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ソロ神官のVRMMO冒険記 ~どこから見ても狂戦士です本当にありがとうございました~  作者: 原初
三章 蒼の嫉妬と長い一日編

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修羅場……にゃならず

「リュー、にぃ? 一体、何を、してる、の?」 



 ゴゴゴゴ……。そんな擬音が聞こえてきそうな様子で、どす黒いオーラを立ち昇らせる我が幼馴染様。とぎれとぎれの言葉が、こちらの恐怖心をあおってくる。どうしよう、ウチの幼馴染がすごく怖い……。あ、オーラの放つ威圧感でオーガが逃げ出した……。

 いきなり現れて、いきなりキレ始めたサファイアを前にして、ナナホシくんは「ふぇえええええ!?」と完全に委縮してしまっている。

 正直、サファイアがなぜこんなに怒っているのかは分からないが……とりあえず、少し落ち着いてもらおう。



「さ、サファイア? 少し落ち着いて話をだな……」


「落ち着く? ふふふ、わたし、すっごく落ち着いてるよ? リューにぃ、変なこと言うね? ふふふふふ……」



 あかん。キャラが壊れるほど怒ってる。これはキレレベル8以上か……。対処を間違えば、どうなるか予測不可能な領域だな。



「り、りりりりリューさぁああああん!? こ、こちらの凄く怖い方は一体……!?」


「あー……。サファイアって言って、俺のリアルの幼馴染なんだが……。今日は朝から機嫌が悪くてな。それが爆発したか別の理由かは知らんが、あんな感じになっている。いつもはああじゃないだけどな……」


「ふふふふふふ。リューにぃ? 二人でこそこそ何を話してるの? わたしにも教えて?」


「うん、ちゃんとお前にも話すから、とりあえずその物騒なオーラを引っ込めろ。ナナホシくんがめっちゃ怯えてるだろうが」


「…………むぅ、しょうがない」


 

 不満そうながらも、モンスターすら追い払う暗黒オーラを引っ込めたサファイア。

 ふぅ、とりあえずあの魔界とかから湧き上がってそうなオーラは引っ込んだか……。うん、ナナホシ君の方も恐慌状態からは抜け出せたみたいだ。


 さて……。



「サファイア」


「…………何?」


「何じゃなかろうに……。どうして、そんなに怒ってるんだ? 何に……は、俺にってことはわかるんだが、原因が不明だ」



 いまだに不機嫌さを隠そうともせず、唇を尖らせてそっぽを向いているサファイアに、もう真正面からそう聞いてしまう。また引き込まれると正直面倒だし……。

 俺がそう言うと、サファイアはにらみつけるような視線を、俺……ではなく、ナナホシくんに向けた。サファイアの視線を受けたナナホシくんはビクッ、と肩をこわばらせ、カタカタと震え始める。……こら、いじめるのはやめなさい。



「………………………………リューにぃ、昨日、アッシュとデートしてた。しかも、コスプレデート」


「アッシュと? ……いやまぁ、一緒に街を歩いたのは確かだが……」


 

 アヤメも一緒だったあの状況を、デートと言っても良いのだろうか? というか、アッシュに自信をつけさせるための荒治療みたいなもんだし……。アッシュがどう思っていたかは知らないけど、俺はそう思ってたんだけどな。周りから見ると、デート見たく見えたのだろうか?

 あと、コスプレ言うな。後から思い出して死にたくなるほど恥ずかしかったんだから。



「………………………………かと思ったら、今日は見知らぬ女と草原でいやらしいことしようとしてた。リューにぃの節操無し」


「…………まて、いろいろツッコミたいところがあるぞ。まずいやらしいことってなんだ。俺はナナホシくんに戦闘を教えてるだけだぞ?」


「…………夜の戦闘、的な?」


「まず思考をそっちの方向から戻せ、阿呆が」


「むぅ」



 何を言い出すのかと思えば……。何がどうなればそう言う結論にたどり着くんだ?

 ……あと、ナナホシくん? 「い、いやらしい……こと?」とか言って頬を染めるのはやめなさい? そんなんだから女の子って勘違いされるんだよ……。



「取り合えうずサファイア。お前の勘違いその一だ。ナナホシくんはれっきとした男だぞ? 女の子じゃない」


「「……え?」」



 サファイアとナナホシくんの反応がシンクロする。……って、ちょっと待てや。



「なんでナナホシくんまで意外そうな顔するんだ……」


「だ、だって、今まで初対面でボクのことを男だって認識してくれた人なんて、一人もいなくて……。リューさんは、どうしてわかったんですか?」


「……まじか。男の娘キター……」



 呆然とアホなことをつぶやいているサファイアは置いといて、まずはナナホシくんの疑問に答えよう。



「普通は見たらわかると思うんだが……。まぁ、強いて言うなら『歩き方』、かな?」


「歩き方? そ、それで男かどうかわかるんですか?」


「性別が違えば骨格も違うし、男女で歩き方が違うのって、見てれば結構わかるもんだぞ? まぁ、ナナホシくんの場合はまず容姿に目がいっちゃうから、そう言うところに注目されにくいんじゃないのか?」


「……リューにぃ、普通の人は歩き方で男女を判別したりしない。というか、そんな特技をどこで身に着けたの?」


「前に、アポロのアホがやったらその……男の娘? の出てくるアニメを薦めてきたときに、『男の娘ってこれって見破るの無理じゃね?』『いや、普通わかるだろ……』みたいな話になって、それじゃあ見破り方を考えてみるかってなって……。まぁ、そんな流れで身に着けた特技だな」


「す、すごいです、リューさん……! やっぱりリューさんに師事して正解でした!」


「うん、戦闘にはなんにも関係ないことだから。そんなキラキラした目で見ないでくれ」



 うーん、そう言われてみると、確かに珍しい……というか、どうでもいい特技だよなぁ……。男女を歩き方で見破ることができます! って、これ何の役に立つんだよ。無駄能力すぎて自分でもびっくりだわ。



「というわけだ。分かったかサファイア?」


「……ん、把握した」



 こくりとうなずくサファイア。うん、さっきよりも不機嫌さが薄れてきている。

 

 後は……サファイアは節操無しって言ってたっけ? またアホなことを……と思ったけど、昨日アッシュと出掛けた俺が、今日は別の女の子(サファイア視点)と二人きりで何かをしているというこの状況は、節操無しと勘違いされても仕方がないか。

 それに……最近、FEOでサファイアと一緒に何かするってこともなかったしな。せっかくサファイアたちが一緒に遊ぼうってくれたゲームなのに、その本人たちをないがしろにし過ぎたかな。

 俺は、サファイアの頭に手を置き、優しくマリンブルーの髪を撫でる。



「サファイア、ごめんな。あんまり一緒に遊んでやれなくて。誘ってくれたのはお前らなのに、自分のことばっかに夢中になってて、悪かった」


「……ううん。リューにぃは何も悪くない。わたしも、我儘だった。ごめんなさい。……でも、わたしとも一緒に遊んでくれると、嬉しい」


「ああ。流石に可愛い妹をないがしろにし過ぎだったからな……。お前が不機嫌になっても仕方ないか」


「……………うん」



 サファイアは、そう頷くと、口元に小さく笑みを浮かべた。

 ……どうしてか、その笑みは少し、悲しそうに見えたのだった。

 

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