特訓!特訓!特訓!③
苛烈。
リューさんの戦闘はその一言に尽きる。巨大なメイスをまるで棒切れでも振り回すかのように縦横無尽に振るい、容赦なく頭を潰そうとしてくる。なんでも称号とスキルで頭部に与えるダメージが増えてるそうだ。……リューさんが頭部狙いをするのは趣味みたいなものだと思ってたけど、ちゃんと理由があったんだなぁ。
そんなことを考えてる間にも、リューさんの攻撃は止まらない。ほんと、どうしてあんなに大きなメイスをあんなに軽々しく振り回せるんだか……。スイングスピード、ボクの剣速よりよっぽど速いってどういうことなの……? 絶対ボクの剣の方が軽いだろうし、ステータスだってボクはSTRを重視してて、今は身体能力強化系のスキルも使っている。リューさんは一応神官なんだし、MIND重視のステータスのはず……。うん、まぁ、リューさんだからってことにしておこう。
上から降ってくるメイスを横にステップして回避。リューさんの攻撃が激しすぎて、怖いとか考える余裕すらなくなっている。というか、余計なこと考えてたら死ぬ。HP一瞬でゼロになる。
ただ逃げて避けてるだけじゃどうにもならない。ボクも必死に剣を振るう。
けど、当たらない。狙って、剣を振りかぶって、振り下ろす。その動作をすることすら難しい。剣を振り上げた瞬間を狙ってきたり、そもそもリューさんは狙いが付けられないように動いているので、攻撃のチャンスが中々つかめない。
……ホントに、どうやったらこの人に届くんだろう?
「やぁああああああああッ!!」
「そうだ、いいぞ。もっともっと攻めてこい。一撃くらいしっかりと当ててみろ。まだ俺のHPは一ミリたりとも減っていないぞ?」
「うわああああああああああッ!!」
「甘い。さっきから単調な攻撃しか出せていないぞ。もっと考えて剣を振るえ」
「うらあああああああああああッ!!」
「そんな攻撃が当たるとでも? なめられたものだ。やり直しッ!」
「グハッ!?」
ボクの一撃を躱したリューさんが繰り出した廻し蹴りが、ボクを吹き飛ばして地面に転ばす。
き、厳しい……。攻撃だけじゃなくて、合間合間に入れてくる言葉も厳しい……。ついでに、ボクを見る視線も厳しいモノになっている。
く、訓練を始める前に、サファイアさんが「リューにぃは鬼きょーかん」といっていたのはよくわかる。これは確かに鬼だ。リューさんの持つメイスが金棒に見えてくる。
「こら、いつまでうずくまってるつもりだ? 早く立て。そんなんじゃいつまでたっても恐怖を克服することなんてできないぞ?」
「わ、分かってますよ……!」
くぅ、ボクが情けないのは重々承知だけど……、ここまで言われっぱなしは少し腹が立つ。ボクだって、何か月もこの世界で戦ってきたプライドが少しはあるんだ。
気合を入れて立ち上がり、剣を構える。絶対にリューさんに一撃お見舞いしてやる、と息巻きながら。リューさんに強い視線を送りながら、一矢報いる方法を必死で考える。
そんなボクを見て、リューさんは口元に笑みを浮かべた。
……動画で見たのと同じ、とても楽しそうな笑みを。
「くくっ、それでいい。こい、ナナホシ」
「……行きますッ!!」
剣を握る手に力を込めて、地面を強く蹴る。ぐんっ、と加速したボクが放つ攻撃は、突進からの袈裟斬り。シンプルで分かりやすく、ボクが一番得意としている攻撃だ。
「またそれか? 得意な攻撃を繰り出したくなるのはわかるが、そればっかりじゃ……む?」
メイスを構えたリューさんが、怪訝な顔をする。それもそのはず、ボクはリューさんに剣が届く間合いの外で剣を振りかぶったからだろう。
けど、これでいい。ボクは振りかぶった剣を力いっぱい、地面に向けて叩きつける!
「【ソードバッシュ】!」
発動するのは、打撃属性の剣技という変わったアーツ。剣を叩きつけられた地面は砕け、砂煙と石の破片を激しく巻き上げた。
そして、巻き上がった砂煙は、ボクの体を隠す。
すぐさま剣を構えなおし、体勢を低くしたボクは、脚に目いっぱい力を込めて、地面を這うようにしてリューさんとの距離を一気に詰める。
「目隠しか? けど、それくらいじゃ……」
「…………【ライズブレイド】」
「ッ!?」
発動するのは、ジャンプをしながら切り上げるという剣技アーツ。砂煙から飛び出したボクに、リューさんは驚いたように目を見開く。けど、切り上げた剣は躱されてしまった。……ならッ!
「【エアステップ】!」
一回だけ空中を蹴って、リューさんの頭上に飛び上がる。空中で身を捻り、剣を肩越しに振りかぶる。これなら……どうだ!
「【ダウンブレイダー】!!」
今度は、急降下しての斬撃。堕ちる流星のごとき一撃を、リューさんの頭目がけて叩きつける……瞬間に、リューさんはひょい、と横に体をずらして回避した。
そのまま地面を砕くボクの剣。くそっ、躱された……? 渾身の一撃だったのに……。
「……へぇ、驚いた。まさか、ダメージを喰らうとはね」
渾身の一撃が回避されたショックでうつむきそうになっていたボクは、リューさんのその一言で、ガバリと顔を上げた。
よくよく見れば、リューさんの肩のところに赤い燐光と共に小さな傷ができており……リューさんのHPゲージは、少しだけ黒くなっていた。
あはは……。と、届いたぁ……。
「うん、良くやったな、ナナホシ。最後のアーツコンボは見事だったぞ。……けどな」
一撃でも、少しのダメージだろうとリューさんにボクの攻撃が届いたことが嬉しくて、力を抜いたのが間違いだった。
フォンッ、という風切り音と、ザリッ、という地面を踏みしめる音がした。……い、嫌な予感が……?
「たった一撃入れただけで油断するな? 俺はまだ倒れてないんだから……なッ!」
ボクが最後に見た光景は、とても嬉しそうな笑顔で、メイスを振りかぶるリューさんの姿でした。
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