イベントまでの道のり2
更新です!
「イベント……? ああ、こないだのアップデートで発表されたやつか」
「ん。確かイベント名は……『リバイヴ・オブ・ディスピア』だったはず」
太陽が言っているのは、つい数日前に終了したばかりの、FEOの大型アップデート。その時に発表された、イベントのことだ。
今までも、FEOではイベントが何回か行われてきたらしい。
それは巨大なモンスターを大人数で討伐するレイド戦だったり、PvPの頂点を決めるための闘技大会だったり、指定されたアイテムを集め景品と交換するものだったり。
イベントが起こるたびにプレイヤーたちは湧きに湧きあがり、お祭り騒ぎになったとか。
そんな中々心躍らされるイベントが、新たに発表されたわけだが……。
「にしても、物騒な名前のイベントだよな。直訳すると『絶望の復活』だろ?」
「ん。多分いろいろと大変なイベントになると思う。開催フィールドが『旧ナルメス王都跡』だし……」
「ぜってぇアンデット関連だよなぁ。ところで流、イベントの概要は覚えてるか?」
ボヤくように言う太陽が、そう聞いてくる。イベントの概要と言うと、発表時に掲載されていたアレのことか? えーっと……。
「……『今回のイベントは防衛戦だ! 迫りくる無数の敵から護衛対象を守り切れ! イベントへの貢献度によって報酬が変化します。プレイヤー諸君、ランキング上位を目指して健闘せよ!』……だったよな?」
記憶から掘り起こしたイベント概要を諳んじて見せると、蒼は「お~」と感心したようにパチパチと拍手し、太陽は……なぜかスマホを操作していた。
「おう、今運営のホームぺージで確認してみたけど、一言一句違ってねぇわ。ちなみにその文章最後に読んだのっていつ?」
「アップデート後に確認したのが最後だけど?」
「相変わらずだな~、流の化物記憶力」
カラカラと笑う太陽。ってか、スマホで確認してるなら俺が言う必要なかったよな? ……人を玩具にする輩には罰が必要だな。
「ほう……。人で遊ぶとはいい度胸だな太陽。今日の夕飯はお前だけモヤシ炒めでいいんだな?」
「ほんっとすいませんでしたそれだけはやめてくださいお願いします」
高速手のひら返し。わざわざソファーから降りて土下座に移行する太陽。まるで無駄のない動きだが、ちっとも凄さを感じなかった。
「うむ、許す」
「はは~。ありがたき幸せ」
そんなおふざけの混ざったやり取りをしていると、床に這いつくばる太陽を見て蒼が一言。
「……太陽、無様」
「うおい! 蒼!」
「……流君。流君は防衛戦って何のことかわかる?」
「スルー!?」
「うーん、お前らの話に出てきたことがあるのを聞いたことあるくらいだな。TD系ってやつだろ? えーっと……クラ〇ラ? 千年〇争ア〇ギス? ってのがそれじゃなかったか?」
「流まで!?」
土下座の体勢からガバリと顔を上げた太陽は放っておき、蒼との会話に応じる。
「それであってる。けど、VRの防衛戦は、プレイヤーが自由に動き回れるから、筐体でやるTD系とはまるで別物」
「そうなのか?」
「VRMMOじゃないTD系のゲームは、決められたコストの中、どこにどのキャラを配置するのか。どのタイミングで配置するのか。そういうことが重要になってくる。けど、VRMMOだと、コストとか配置場所とかの制限がなくなる。だから、本当の戦争の防衛戦みたいになる……と思う」
「なるほど……。ちなみに、蒼はVRの防衛戦ってやったことあるのか?」
「残念ながら、ない」
蒼も未体験なのか……。
防衛戦……何かを守りながらの戦い、か。前にアッシュを護衛して町まで連れてったことがあるけど、あの時は敵も弱かったし、参考にはならんだろうな。
自分から敵を倒しにいくぶんには何の問題もないけど、イベントで防衛戦となると、他のプレイヤーとの兼ね合いもあるだろうし……。パーティープレイが壊滅的な俺にとっては鬼門だな。
いやもう本当に、ただ強敵と戦いまくれるイベントだったらどれほど良かったことか。
そんな内心の不安が顔に出ていたのだろうか? 「どうしたの?」と蒼が心配そうな表情を覗かせて聞いてくる。
「んー、ちょっとな。ほら、俺ってパーティープレイが出来ないだろ? それに、何かを守りながらの戦いってのもやったことないからな。上手くできるかなって心配してたところだ」
「むぅ、それは確かに。流君って大抵のことはそつなくこなすのに、誰かと何かをやるのが致命的に下手。どうして?」
「どうしてと言われると、どう答えていいのか……。まぁ、FEOでの戦闘に限って言えば、戦ってる最中は他の物が目に入らなくなるんだよな。敵と自分以外が視界から排除される感じ?」
「ふむ……」
顎に手を当てて思案顔になる蒼。何かしらの解決策を考えてくれているのだろうか?
「……ん。流君」
「おう、なんだ?」
「流君は、パーティープレイが出来ない。だから、パーティープレイをしないんだよね?」
「ああ、下手に周りに迷惑かけるのも嫌だしな。あと、苦手意識がどうしても出ちまうってのもあるけど……」
俺がそう言うと、蒼は「ふむふむ」とでも言うように何度か頷いた。そして、その瞳をまっすぐに俺に向け、
「というわけで、流君は今日の午後からわたしとパーティーを組んでもらいます」
「……うん、どうしてそうなったのか聞いてもいいか?」
「流君の苦手克服のため。いきなりいろんな人と一緒は無理かもだけど、いつも一緒にいるわたしなら、練習相手としてぴったり。それに」
蒼はそこで言葉を切ると、柔らかで優し気な笑みを浮かべた。
「わたしなら、流君に迷惑かけられても全然気にしない」
だから、と蒼は優しい声音で続ける。
「流君、一緒にがんばろ?」
蒼の笑顔と言葉を受けた俺は、またあのよく分からない感覚に襲われて、こくり、とうなずきを返すことしかできなかった。
「……ところで、太陽はさっきから何をしてるんだ? そんな隅っこで膝を抱えて」
「ん、放っておいて問題ない」
「………………途中から俺、完全に空気だった。くすん」
書籍の情報を一つ。
本作品は『集英社ダッシュエックス文庫』からの出版となります!
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