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ソロ神官のVRMMO冒険記 ~どこから見ても狂戦士です本当にありがとうございました~  作者: 原初
四章 初イベントと夏休みの終わり編

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イベントまでの道のり9

 結局、話が俺の装備のことにまでたどり着くのに、三十分くらいかかった。



「ご、ごめんなさい。リュー」


「いや、気にしてないから大丈夫だ」



 縮こまるアッシュに気にしなくていいと伝え、さっそく俺の新しい装備を見せてもらうことに。



「楽しみっすねぇ、副マス」


「ん。激しく同意」



 ……こちらを見て面白そうににやにやしているこいつらは放っておこう。どうせ楽しんでるだけだから。



「じゃあ、リューの装備を送りますね」


「ああ、頼む。……それと、本当にいいのか? アヤメの装備もそうだが、無料タダで貰って」


「いいんです。というか、お代分の素材やらなんやらは、十分すぎるくらい貰ってますし。それこそ気にしないでください」


「……まぁ、アッシュがそう言うなら。ありがたく、お言葉に甘えさせてもらうわ」


「はい、甘えちゃってください」



 アッシュはそう言うと、手元でささっとメニューを操作する。直後、俺の頭に『ピロリン♪』と音が響く。装備が転送されてきたことを知らせる合図だ。


 俺もメニューを開き、装備欄を展開。そこに納められた新たな装備を一つ一つ確認し、今までのものと入れ替える。……なんか、紅戦棍のところに気になる表示があったけど、後にしておこう。


 装備をすべて入れ替えたら、一番下にある『実行』をタップ。体が謎の光に包まれる。


 そして、それが消えた時……。



「わぁ……! 似合ってますよ、リュー!」


「ん。凄くかっこいい」


「確かに、先輩にぴったりって感じっすね。センスあるっすね、アッシュは」


「………………(ぱたぱた♪)」



 変化した俺の装いに、四者四様の感想を述べる(といってもアヤメは嬉しそうに尻尾をぱたぱた振っているだけだが)アッシュたち。

 

 彼女たちの反応にこそばゆいものを感じつつ、俺も自分の姿を確認する。


 大きく変わったところといえば、なんといっても色彩だろう。今まで白色を基調にしていた装備から一転、新たな装備は黒かった。

 デザインはキャソック――カトリック教会の聖職者の制服――のような形状のフード付きの重厚なロングコート。腰より少し上で絞められた緋色の帯には、ブックホルダーとそこに収まった手帳サイズの聖書が吊るされていた。胸元には、チェーンでつながれた十字架のネックレス。

 足元には膝までを覆う金属製のグリーブ。艶消しの黒に赤いラインが血管のように走っている。

 特徴的なのは、左腕を肩から指先まですっぽりと覆う甲冑だろう。肩当てとガントレットが一体化しており、指の先が鋭利な爪となっていた。

 

 『悪魔祓い(エクソシスト)』。


 一目見てそんな言葉が浮かんできそうな恰好だった。


 

「アッシュ、この装備のテーマは?」


「えっと、前の装備が[バトルプリースト]……『戦う神官』でしたので、今回は『異端審問執行部隊』という、ちょっとダークな感じにしてみました」


「ああ、確かに。めちゃめちゃ闇堕ち感出てるっすね。よく似合ってるっすよ、先輩」


「なぁ、その言葉の後に褒められても素直に喜べないんだが?」



 にやにやと、実に楽し気な笑みを浮かべる後輩にジト目を向けながら、改めて自分の姿を見てみる。


 ……確かに、黒をベースにところどころに赤が入ったコートと、鋭角的なシルエットのグリーブと腕甲冑の組み合わせは、『闇』という感じが出ている気がする。フードをかぶると、さらにダークっぽさが増す。

 悪役と言うよりは、自分で言うのもなんだが、ダークヒーローっぽい感じだろうか? 闇夜に紛れて魔を祓う……みたいな。



「ん。背中に逆十字とかがあったら完璧だった」


「いやぁ、それは流石に厨二すぎるっすよ。というか、逆十字じゃ悪魔崇拝者になるっすよ? これ以上、先輩から神官要素遠ざけてどうしようっていうんすか」


「あー、十字架ですか。一応考えはしたんですけど、リューはシンプルな方が好きかなって思って入れなかったんですよ」



 何気ない、アッシュのその言葉に、もう一度自分の恰好を見直してみる。……そういえば、装飾自体はおとなしめだな、この装備。


 俺がシンプルなデザインが好きだということは、結構前に一回だけ言った覚えがあるが……。それを覚えていてくれて、なおかつ装備をそれに合わせてくれたということか。


 ははっ、なんというか……。うん、素直に嬉しくて、なんとなくくすぐったいような気分だ。 


 俺の新しい装備を観察しているのか、くるくると俺の周りを回っているアヤメの頭に、ぽんっと手を置く。



「どうだ、アヤメ。アッシュお姉ちゃんが作ってくれた装備だぞ。かっこいいだろ?」


「………………(こくこく)」


「ははっ、だよな。――――アッシュ!」



 何度もうなずくアヤメをもっとなでなでしながら、アッシュの名を呼ぶ。


 「リュー?」と、俺の声に反応してこちらを振り返った彼女に、この心中を渦巻く歓喜を余すこと伝えられるような笑みを浮かべ、その言葉を口にする。



「最高だ。ありがとう」



 ただまっすぐに、感謝の言葉を。アッシュへ届けと投げかけ……。



「……ひゃ、ひゃいっ! ど、どどどどういたしましですぅ!?」



 ………………あれ? なんか予想外の反応?


 どういうわけか、頬を真っ赤にしてあわあわしているアッシュに首を傾げていると、サファイアと後輩がアッシュの背後に回り込み、ぽんっと肩に手を置き耳元に口を寄せた。



「……ふぅん」


「なーるーほーどー」


「な、なんですかその反応は……」


「別に、何でも」


「そっすね。なんでもないっすよ」


「ただちょっと」


「うらやまっすね此畜生って思っただけっすよ」


「「ねー?」」


「こ、怖いですよ、二人ともぉ~~~~」



 ……例のごとく、何を言っているのかは分からないが………………なんというか、まぁ。



 仲がよさそうで何よりだ。

 

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