イベントまでの道のり3
遅くなりました本当に申し訳ございません!
昼食後、FEOに戻った俺は、カトルヴィレの冒険者ギルドにて、サファイアと待ち合わせをしていた。パーティープレイが苦手な俺の訓練をするそうなのだが……。一体、何をするのだろうか?
「パーティープレイか……。アヤメとなら何度か連携の練習をしたことあるけど……なぁ?」
「………………(こくこく)」
俺の座っているテーブルの向かい側で、両手でコップを包み込むようにして持ちながらジュースを飲んでいるアヤメが、ストローを加えたまま小さく首を上下して肯定を示す。かわいい。
アヤメと一緒の戦闘………俺が跳んだ先がアヤメが跳んだ場所と重なったり、敵の攻撃を回避したらアヤメの拳を喰らったり、モンスターに向けて放った【ソードオブフェイス】が、たまたまそこにいたアヤメにかすりそうになったり……。うっわ、ロクなことがねぇな。ちなみに最後のやつは戦闘後、アヤメが拗ねてしまい、滅茶苦茶謝ったのを覚えている。
……考えれば考えるほど、どうにかなるとは思えなくなるんだが……。い、いや、あきらめるのはまだ早い。せっかくサファイアのやつが訓練に付き合ってくれるんだし、やれるだけのことはやってやろうじゃないか。
ま、とりあえずは、一緒に頑張ってくれるというアヤメをなでなでしましょうか。お礼の意味も込めて、いつもより多めになでなでする。
「アヤメはいい子だなー。ジュース美味しいか?」
「………………(ぐっ)」
ストローを咥えたままサムズアップしてみせるアヤメに笑みを浮かべていると、何やらギルドの入口あたりがにわかに騒がしくなった。
ああ、来たのか。そう思い、騒がしくなってきた方に視線を向けると、案の定我が幼馴染様がこちらに向けて歩を進めていた。
相変わらず目立つやつだ。そう内心で苦笑しながら、サファイアに手を振った。
「よう、来たか」
「ん。リュー君、待った?」
「いや、そんなに待たされたわけじゃない。気にするな」
そんなお決まりのやり取りをしながら、二人して笑みをこぼす。
「…………なぁ、あの二人ってやっぱり……」
「いや……そんなはずは……でも……」
「いちゃつきやがっていちゃつきやがっていちゃつきやがっていちゃつきやがって」
「ああいうセリフを自然と言い合うことのできる関係か……羨ましすぎるぜ今畜生」
……外野があれこれ言ってるのは放っておこう。俺の精神衛生上それが一番のはずだ。
がやがやと聞こえてくる声をシャットアウトし、アヤメの隣に腰を下ろしたサファイアに話しかける。
「ところで、練習とやらはどこでやるんだ?」
「ん。カトルヴィレの先にあるフィールド、『幽幻の枯森』ってところ。アンデット系の敵がいっぱい出てくるところ」
「アンデットか……。ああ、今度のイベントに合わせたってことか?」
「ん。それもある。後、そこのフィールドボスが、MP回復系のスキルのスキルブックを落とす」
「おっ、マジか!」
MP回復系のスキル! ずっとどうにかしようと思ってたMP量の問題が解消するかもしれない。これでパーティープレイの方もうまくいけば、まさしく一石二鳥じゃないか。
……どっちもうまくいかなかったら、骨折り損のくたびれ儲けもいいところだけどな。これから行くのがアンデット系の敵が出てくるフィールドだけに。
まぁ、やる前からそんなこと考えてもしょうがない。やれるだけのことをやろう。
「じゃあ、出発?」
「ああ、行こう。アヤメ、行くぞ」
「………………(こくこく)」
「はぁああああああッ!!」
「………………(ふんすっ)!」
轟音、爆音、破壊音。
ドガッとか、ガスッとか、ズガンッとか、ドゴォンッといった物騒な音がまき散らされる。それと同時に、骨やら肉片やら臓物やらがそこらかしこにまき散らされ、白い粒子に変わっていく。
リューの振るったメイスがゾンビの頭蓋にめり込み、そのまま地面のシミにする。アヤメの突き出した拳がスケルトンを無数の骨片に砕き、さらさらと風に運ばれていく。
叫び声が一つ上がるたびに、メイスと拳が乱れ舞い、モンスターが粒子となって散っていく。
戦闘狂の神官と、その使い魔。彼らの相手をするには、アンデットモンスターでは力不足であった。
「FURAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」
快進撃を続けるリューとアヤメに迫る影が一つ。それは首から上を腕に抱え、もう片方の手で大剣を振り回す異形の騎士―――デュラハン。
首無しの騎士は、アンデットを屠り続ける二人に向かって、横薙ぎの一撃を繰り出した。ブオンッという風切り音と共に、大質量の金属の塊が二人を両断せんと襲い掛かる。
「ハッ、なめるなよ首無しッ!」
「………………(きっ)」
好戦的な笑みを浮かべたリューが紅戦棍を大剣にぶつけてそらし、跳躍したアヤメが握った拳をデュラハンの鎧に叩き込む。ふらついたデュラハンに、リューが蹴りを入れて吹き飛ばした。
一見すると、きちんと連携が撮れているようにも見えるが、よくよく観察すると、リューがアヤメにぶつかりそうになって飛びのいたり、アヤメの放った拳撃がリューを掠ったりしている。
要するに、連携はてんでなっちゃいないということだ。
起き上がったデュラハンに向けて、リューが飛びかかる。近くにあった枯れ木を蹴り、その勢いを利用して両足を伸ばす。いわゆる三角蹴りだ。
リューの靴底がデュラハンにクリーンヒット。もう一度吹き飛び無様に倒れるデュラハン。
「よっしゃァ! これで止め……ぐはッ!?」
リューがデュラハンにとどめを刺そうと紅戦棍を振り上げた瞬間、その体が横から飛んできた何かにぶつかり、地面に倒れることになった。ゴロゴロと地面を転がり、枯れ木の一本にぶつかって「ぐはっ」と悲鳴を上げる。
「……あ」
リューをふっ飛ばした犯人……サファイアが、呆けた表情を浮かべて立ち尽くした。目の前でいきなり自分にとどめを刺そうとしていた敵が吹き飛んだ光景に、デュラハンが固まっている。
フレンドリーファイア。
リューが吹き飛ばしたデュラハンに、サファイアも魔法で止めを刺そうとしたのだ。その結果、紅戦棍を叩き込もうとしたリューと射線が重なり、この悲劇が起こったというわけだ。
「………………(ていっ)」
静寂が訪れた枯れ木の森の中、唯一動くことのできたアヤメが、固まっているデュラハンに魔拳を叩き込んで白い粒子に変換させるのだった。
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