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ソロ神官のVRMMO冒険記 ~どこから見ても狂戦士です本当にありがとうございました~  作者: 原初
四章 初イベントと夏休みの終わり編

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リバイヴ・オブ・ディスピア 開幕

ダッシュエックス文庫のホームページで、表紙が見れるようになってました。ぜひチェックしてみてください! ……いつからああなってたんだろうか?

 リューがアッシュから新たな装備を受け取り、その非常識な性能に愕然とした日から数日が経過し、いよいよイベント『リバイヴ・オブ・ディスピア』の開催日がやって来た。



「おぉ……凄いな」



 イベント開始の十五分前に、開催フィールドである『旧ナルメス王都跡』を訪れたリューは、目の前に広がる光景をその瞳に映すと、感嘆を言葉にした。


 廃墟が立ち並ぶ草原に、遠目に見える廃城。リューが初めて訪れた時は夜であったため、昼間の様子との違いに若干面食らう。いつもならどこからかひょっこり湧き出てプレイヤーたちに襲い掛かるモンスターも、イベント用のマップということで

 そこに集まるプレイヤーたちは、ランクの高い装備を身に纏った強者の雰囲気を醸し出している孤高な者や、和気あいあいとした雰囲気のパーティーなど、実に様々。流れる雰囲気はどこか高揚しており、活気のある平和さがそこには……。



「ぬぉおお!? そこにいるのは我が同士リューではないか! 久しぶりの再会を悦び、我と一緒に幼女について語り合うというのはいかがかね!? そのついでと言っては何だが我が同士の使い魔である美幼女天使アヤメたんを召喚してはくれないだろうかというかぶっちゃけそっちが本題だったりするのであるがッ!?」


「死ねよ変態」


「ぶぺらッ!?」



 ……お、おおむね平和な空気が流れていた。


 人人人人……。イベントに参加するために、所狭しとプレイヤーたちが集まっていた。その数はそう簡単には数え終わることはできない程度には多い。滅多にお目にかかれない規模の人口密度に、驚きと感心混じりの感想を漏らす。


 

「ここにいる全員が同じ目的のために集まってきていると考えると……。うん、凄いとしか言いようがないな」


「ん。こういう大規模イベントの時は大体こんな感じ」


「だな。みんな早く始まんねぇかなぁってうずうずしてんだよ」



 リューの言葉に同意するように頷くサファイアとアポロ。三人から少し離れたところには、すでに【フラグメント】のメンバーが全員そろっていた。

 周りの他のプレイヤーたちは、【フラグメント】の面々を見つけると、にわかにざわめき始める。「あれが……」とか「おお……」という声が聞こえてくるあたり、流石はトップギルドというところだろうか。


 そんな視線など慣れっこなアポロとサファイアはもとより、最近何かと注目を集めているリューも、周りの反応に気が付きながらも、特に気にした様子もなくこれから始まるイベントについてあーでもないこーでもないと話していた。



「防衛戦ねぇ……? 一体何を守れと言われるんだろうな?」


「情報を事前に与えないのがここの運営のやり方だから、なんとも言えないな。事前対策を立てられないのが痛いけど」


「その代わり、イベント攻略に必要な物はイベントの中で入手することができるようになってる」

 

「へぇ、そうなのか」


「おーい、そこのお三方。もうすぐ始まるっすから、こっち来るっすよー」




 三人が話していると、【フラグメント】の残りのメンバーで固まっていたマオが近づいてくる。その隣には、【フラグメント】に加入することになったアッシュも一緒にいる。この二人、性格的にはあまり似ていないのだが、妙に馬が合うらしい。リューとサファイアを除けば、アッシュと一番仲がいいのは、間違いなくマオであろう。

 そんなマオの言葉にメニューから時間を確認すると、開始時刻の一時まで、もう五分を切っていた。

 久しぶりに顔を合わせた【フラグメント】のメンバーは、約一名を除きリューに好意的だった。

 サファイアとの関係の変化を女性陣に根掘り葉掘り聞かれたり、その様子をライゴにからかわれたり、そんなライゴをケイルがやんわりなだめて、フガクは何故か大笑いしていた。除かれた約一名であるパルケスは、ぶつぶつと小声で呪詛をつぶやきながら、呪い殺さんばかりの視線をリューに向けている。



「あのぉ……。パルケスさん? お久しぶり『は? 話しかけんな』……あ、ハイ」



 一応声をかけてみるも、取り付く島もなく、けんもほろろに追い払われるリューであった。



 さて、そんなことをしているうちに、イベント開始の時間がやってくる。メニューのデジタル表示の時刻が『12:59』から『1:00』に変わった瞬間、『旧ナメルス王都跡』に、鐘の音が響き渡った。

