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ソロ神官のVRMMO冒険記 ~どこから見ても狂戦士です本当にありがとうございました~  作者: 原初
三章 蒼の嫉妬と長い一日編

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終わりの夜 其の一

 蒼との混浴という試練を乗り越えた俺は、寝巻代わりのジャージとTシャツに着替えて部屋に戻っていた。ベッドの上に腰掛けながら、のぼせる寸前まで風呂に入っていたことで火照った体を、窓から吹き込んでくる夜風で冷ます。



「ふぅ……。……って、もうこんな時間か」



 気が付いたら、もう少しで日付が変わるような時間になっていた。明日もランニングに行く予定なので、そろそろ寝るとしようか。今日はもうやることもないことだし。


 軽く部屋を片付け、布団を整え、さて電気を消そうと思ったところで、部屋のドアからコンコンという音が響いた。

 こんな時間に誰が……って、考えるまでもないか。選択肢なんて、あってないようなモノだしな。



「どうかしたのか、蒼」



 ドアに向かってそう呼びかける。すると、ゆっくりとドアが開き、上下セットの薄水色のパジャマを着た蒼が入って来た。いつもはサイドテールにしている髪を、今はまっすぐに下ろしていた。


 蒼はそのまま俺の座っているベッドの前までくると、それにちらりと視線を向け、少しだけためらってから口をひらいた。



「……流にぃ。ちょっとだけ、一緒に寝ても、いい?」



 ………………うん、なんとなく予想してたけど、やっぱりそう来たかぁ……。


 今日の蒼は、どこか変……というか、俺に甘えることに必死になっているような気がする。リビングでも、風呂でも。やりすぎなくらいに俺に甘えたがった。いつも通りといえばいつも通りなのだが……何かが引っかかる。


 それに、何度か言っていた「今日だけ」ということばも気になる。まったくあてにならない「一生のお願い」的なモノかと思ったが、そう言うわけでもないようだし……。本当に、何かあったのだろうか?


 そう思って、蒼の顔をじっと見つめる。


 俺の視線を受けた蒼の頬がポッ、と染まった。そして、蒼は両手をそこに添えてくねくねと身をよじらせる。



「流にぃ……。そんなにみられると、恥ずかしい。わたしのパジャマ姿に、見惚れちゃった?」



 ……ああ、うん。俺の勘違いだな。いつも通りだわ。どこまでも、いつも通りの蒼だわ。心配して損した。


 俺の視線がジト目に変わっていることに気づいた蒼がコホン、と咳ばらいをした。うん、そんなんで空気が元に戻ると思ったら大間違いだからな?


 深い、それはもうとんでもなく深いため息を吐いた俺は、無言で座っているベッドのマットレスをボスボスと叩く。混浴に比べたら、添い寝くらいなんともないしな。今までも何度かあったことだし……って、あれ? 洗脳されてないかコレ……?


 

「ありがと、流にぃ」



 そう言って、ボスン、と俺の隣に座る蒼。そうして浮かべられる嬉しそうな笑顔を見るだけで、考えていたことが大体どうでもよくなってしまう。そんな自分に苦笑しつつ、ベッド横のスツールの上のリモコンを手に取り、部屋の電気を消す。



「わっ、真っ暗」


「今日は月が明るいし、そうでもないだろ? ほら、明日も早いんだ。さっさと寝るぞ」


「……流にぃって、すっごい健康的」


「悪いかよ」


「んーん。けど、ご老人みたい」


「うっせ」



 早く起きるのはお前らの朝食を作ったりするからだよ。とは言わない。それをするのは俺の役目だし、そのことに文句があったりはしないのだから。やりたくてやってることだしね。


 ベッドに寝っ転がった俺の隣に、蒼もコロンと倒れた。ふわり、白いシーツの上に蒼の濡れ羽色の髪が広がる。ふわり、と漂ってくるのは、蒼本人の柑橘系の香りと、さっき俺がやってやったシャンプーの香り。とくん、と胸が少しだけ高鳴った。


 男女七歳にして席を同じゅうせず……なんて、今さらにもほどがあることを思いながら、ゆっくりと目を閉じる。大丈夫大丈夫。蒼が隣で寝てたって、ちょっとベッドが狭くなっただけだ。すぐに眠れるって。

 そう、自分に言い聞かせるようにして、意識を無に近づけていく。……うん、めっちゃ意識してるな、俺。風呂場でのことが後を引いているのだろうか?



「ねぇ、流にぃ」


「あ、ああ。なんだ?」



 声に、少しだけ内心の動揺が漏れてしまい、さらに慌てそうになる。落ち着け、落ち着け俺。クールに行くんだ。

 さぁ、蒼よ。完全に落ち着いた俺はどんな言葉にも冷静に対応してや――――



「流にぃって、アッシュのこと、好きなの?」


「なぁッ!?」



 い、いきなり何を言いやがる!?

 落ち着きなどとっくにすっ飛んでしまっていた。というか、蒼がこういう話持ち出してくるのって初めてじゃないか? 太陽の鈍感ぶりを笑うことはあっても、俺や自分自身の恋だの愛だのに何かを言ったりはしてこなかった。


 それがどうして……? 夜、おなじ寝床。うーん、修学旅行の夜的なノリなのか? ……けど、それにしては面白がるような様子も無ければ、からかうような声音でもない。


 今日……というか、今夜になってからよく聞く、怖いくらいに真剣な声音だ。そこに、少しばかりの……怯え、だろうか? 何かを怖がるような色があった。



「……何がどーやったらそんな話になったんだ?」


「ん……。流にぃ、アッシュとデートしてた。しかも、コスプレデート」


「な、なんで蒼がそれを知ってるんだ? 誰にも言ってないはず……。はっ!? もしや、どこかに目撃者が!?」


「んーん。掲示板でみた。ケモ耳バトラー姿の流にぃ、可愛かった」


「やーめーてーくーれー。あれ後から考えるとすっげぇ恥ずかしかったんだからな!?」



 黒歴史を掘り返されている気分だ……。というか、俺の掲示板書いてるやつマジで何者だよ……。いっぺん見つけて〆るか? 撮影禁止設定を使うのはなんか負けた気がするし……。



「それで……。流にぃは、アッシュのこと、どう思ってるの?」



 俺が頭を抱えて悶えていると、蒼が、そう問いかけてきた。声音には、不安の色が強くなっている。

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