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ソロ神官のVRMMO冒険記 ~どこから見ても狂戦士です本当にありがとうございました~  作者: 原初
四章 初イベントと夏休みの終わり編

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イベントまでの道のり4

「……これはひどい」


「……だな」



 枯れ木が乱立する不気味な雰囲気のフィールド、『幽玄の枯森』。そこの安全地帯セーフティエリアで、俺たちは難しい表情を浮かべていた。

 原因は勿論、ついさっきまで取り組んでいたパーティープレイの訓練にあるのだが……。



「リュー君、実はわざとやってない?」



 ……なーんて言葉を、温度の下がったジト目と一緒にありがたく頂戴してしまうくらいには酷い出来だった。

 二時間ほどの練習の中、アヤメと衝突すること十三回。アヤメの攻撃が俺にヒットすること二十四回。俺の攻撃がアヤメに当たりそうになり、それを回避するため無茶な動きをしたところに敵の攻撃を受けること三十六回。サファイアが放った魔法にふっ飛ばされること五十回。


 これは……酷い。酷すぎる。我ながら何やってんだかって感じだ。ちなみに俺の攻撃がアヤメにヒットすることだけは死に物狂いで防いだ。俺がアヤメを攻撃するなんてことになったら、罪悪感で死にたくなるに違いない。


 それはともかく、訓練のことなんだが……。



「なぁ、サファイア。せっかく訓練に付き合ってくれるのはありがたいし、嬉しいんだが……なんかもう、無理なんじゃないかと思っている自分がいる」


「……リュー君は、ソロで戦う運命の下に生まれてきたんじゃないかと」


「あながち否定できないのがなぁ……」



 うん、まぁ、俺も頑張らなかったわけじゃないんだ。アヤメとサファイアの動きに気を配ったり、連携を意識して攻撃しようとしたりと、やれるだけのことはしたのだ。

 けれども、他に気を取られると被弾が増えたり、意識した動きではいつもより鈍った動きしかできなかったりと、散々な結果に。

 サファイアの言う通り、俺はソロで戦う運命にあるのかもしれない……。なーんてことを真剣に考えてしまうくらいに、あんまりな感じだった。



「普通は、仲間と連携することで個々の力も上がる。けど、リュー君の場合は完全に弱くなってる。不思議」


「連携しなきゃって考えると、体の動きが硬くなっちまうんだよな。今までの戦いって、相手を観察して、その攻略法を打ち立てて、それを実行する……って感じでやって来たからかな? 自分のことと相手のこと以外、考えられないというか。そもそも思考にいれるという考えすらないというか……」



 やれやれ、自分のことながら情けない。と、俺が若干落ち込んでいると、サファイアの方からジーっとした視線を感じた。……なに?



「…………(わたしの相手をしているときに、そうなってくれるとありがたいのに)」


「ん? 悪いサファイア。今のよく聞き取れなかっ『何も言ってない』……そうか」



 おかしいな。確かに小声で何かを言ってた気がするんだが……。まぁ、サファイアがそう言うんなら俺の勘違いなのだろう。


 それにしても……はぁ。本当にどうしたもんか。

 もうこうなったらいっそ、襲い掛かってくる敵に自分から向かって行くか? 防衛側が攻勢に出ちゃいけないってルールはないわけだし。

 ほら、防衛戦ってあれだろ? 敵がいっぱいわらわらと向かってくる感じ。ディセクトゥム戦の獣軍を更に大規模にした感じになるんじゃないか? そこに突っ込んでいって敵の数を減らすのだって立派な役割なんじゃないかね。役割分担的には遊撃になるのか?


 ……というか、こんなことを考えてる時点で、すでにパーティープレイをすることはあきらめているわけで……。いやまぁ、この有り様だとイベントまでに俺が人並みの連携プレイをできるようになるとは思えないんだけどね。


 どうしたものかと頭を悩ませていると、そんな俺を心配するようにアヤメがちょこんと胡坐をかく俺の足の間に腰掛け、肩越しにこちらを見上げてきた。

 上目遣いが滅茶苦茶可愛いアヤメに癒され、その頭を撫でつつ、一つ決めたことがあった。


 ――――とりあえず、アヤメとの連携が取れるように頑張ろう。


 この小さな相棒は、ふがいない俺のフォローを何度もしてくれている。一緒に戦ってきた時間は一番長いんだ。どれだけ時間がかかっても、それだけは何とかしてやろうじゃないか。



「頑張ろうな、アヤメ」


「………………(こくこく)」



 ポスンと体を預けてくるアヤメに笑みをこぼす。あーやっぱりアヤメは可愛いな。落ち込んでたのが嘘のように心があったかくなる。流石は俺の癒し。

 そんな風にアヤメに癒されていると、ジ――――と無機質な視線をこちらに向けてくるサファイアの存在に気づく。

 サファイアがつぶやく。ぽつり。



「……リュー君、ロリコン?」


「サファイア、お前もか。後輩といいお前といい、どうして俺をロリコンにしたがるんだよ。絶対ちげぇからな!」


「……といいつつ?」


「ねぇよッ!」



 はぁはぁ、と肩で息をしながらサファイアをじろりとにらみつける。こやつめ、アヤメが俺の膝の上にいなかったら手刀が飛んでいたぞ命拾いしたな。



「……つーかお前。俺が本当にロリコンだったらどうするんだよ。嫌だろそんなの」


「んー……ちょっと、嬉しいかも」


「……は?」


 

 なんで? なんで俺がロリコンだと嬉しいの? 俺だったら絶対嫌だぞそんなの。もしアポロが前に遭遇したロリコンドMヤローみたいなことを言いだしたら……。うん、正気になるまで殴り倒すな。


 困惑する俺に、サファイアはいたずらっぽい笑みを浮かべて見せる。



「わたしもちっちゃい、から?」


「……………ッ」



 一瞬なんのことか分からなかったけど……。ああ、うん、そうか。そう言うことなのか。


 自分の顔が少し赤くなったのを自覚する。サファイアの笑みを見ていられなくなって、視線を泳がせる。




 ……なんて返せばいいか分かんねぇよ、バーカ。


 

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