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ソロ神官のVRMMO冒険記 ~どこから見ても狂戦士です本当にありがとうございました~  作者: 原初
三章 蒼の嫉妬と長い一日編

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剣士リュー、爆誕!?

「や、やぁああああああ!」



 ブンッ、とナナホシくんが両手で構えた長剣を振るい、モンスターを斬りつける。気合十分に放たれた一撃は、モンスターを袈裟に斬り裂いて光る粒子に変換した。

 モンスターがいなくなったのを確認したナナホシくんは、ふぅ、と大きなため息を一つ。緊張にこわばらせていた体から力を抜いて、戦闘の様子を見ていた俺とサファイアの方を振り向いた。



「ど、どうでしたか……?」



 不安そうにそう聞いてくるナナホシくんに、俺とサファイアは目を合わせた。サファイアは眉を八の字にして困ったような表情を浮かべている。きっと俺も似たような表情を浮かべていることだろう。

 

 突如サファイアが乱入してくるという騒動もあったが、当初の予定通りにナナホシくんの戦闘訓練をすることになったので、単独で草原をうろついていたモンスターと一体一で戦ってもらい、それを「乱入したお詫び」ということで一緒に教えることになったサファイアと見ていたのだが……。

 ナナホシくんの戦闘スタイルは、長剣を武器に防具は軽鎧というオーソドックスな軽戦士スタイル。前衛でモンスターの攻撃をかわしつつ、自分の攻撃を着実に当てていくという堅実なヒット&アウェイな戦い方をしているのだが……。本人の申告通り、モンスターへの恐怖心がかなり強いらしく、常にこわばった表情……というか、半分泣きそうになりながら戦っていた。回避行動は大袈裟で無駄が多く、攻撃も大振りなモノばかり。なんというか……本当に重症だな。


 アイコンタクトでそのことを確認しあった俺とサファイアは、うなずきあってからナナホシくんに視線を戻し、残酷かもしれない一言を言い放つ。



「「荒治療、決定」」


「えええええええええ!? そ、そんなぁ……」



 悲痛な叫びをあげるナナホシくん。まぁ、荒治療って聞いて大樹がある方に視線を向けたから、さっき言ったドラゴンへのゾンビアタックをやらされると思っているのだろう。……俺的には、それが一番手っ取り早いし、一番な方法だと思うんだが……。



「リューにぃ、それは流石に可哀想。やめてあげて?」


「そうか? 出来る限り強い敵と戦うことで膨大な経験値が手に入り、けっか早くに成長できるって寸法なんだが……。ダメか?」


「ん。成長する前に、心が折れる」


「ぼ、ボクも一歩ずつ着実にやっていくのがいいと思いますです! はい!」



 まぁ、ゲームに関しては俺よりも先輩なサファイアの言うことの方が信憑性があるか。ナナホシくんもああ言ってることだし……。ドラゴンはやめておこう。

 となるとどうするか……。と頭を悩ませていると、くいくいとサファイアが服の袖を引っ張って来た。



「どうした? なんかいい方法でも思いついたか?」


「治療法はまだだけど、とりあえずリューにぃが戦っているところを見せるのはどう?」


「俺が戦ってるところを?」


「ん。この子はリューにぃに憧れてこうしてリューにぃの教えを受けに来てる。なら、リューにぃの戦ってるところをじかに見れば、何か変化がある……かも」


「なるほど。何はともあれ、まずはお手本をってことか……。確かにそれはアリかもな。それでどうだ、ナナホシくん」


「は、はい! リューさんの戦いが生で見れるなんて、ボク、感激です!」



 う、そんな純粋な目をキラキラさせないでくれ。なんか照れる。というか、主旨はあくまで訓練だからな? 俺を見せものにすることじゃないからな?

