リバイヴ・オブ・ディスピア 会議①
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イベントクエスト:『リバイヴ・オブ・ディスピア』
内容:聖女イーリスと協力して、グラシオン・ゲーティスの野望を打ち砕け!
クリア条件:グラシオン・ゲーティスの討伐(0/1)
異界の無効化(0/1)
ファンブル条件:ナルメア王城の陥落
聖女イーリスの死
フィールド:異界『ナルメア』
期限:三日間
このイベントは、時間加速処理の施されたフィールドで行われます。イベントは三日に渡って行われますが、現実時間では一時間しか時間が経過しません。一時ログアウトする際はご注意下さい。
イベント内での行動によって、『貢献度』が溜まっていきます。『貢献度』の確認はできません。『貢献度』が高いほどイベント報酬が豪華になります。また、上位者には特殊報酬が送られます。ランキング上位目指して頑張ってください。
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イーリスの問いかけに応えたプレイヤーたちの元に、『リバイヴ・オブ・ディスピア』の詳細が送られてきた。それをしっかりと読み込んだプレイヤーたちは、イベント攻略に向けて動き出した。
とはいえ、千人を超えるプレイヤー達がただ無軌道に動いていては、クエストクリアなど不可能。というわけで、行動の方針を決めるべくトップギルドの面々による会議が行われることになった。
トップギルドとは、非公式で行われているFEOギルドランキング(PKギルドを除く)のトップ5入りしているギルドのことだ。そのギルドとは……。
5位……【ヴァルハラ】
神官ギルド。ギルドマスターは『光耀神姫』の異名を持つ『アテネ』。ギルドメンバーは自分のことを『信者』と称する。
4位 【ソロモン】
魔法ギルド。ギルドマスターは『魔導帝』の異名を持つ『マギステル』。マジックハッピーの集まり。汚物は消毒だァ!
3位 【クラフト】
生産ギルド。ギルドマスターは『親方』の異名を持つ『ガンダールヴ』。FEOで最大規模のギルド。生産職のほぼ全員が所属している。
2位 【ワールドフロンティア】
攻略ギルド。ギルドマスターは『勇者』の異名を持つ『レイ』。新人救済などもしているギルド。多くの戦闘職を内包する。
1位 【フラグメント】
攻略ギルド。ギルドマスターは『陽光の騎士王』の異名を持つ『アポロ』。少数精鋭にしてFEO最強のギルド。
である。
場所は、プレイヤー達の拠点として使われることとなったナルメア王城の会議室。上階に位置するその部屋の中央には円卓が置かれ、各ギルドのトップが席についていた。
円卓の扉から一番遠い席には、聖女イーリスが座っており、その背後には……なぜか、リューが立っていた。
「それでは、会議を始めます。進行は私、イーリスが行わさせていただきます」
その幼さに似つかわしくない静謐とした表情で、イーリスがそう宣言する。ピンと背筋を伸ばして椅子に座り、真剣な眼差しをまっすぐに向けている姿は、完璧に『聖女』様だった。椅子に座ると足が地面につかずプラプラとしているが、円卓で隠れているので無問題である。
イーリスの宣言に、円卓に座っていたギルドマスターたちと、その背後に立つギルドの幹部たちは一斉に頷いた。
それを確認した後、イーリスはゆっくりとその可憐な唇を動かし始めた。
「まず、私たちが成さなければならない使命を再度確認します。私たちの使命は、グラシオン・ゲーティスの野望を阻止し、この異界を破壊すること。この二つです。なお、グラシオン・ゲーティスの野望を阻止するということは、すなわち、対象の討伐と同義だと思っていただいて結構です」
「ちょっと、質問をいいかな?」
そういって手を上げたのは、【ワールドフロンティア】のギルドマスター、レイ。長めの金髪に碧眼がよく似合う、優男風のイケメンである。
手を上げたレイに対して、イーリスは「どうぞ」と促した。
「僕たちの目的がグラシオン・ゲーティスの討伐ってところまではわかるんだけど、異界の破壊って言うのはどういうことなんだい?」
「今、私たちが閉じ込められている異界は、完全閉鎖型の異界……つまり、出口の用意されていない異界なのです。そこから出る方法は、異界自体の破壊のみ。……それがなくとも、生贄の儀式場となっているこの異界を残しておく理由はありません」
「なるほど。ちなみに、異界の破壊と言うのはどうすればいいんだい?」
「確実な方法は、異界の核となっている物体を無効化することです。核を破壊することでも異界を破ることは出来ますが、その場合は核に内包された魔力が暴走することになり、様々な問題が発生します。なので、時間はかかりますが、無効化の方が良いでしょう」
「よくわかった。ありがとう」
お礼の言葉と共に、ニコリと微笑んで見せるレイ。アポロと並んで男性プレイヤーの敵と称される彼の笑顔の破壊力は計り知れず。爽やかスマイルに心奪われた女性は数知れず。
「はい。では、話を続けます」
けれども、聖女様モードのイーリスには、レイのスマイルは効果が無かったご様子。顔色一つ変えずに話を続けていく。
「異界の無効化は、必要な儀式が私にしかできませんので、私が務めさせていただきます。皆さまには、グラシオン・ゲーティスの討伐及び、城の守護をしていただきます。よろしいですか?」
「うし、今度は俺からいいか? ちと気になったことがある」
「ええ、構いませんよ。どうぞ」
レイに続いて手を上げたのは、【クラフト】のギルドマスター、ガンダールヴ。浅黒い肌に筋骨隆々な身体。あご髭の良く似合う男気溢れる容姿をしている。服装は例にもれず意味深な青いツナギだった。
「俺らの役割があの骨野郎の討伐っつうのは分かんだが……。城を守護するのはなんでだ? 拠点にしているからと言って、必ずしも守らなけりゃいけないってわけじゃねぇだろ?」
「いえ、この城は絶対に守って貰わなければなりません。先ほど、異界の核の話をいたしましたよね?」
「ああ……って、こたぁ、もしや?」
「ええ、このナルメア王城こそ、この異界の核です。ですから、絶対にここを明け渡してはなりません」
イーリスは、そう強く言い切った。
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