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ソロ神官のVRMMO冒険記 ~どこから見ても狂戦士です本当にありがとうございました~  作者: 原初
三章 蒼の嫉妬と長い一日編

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特訓!特訓!特訓!①

この話は一度終焉世界に間違えてあげてしまいました。ごめんなさい。


「………と、まぁ。こんな感じだ。…………って、どうかしたか?」



 オーク五体を殲滅した俺がサファイアとナナホシくんの方を振り返ると、サファイアは呆れたような表情を。ナナホシくんはポカーンとした表情をそれぞれ浮かべていた。

 うん? なんか俺、可笑しなことしたか? 普通に戦っただけだと思うんだが……?



「はぁ、リューにぃはやっぱりリューにぃ」


「こ、これが今日初めて剣を使った人の動き……? ぼ、ボクなんかよりよっぽど上手じゃないですかぁ……」



 うーん? よくわからんが、褒められてるのか? これ?



「まぁいいか。それでどうだ、ナナホシくん。少しは参考になったか?」


「えっと……凄すぎて、何が何だか分からなかったです……」


「えー……」


「リューにぃ、実はこっそり隠れて剣の練習とかしてた?」


「いや、こうやって剣だけで戦うのは今日が初めてだ。うん、メイスもいいが剣も悪くないな。斬撃ってのは叩き潰すのとはまた違った爽快感がある」


「楽しそうな顔で怖いこと言わない」


「初めて、初めて……。ふふふ……頑張って来たボクの三か月って一体……」



 虚ろな目で乾いた笑いを浮かべるナナホシくん。う、うーん、ナナホシくんの場合、剣技がどうこうというより、それ以前の問題だからあんまり気にすることないと思うんだけど……。

 それにしても、モンスターが怖いという感覚が、どうにも俺には分からない。それが一番困っている。

 確かにリアルであんな怪物どもが襲い掛かってきたら怖いかもしれないけど……。この世界はあくまでゲーム。モンスターとの戦闘を楽しむことがあれど、怖がるなんて考えたこともなかった。だから、ナナホシくんが抱えている悩みに、俺は同調することができない。

 とりあえず、詳しく話を聞いてみよう。ナナホシくんのことを、もっとよく知れば、何かわかるかもしれない。



「ナナホシくん」


「あはははは……。……あ、はい。なんですか?」


「ナナホシくんは、モンスターと戦うことが怖い。それを直したくて俺に教えを請いに来た……。それは間違いないな?」


「はい、間違いありません」


「分かった。けどな、今のナナホシくんに必要なものは、戦い方じゃないだろ? なんというか……心構え? 精神性? 上手くは言えないけど、そういうものなんじゃないかって俺は思うんだ」


「そ、それは…………そうですね。そうかもしれません」


「分かってくれたか。それでなんだが、まずは詳しいことを教えてくれないか? モンスターと戦うのが怖いといっても、色々あるだろ? 襲われるのが怖い。武器を向けられるのが怖い。モンスターそのものが怖い。傷つけられるのが怖い。傷つけるのが怖い。……思いつくのはこのあたりか? まぁ、この中にあるにせよ無いにせよ、原因が分かれば何か解決策を思いつくかもしれないし……。といっても、最終的にはナナホシくん自身がどうにかするしかないんだがな」



 技術的なモノであれば、俺でも教えられることがあったかもしれない。けど、精神的なこととなると、それはもう、解決の方法はナナホシくんの中にしかない。外部のものがどれだけ言葉を重ねたところで、自身を変革することができるのは自身でしかない。

 ……ま、そんなに難しい話じゃないかもしれないしね。ナナホシくん自身もなかなか心の強い子のようだしね。動画で知ったとはいえ、初対面の相手をかばえるような子なんだし。


 俺の言葉に、顔をうつむかせて考え込むナナホシくん。その目には、真剣さに満ちた光が宿っていた。その様子を見て、ナナホシくんの素直さに笑みを浮かべる。



「……リューにぃ」


「ん? どうかしたか?」


「………なんでもない。ただ、リューにぃはやっぱり優しいなって、思っただけ」


「…………そんなことはない」


「ツンデレ乙」


「うっせぇ」



 くっ、サファイアのニヤニヤ笑いがムカつく……。そんなムカつく表情をこうしてやる! 



「おりゃ、おりゃ! おりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃっ!」


「はへへ(やめて)、ほっへはふへひゃはひへ(ほっぺたつねらないで)」


「はっはっは、俺をからかおうなんて十年早いわ」


「うぅうううう~」



 ひとしきりサファイアで遊んだ後は、考えに没頭しているナナホシくんを見守りながら、たまに近づいてくるモンスターを【ソードオブフェイス】を飛ばして倒していった。このあたりはオークが多く生息しているのか、結構な頻度で豚面を拝む必要があった。……別に、駄洒落とかじゃないぞ?

 そうして待つことニ十分ほど。ずっとうつむいていたナナホシくんが顔を上げて俺の方を見据えた。



「リューさん、いいですか?」


「ああ、何か分かったのか?」


「はい。……ボクは、傷つけられるのが……というか、敵意を向けられるのが怖いんだと思います。今までのことをじっくり思い返すと、怖くて身が竦む時は、いつも剣を向けられたときや、強くにらまれる時でした」


「ふむ……。なるほど。自分がどうこうするのが怖い、というより、相手にされる方が怖いってことか……」



 なるほどなるほど、そう言うことなら…………うん、俺でもなんとかできるかもだな。

 恐怖を克服するための、一番の近道は、やはり『馴れ』だろう。めちゃくちゃ怖いお化け屋敷だって、十回ニ十回と入れば怖さ半減なんてどころじゃない。

 あとは、自信をつけさせること。「こんなものはもう怖くもなんともない」、そういう自信も持つことができれば、それはもう恐怖を克服したということになる。


 そのための方法は…………うん、やっぱりあれしかないだろ。間違いない。


 くっくっく……、腕が鳴るなぁ。俺に憧れてくれている相手の頼みだし、俺にできる限りのことをしよう。そう、できる限りを尽くして……。





「………サファイアさん、なんか、寒気がしたんですけど……」


「…………ナナホシ、がんば」


「ふ、不安になるようなことを言わないでください!?」

感想、評価、ブックマを付けてくださっている方々、本当にありがとうございます。



終焉世界も更新しました。四話目です

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