 

 それと同時に、青々と晴れ渡っていた空から光の筋が一筋地上に伸び、その中をゆっくりとした速度で一人の女性が降りてきた。そのいかにもな演出に、プレイヤー達から「おおっ」と歓声が上がった。

 光に包まれながら神々しい登場シーンを披露したのは、陽光をそのまま糸として生成したかのような、煌めく金色の髪を靡かせたハイティーンの美女。その背中には一対の純白の翼が生えており、頭上には光輪が浮かんでいる。その身に纏う一枚布を巻きつけただけのような衣装は、美女のメリハリのある体のラインをはっきりと浮かび上がらせている。

 その『ザ・天使』な人物(?)の登場に、にわかに色めき立つ男性プレイヤー達。そんな彼らを見つめる女性プレイヤー達の視線はどこまでも冷めていた。


 数多の視線を集めながら、その天使は伏せていた瞳をそっと開き、慈愛に満ちたアルカイックスマイルを浮かべ、プレイヤーたちを睥睨した。それと同時に天使の背後に巨大なモニターが現れ、天使の顔がアップで映し出された。


 それを見て、地上のあちらこちらで「ぐはっ」とか「と、尊い……」とか聞こえるのはきっと幻聴である。



『よくぞ集まってくれました、異邦人たちよ。私は【天命を告げる者】。名はガブリエル。我が主の呼び掛けに応えてくれたことに感謝します』



 天使――ガブリエルが、フィールド全域に響き渡るように拡大された声で話し始めた。



『あなた方に集まって貰った理由を、まずはお話ししましょう。我が主は、今日この場所に強い魔の気配を察知しました。さらに、その魔の気配に誘われるようにこの地に蔓延る瘴気が活性化しています。皆さまには、我が主が選出した者がこの地を浄化している間、邪気の活性化によって起こる魔物の大量発生の対処を請け負ってもらいたいのです』


 

 ガブリエルの言葉に、プレイヤーの間からざわめきが漏れる。


 今、ガブリエルが語った内容は、大規模イベントとしては規模が小さすぎるのだ。この程度なら、大型ギルド向けのクエストでも存在する。FEOの過去のイベントを知っているプレイヤーたちは、即座に悟った。


 このイベントの本質は、魔物の大量発生では、ない。


 そんなプレイヤー達の思考など知る由もないガブリエルが『それでは、あなた方に守っていただきたい者の紹介を……』と言いかけたその時だった。



 ゾクリ。




「「「「「………………ッ!!??」」」」」



 その場にいた全員が、原因不明の悪寒に襲われる。体中を流れる血の温度が絶対零度まで落とされたかのような感覚に、中には武器を抜いたものまでいた。というか、リューが「敵か!?」と喜々として紅戦棍を取り出している。


 そして、『ソレ』は現れた。


 

「………………ふむ、随分と集まったものだな」



 いつの間にそこにいたのか。宙に浮かぶ影が二つに増えていた。ガブリエルから少し離れた位置に、一目みて邪悪な存在だと断言できるようなオーラを纏ったローブ姿の人物が一人。フードを目深にかぶっており、その容姿を覗くことは叶わない。


 拡声しているわけでもないのに、やけに響く声でつぶやいたローブ姿の人物は、空中に掌をかざすと、そこに一本の杖が表れた。



『お前は……っ!? この魔の気配……、貴様が元凶か!』


「黙っていろ、神の狗め」



 警戒した声音で叫ぶガブリエルに吐き捨てるように告げると、紅玉が杖の先に埋め込まれた妖しげな杖を掲げ、何かをつぶやき始める。



「………呪文、詠唱?」


「みたいっすね」



 それに気づいたのは、魔法職であるサファイアとマオ。リューと同じようにその手に武器を取り出し、何が来るのかと警戒を強める。


 そうしているうちに、せっかちなプレイヤーの一人が、ローブ姿の人物に向かって発動の早い単体攻撃魔法を放った。それに触発されたかのように、魔法職や遠距離攻撃職のプレイヤーが一斉に攻撃を始める。


 魔法が、弓矢が、ナイフが、トマホークが、怪しげな薬品が。ローブ姿の人物へと殺到する。


 しかし、



「愚かな………『異界召喚ファントムワールド』」



 最初の攻撃がローブ姿の人物に当たる直前に、その魔法は完成した。


 膨張する魔力が、ローブ姿の人物に向かっていたすべての攻撃を消し去り、地上にいたプレイヤーを飲み込んだ。

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[気になる点] 『12:59』から『1:00』に変わった瞬間と本文にありますが、0:59から1:00か12:59から13:00が正しいのでは?
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