イベントまでの道のり7
ねんがんの えむぴーかいふくすきるを てにいれたぞ!
……前に太陽のやつが叫んでいたセリフを真似してみたんだが……なんでだろう、嫌な予感が止まらない……。
それはさておき、『幽玄の枯森』のボスモンスター、ホーンデットキマイラを無事撃破した俺は、《MP吸収攻撃》というスキルを手に入れた。名前の通り、相手にダメージを与えた時MPを吸収するスキルだ。
とはいえ、スキルレベルの低い現在だと十回殴ってやっとヒール一発分とかその程度の回復率。イベントまでにある程度育てておかなくては。今後の成長に期待だな。
そんなわけで、その翌日。
イベントに向けてレベル上げに励もうかとログインした俺は、メニューにメッセージが届いていることに気が付いた。差出人はアッシュ。ふむ、なんだろうか?
『リューへ。頼まれていた装備が完成しました。時間がある時にドゥヴィレの工房に来てください。アッシュ』
装備……。装備……ああっ! 結構前に頼んでおいたやつか! アヤメの装備を受け取ってすっかり終わった気になっていたが、よくよく思い返せば俺の分も頼んでたな。
今まで無頓着にしててロクに考えもしなかったけど、普通は装備の更新ってもっと気を遣うものなんだろうな。
それにしても新しい装備かぁ……。うん、ちょっとテンション上がって来たかも。
そんな俺に、今日も今日とて一緒に行動することになっているサファイアが、不思議そうに小首をかしげる。
「リュー君、どうかした? 何か、嬉しそう」
「そうか? まぁ、嬉しいことがあったのは事実だけど」
「ん。何があったの?」
「今アッシュからメッセージが来てて、俺の新しい装備が完成したそうだ」
「……そういえば、リュー君って全然装備変えてない」
「それは、サファイアも一緒だろ? 俺がゲーム初めてからお前がそのローブと杖以外を使ってるとこ、見たことないぞ?」
「わたしは一途な女だから」
「言ってろ」
ふざけたこと抜かすサファイアにジト目を贈ってから、いつもこいつが付けている装備を改めて観察する。
海色の上品な高級感漂うローブに、宝杖と呼ぶに相応しい蒼玉の杖。……うむ、悔しいが似合ってるな。名は体を現す……とはちょっと違うかもしれないが、やはりサファイアには『蒼』が似合う。
そんなことを考えていると、サファイアが俺の視線から逃れるように身動ぎした。心なしか顔が赤い。
「ん……。リュー君、そんなに見つめられると……照れる」
「す、すまん。嫌だったか?」
「……嫌じゃ、ない。けど、恥ずかしかった。わたしを辱めたお詫びを請求する」
「まぁ、俺が悪いと言えば悪いからな。で、俺は何をすればいいんだ?」
俺がそう聞くと、サファイアはいたずらっぽい笑みを口元に浮かべた。
「わたしのこの格好に、感想を言って?」
……遠回しに言ってるけど、ようは褒めろということだな? 確かに似合ってるのは事実だし、俺もそこには全面的に同意する。けど、それを言葉にして伝えるというのは……なんというか、こっぱずかしい。
しかし、よくよく見ると悪戯っぽく微笑むサファイアも、耳を赤くしている。自分で言いだしといて、照れるなよと思うが、コイツは結構褒められるのに弱かったりするのだ。
なので、こういう悪戯をしてきたときは……。
俺は、サファイアの瞳をまっすぐに見つめ、口元に笑みを浮かべて、そっと囁くように告げる。
「――――よく似合ってる」
「……っ!? リュ、リュー君!?」
「今まではっきり言ったことは無かったけど、お前にピッタリの恰好だと思う」
「え、ちょっ……!」
「サファイア、お前には本当に、青色がよく似合う。とっても可愛いよ」
「~~~~~ッ!! すとっぷ! それ以上はダメ!」
顔を真っ赤にして叫ぶサファイア。くっくっく、してやったり、だ。
あわあわしているサファイアに、ずいっと詰め寄りやり返すように悪戯っぽい微笑みを浮かべて見せる。
「ん? どうしたんだサファイア。顔が真っ赤だぞ? ほら、お前のお望み通り褒めてみたんだが? 不満だったかぁ?」
「満足! もう満足した! これ以上は死んじゃう!」
「はっはっは、遠慮しないでいいんだぞ? 可愛い。すごく可愛い。サファイア可愛いよサファイア」
「むぅ~~~~~~~~~!」
あ、何だろう。すごく楽しい。恥ずかしがってるサファイアを見ているとむくむくと湧き上がってくるこの気持ちはなんだろう。
……愉悦? 違うか。
ぽかぽかと駄々っ子パンチを繰り出してくるサファイアをなだめ落ち着かせた後は、ドゥヴィレに向かいながら、参考にサファイアの装備について聞いてみた。
ローブの方は[蒼き魔女の術衣]。
魔法威力向上と消費MP削減が付き、さらに水氷系統の魔法の威力を底上げし、また水氷系統の魔法で受けるダメージを激減させる効果を持っている。
杖の方は[蒼玉輝く魔杖]。
球体結界を展開する固有スキル《紺碧にて覆う壁》を使用することができ、杖としての性能も一級品で、特に効果範囲の上昇が優秀だとか。
どちらも特殊なクエストの報酬として手に入れたそうで、今現在出回っている装備の中では間違いなく最高峰の装備だとか。そういう特殊な装備は紅戦棍くらいしか持っていないので、ちょっとうらやましく感じたりもする。
「……ん。けど、アッシュの作る装備なら、間違いなく良い物になるはず」
「違いないな。そこは全く心配してない」
「アッシュはリュー君とは違うベクトルのチートだから」
「……まて、俺がチートってなんだ」
「アッシュは生産チート。リュー君は……存在?」
「存在がチートってなんだよ!?」
とまぁ、そんな感じで阿呆なことをギャーギャー騒ぎながら移動すること十数分。
俺とサファイアは、目的地であるアッシュの工房、
――――アトリエ『モノクロ』に到着したのだった。
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