 とはいえ、こんなにもまっすぐ尊敬や好意を向けられるのは悪い気はしないし、ここは一つやる気を出していくとしますか。


 俺が実際に戦って見せるということになったので、まずは標的となるモンスターを探す。

 モンスターを探して歩いている間に、俺はナナホシくんに長剣で戦う感覚というものを聞いていた。ナナホシくんのために見せるので、俺も剣で戦ってみようということになったのだ。剣スキルも取得する予定である。俺自身も、魔力の剣を創り出す魔法【ソードオブフェイス】の使い方の幅を広げたいなと思っていたので、丁度いい機会でもある。完全に飛行魔法扱いしちゃってるけど、本来の使い方をしてみようと思う

 スキル《剣使い》を取得してっと……。ふふふ、剣士リューの最強への道は、ここから始まったのだった……。なんつって。



「次はっと……。『我、真摯に主を信う者。我が心に宿る信仰を剣に変え、神敵を滅す』、【ソードオブフェイス】」



 魔法を発動して、剣を一本だけ作り出す。シンプルな直剣をイメージして作り上げたのは、刃渡り一メートルほどの長剣。攻撃力や頑丈さは限界まで引き上げ、重量を軽くした一品だ。

 鋭利な刃は我が障害の一切を斬り捨てん……は言い過ぎかもだけど、そんな感じの剣になるといいなーとイメージして作った魔力の剣。それを両手で構えて何度か振ってみる。上から下。下から上。斜め上から袈裟斬りに。そのまま剣を返しての斬り上げ。身体のひねりと踏み込みの力を使った薙ぎ斬り。ひねりを加えた突きの一撃。思いつく限りの振り方で、剣を振るっていく。



「ほっ、せいっ、とりゃ!」



 うーん、メイスは何も考えずに相手にたたきつけるだけでよかったけど、剣は刃の部分を正確に当てる必要があるから、ちょっとだけ違和感があるな。修正修正っと……。

 一度振るっては、気になるところを直し。また振るっては気になるところを直す。それの繰り返し。気になるところがなくなるまで淡々と繰り返していく。



「……あの、サファイア……さん?」


「…………………何?」


「あ、いえ……。なんか、リューさんの剣を振るう動きが、どんどん綺麗になっていってるんですが……。リューさんって、剣道的なことをした経験が?」


「ない。皆無」


「えー……。じゃ、じゃああの異常な上達スピードは……?」


「リューにぃだから」


「あ、はい……。……あと、どうしてボクをそんなに睨むんですか? ボク、何かしましたっけ……」


「………………お前は、ちょっと危ない気がする……から」


「そ、そんなぁ……」



 サファイアとナナホシくんが何か話をしていたが、生憎と剣を振るうことに集中する俺の耳には届かなかった。


 そうこうしているうちに、標的となるモンスターを発見。そいつらは、二メートルほどの身長にでっぷりと太った腹。そして、突き出た鼻とつぶれた目の可愛さ皆無の豚面をしていた。

 フゴフゴ言いながらこちらに気づいて襲い掛かって向かってくるのは、俺が受けたクエストの対象モンスターでもあるオーク。それが五体。手に持った武器はそれぞれ違うが、どれも近接戦闘のためのものだった。



「うーん……。率直に言って醜い。もうちょっとコミカルにしても良かったんじゃない?」


「……ん。わたしもあのモンスター、嫌い」


「って、のんきに言ってる場合ですか!? も、もう来てますよ!?」



 オークの醜悪な外見にサファイアと一緒に顔をしかめていると、慌てた様子でナナホシくんがそう言ってきた。緊張感が無さ過ぎたか? けどまぁ……。


 緊張する必要なんて、どこを探しても見当たらない。



「《信仰の剣》、【アジリティエンハンス】、【生命活性】」



 今回使う強化はこれだけ。全力でやると一撃で終わらせてしまいそうだし、ナナホシくんが回避主体の戦い方をするというのでAGIを重点に強化してみた。

 さて……お手本ということだし、ナナホシくんの戦い方をまねてやってみよう。出来れば相手の攻撃を一度も喰らわずに勝ってみたいところだ。


 強化をかけ終えたら、剣をしっかり握って走り出す。馬鹿正直にまっすぐ行くんじゃなくて、ちょっと回り込むような軌道を描いてオークに接近する。


 俺の接近に反応した片手剣もちのオークが、雄叫びを上げながら突進してくる。片手剣の切っ先を俺に向けてきているということは、繰り出されるはあの巨体の体重が乗った突きだと推測できる。できれば喰らいたくない一撃だ。

