「リュー様が私の前に立った時、凄く安心したんです。この人なら、私を守ってくれるって、なんの根拠もなしに信じられたっていうか」
「……それが、理由ですか?」
そう尋ねるリューに、イーリスは微笑みながら首を横に振った。
「リュー様は、私の命の恩人です。……けど、それだけじゃないんですよ? 実は、この部屋にリュー様をお呼びする前に、貴方の幼馴染の二人に貴方のことを少しだけ聞いてみたんです」
「アポロとサファイアに? ……へ、変なこと言ってませんでしたか?」
「ふふっ、ご安心を。リュー様のこと、二人はすごく褒めていましたよ? 優しいとか、面倒見がいいとか、家事が万能とか、怒ると怖いとか、たまに抜けてるところがあるとか、鈍感が過ぎるとか……」
「後半褒めてないですよね。……あいつら後で泣かす」
「ふふっ……。本当に、仲が良いんですね」
「ま、まぁ。文字通り生まれた時からの付き合いですからね」
「……あの二人は、貴女のことを本当に慕っていました。リュー様が二人を信頼しているだけでなく、二人もリュー様のことを信頼している。二人のことは、それだけで信用できそうです。本当に、素晴らしい関係だと思います」
「ははは……、そう言われると、少し恥ずかしいです」
少しだけ頬を赤くしたリューが、それを誤魔化すように頭をかいた。その口元には、戦闘中のものとは種類の違う笑みが浮かんでいた。簡単に言えば、アポロとサファイアが褒められたことが嬉しいのだ。リューのこの『お兄ちゃん』な感性は多分一生無くならない類のものだろう。魂に刻まれていると言っても過言ではないかもしれない。
リューが浮かべた笑みの意味を、正しく理解したイーリスは、私の選択は間違っていなかった、と心の中で独り言ちる。
イーリスが護衛に求めているもの。それは、彼女の言う通り『信頼』できるかどうか、だ。
『信用』ではなく、『信頼』。
イーリスにとって、『信用』は『信じて用いる』ということであり、要は利用できるかどうかである。それとは違い、『信頼』は『頼れると信じる』こと。前者はイーリスが信用している者を使うということ。後者は信頼している者に自身を預けるということなのだ。
つまり、イーリス自らの命の主導権を渡しても大丈夫な者だけが、彼女の『信頼』を得ることができるのである。
「そんな風に、誰かに信頼されていて、その誰かを貴方も信頼している。そういう関係を築けているリュー様なら、信頼できる。私は、そう思いました。これが、二つ目の理由です」
「…………」
静かに、されど力強く断言したイーリスに、リューは少し考え込むように言葉を断った。そして、何かを決心したように小さく頷くと、イーリスのエメラルドの輝きをまっすぐに見つめると、口を開いた。
「……イーリス様の思いは、確かに受け取りました」
その言葉に、イーリスは瞳を輝かせる。
「で、では……!」
「はい……。改めて俺、リューは、イーリス様の護衛を務めさせていただきます。貴女の命を預かることをお許しいただけますか?」
リューは、芝居がかった口調で頭を下げた。決してふざけているのではない。聖女イーリスの護衛として相応しい態度をとろうとしているのだ。
そんなリューの真意をくみ取ったイーリスは、クスリと小さく微笑んだ後、表情を引き締め聖女然とした雰囲気を纏う。
「許可します。聖女の信頼を勝ち取りし者、リュー。汝はこれより、我が騎士として我に仕え、我を守りなさい」
「ありがたき幸せ」
頭を下げたリューと、それを静かに見つめるイーリス。厳かな沈黙が執務室内を支配していき……。
「……ふふっ」
「……くくっ」
どちらからともなく、もう我慢できないというように噴き出した。
リューが下げていた頭を上げると、おかしそうに笑うイーリスの姿が目に入った。
「結構ノリノリでしたね、イーリス様?」
「ふふっ、私、ああいうやり取りにちょっと憧れてたんです。かっこいいですから」
「まぁ、気持ちは分かります」
「あっ! なんですかその子供を見るみたいな生暖かい目は!」
「えっ、そんな目してました? ……というか、イーリス様って実際子供ですよね? 歳はいくつですか?」
「失礼ですね! 私は子供じゃありません! もう十二歳です!」
「……子供では?」
「違いますからっ!」
ぐっと親しさの増したやり取り。それは、二人の関係がより親しいモノになったことを何よりも雄弁に語っていた。
こうして、リューはイーリスを守ることを。イーリスはリューに守られることを。それぞれの心に刻み込んだ。
そんなとき、リューの眼前にシステムウィンドウが表れる。そこには、こう書かれていた。
――――――『リューは称号【聖女を護りし者】を手に入れた』
感想、評価、ブックマを付けてくださった方々、本当にありがとうございます!