 突きの軌道からサイドステップで体をどかし、片手剣オークの脇を通り抜けながら剣ででっぷり太った胴体を薙ぐ。紅いエフェクトがオークの脇腹から噴き出るのを確認したら、くるりと反転して無防備な首を振り向きざまに斬り裂いた。これで、一匹。


 今度は手斧を持ったオークがそれを振り上げながら襲い掛かって来た。横から俺の頭蓋を狙ってくる斧をアーツを使わないバックステップで回避し、手斧を持ったオークの腕に裂帛の気合と共に剣を振り下ろす。スパッ、と子気味の良い音がしてオークの腕が手斧と一緒に宙を舞った。

 部位欠損&武装解除に成功。すっ飛んでった手斧を目で追っているオークを袈裟斬りに切り捨て、その傷をなぞるように斬り上げを放つ。これで二匹目。


 三匹目と四匹目は一度に襲い掛かって来た。大剣と大槌。重量級の武器を俺の立っている場所に向かって振り下ろしてくる。今度はアーツの【バックステップ】を発動し、その場から離脱。数瞬前まで俺が立っていた場所の地面に二つの武器がふりそそぐ。

 それが地面を砕く寸前に【ハイジャンプ】を発動。上空に飛び上がり、逆手で剣を構えると、その切っ先を下に向けた。俺の落下地点には、今まさに地面を砕いた大剣オークの頭があった。

 大剣を振り下ろした格好、つまり前傾姿勢になっている大剣オークの背中に着地すると同時に剣の切っ先を後頭部に突き刺した。落下の勢いが乗った一撃は大剣オークの頭蓋を簡単に砕き、剣を貫通させた。その一撃でHPを全損させた大剣オークが光の粒子に変換される前に、足場にしていたオークの背を蹴って跳躍。今度は地面を目指しながら、両手で大上段に振りかぶった剣で大槌オークの頭蓋をカチ割る。一撃では沈まなかったので、振り下ろした剣の切っ先だけを上に向けて突き出し、大槌オークの喉を食い破った。三匹目、四匹目。



「ぶひっぃいいいいいいッ!!」



 最後の一匹は両手にメイスを持っていた。俺も前はやっていたメイス二刀流になつかしさを感じながら、滅茶苦茶に振り回されるメイスに剣をぶつけていく。今までとは打って変わった真正面からの打ち合い。リーチはこちらの方が長いが、攻撃のスピードは相手の方が速い。時折俺の体を打ちそうになる攻撃は小刻みにステップを踏むことで回避する。

 後ろには下がらない。メイスの猛攻が続くが、後退など眼中に入れずに剣を叩きつける。そうしているうちに、勝ちを焦ったのかメイスオークは両手のメイスを同時に振りかぶるという珍妙な攻撃を仕掛けてきた。無防備に振り上げられたぶよぶよの両腕。それを見逃すほど、俺は甘くない。


 

「そらッ!」



 ズバンッ! とメイスオークの両腕を横薙ぎの一撃で切り裂き、部位欠損を引き起こす。両手から先をなくしたメイスオークの視線が上に向いた。俺の視線は、メイスオークの無防備な胴体に向いていた。



「【スラッシュ】」



 魔法で作り出した光る剣が、さらなる光を帯びる。発動したのは、剣撃の威力と切れ味を上げるだけの、基本アーツ。それが、決着の一撃だった。

 左から右への横薙ぎを、右斜め上からの振り下ろしに変化させ、数字の「7」を描くような軌道で放たれた最後の斬撃は、メイスオークの左肩から右の脇腹までを完全に両断した。

 ずるり、とメイスオークの体がずれる。できの悪いパズルのように別れたメイスオークの体の片割れが地面に落下する直前に、光の粒子となって消滅した。これで、五匹。


 オークをすべて倒し終わった俺は、手に持った剣をまじまじと眺めて一言。



「ふむ。悪くない、な」



 そう、つぶやくのだった。

 

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