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ソロ神官のVRMMO冒険記 ~どこから見ても狂戦士です本当にありがとうございました~  作者: 原初
三章 蒼の嫉妬と長い一日編

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蒼の内心

蒼視点です。

 新城家に居候させてもらっている部屋。そのドアにもたれるように座っていると、部屋の外から足音が近づいてきた。流にぃの足音……。もしかして………。


 トントントン…………トントントン……………バタン。


 扉が閉じる音がしたのを聞いたわたしは、小さく、はぁ、とため息を吐いた。



「……むぅ。流にぃのバカ。アホ。にぶちん。とーへんぼく」



 少しくらい気にしてくれても……と、我儘な自分がひょっこりと顔を出す。わたしが勝手に不機嫌になってるだけなのは分かってるけど、それでもと思ってしまうのが乙女心。流にぃはそれが分かってない。


 流にぃ。本名、新城流。


 わたし―――千代原蒼の幼馴染兼お兄ちゃん。ちっちゃいころからずっとずっと一緒に育ってきた、わたしの想い人。

 流にぃのことなら、何でも知ってる。

 優しくて、厳しくて、笑い顔が可愛くて、真剣な表情がかっこよくて、怒った顔は怖くて、とんでもないほど鈍い。

 料理が上手で、家事が得意なお母さんみたいなところがあったりもする。記憶力がお化けレベルで良かったりもする。約束事に厳しくて、約束を破ったりするとすごく怒る。

 そしてなにより……流にぃは何があってもわたしの味方でいてくれる。大袈裟な言い方だけど、世界中の誰もが敵になっても、流にぃだけはわたしのそばにいてくれるって、そう信じている。

 普通とはちょっと違う。人によっては変だというかもしれない。流にぃはそんな人だ。


 そして…………わたしは、そんな流にぃが大好きだったりする。


 兄妹関係のライクじゃなくて、男女としてラヴ。親愛じゃなくて、恋愛として流にぃのことが好き。もう、いつから抱いているか分からないこの思いは、高校生になって初めての夏休みの今でも続いている。

 

 けど、流にぃは鈍い。恋愛に関するすべての要素をどこかに置き忘れてきたんじゃないかってくらいに鈍い。超絶鈍感唐変木マン、それが流にぃだ。

 特にわたしは、どれだけ好意を向けても、そもそも『妹』としか見られてないから……。うう、自分で言ってて悲しくなってきた……。

 わたしと流にぃの関係は、世間一般の普通よりもずいぶん仲の良い幼馴染にとどまっている。

 

 そんなわたしと流にぃとの関係を劇的に変えることができるかもしれないチャンスは、思いがけない形で転がり込んできた。というか、わたしが転がり込んだ。

 

 流にぃの家に、夏休みの間居候する。わたしたちに何も知らせずにいきなり夫婦旅行に行くとか言い出した両親に最初は殺意が湧いたけど……ぐっじょぶ!


 わたしがやっているVRMMOはすでに流にぃにプレゼント済み。夏休みの間はめくるめく濃密な時間を過ごすことができそう。さぁ、ここからはわたしの時間だーー!


 ……と、なってくれるはずだった。


 誤算だったのは、流にぃが想像以上にわたしがプレゼントしたVRMMO……FEOに嵌ってしまったこと。そして、ゲームの中で流にぃとはほとんど別行動だったということ。

 むぅ、もともと協力プレイみたいなゲームが苦手だって知ってたけど……あそこまでソロを貫くとは。予想外だった。

 

 さらにそれ以上の誤算は、流にぃがゲームの中でどんどん他の女の子と仲良くなっていったことだろう。もともと魅力的な流にぃだから、それくらい当然。今までだってわたしがどれだけ頑張って流にぃに近づく悪い虫を追い払ってきたか……。

 けど、それをわたしが受け入れられるかと言われれば話は別。流にぃが別の女の子と仲良くしていれば、嫉妬もするし、不機嫌にもなる。


 ……嫉妬。そう、これは嫉妬だ。


 流にぃがFEOで知り合った女の子、アッシュ。ゲームの流にぃと同じ髪色を持つ、同性の私から見ても目を奪われるような美少女。

 とある機会からわたしもフレンドになって、結構頻繁にメッセージのやりとりをしたりしている。

 性格は、人間関係が苦手という点を除けばすこぶる良好。素直で純粋。いい子、ということばがスルリと納得できるような子。料理とかも得意らしいから、そう言う面からでも魅力的といえる女の子だ。

 ……そして、とてつもなく厄介なことに、アッシュは流にぃに好意を抱いている。まだ本人が素直に認めないから、完全な恋愛感情とはいいがたいけど、間違いなく流にぃのことを好いている。何がきっかけなのかは聞いてないけど、流にぃのことだ。きっと目いっぱい優しくして、とってもかっこよく守ってあげたりしたんだろう。さすが流にぃだ。


 直接というわけじゃないけど、わたしがこんなに不機嫌になっている原因の一端は、そのアッシュだったりする。

 昨日、流にぃの掲示板を見ていた時に、流れてきた一つの画像。……流にぃとアッシュが、手をつないで町を歩いているところを撮ったスクリーンショットだった。

 アッシュが作ったのであろう燕尾服に身を包んだ執事姿+ケモノ耳という姿の流にぃ――――この時ほどFEOの掲示板から画像を保存できないことを悔やんだことは無い――――と、ゴシックドレスに身を包み長い白髪をツインテールにしたアッシュ。ゲームの中にあってなお幻想的な二人は、その……すごく、お似合いだった。お似合いだと……思ってしまった。


 そして、わたしにそう思わせたアッシュへ、身が焦げるほどの嫉妬を覚えた。自分の知らないところでアッシュとデート……うん、コスプレデートだあれは。……をしていた流にぃにも、なんで、とか。ずるい、とか。理不尽な怒りを抱いた。

 

 さっきも言ったけど、わたしと流にぃは、世間一般の普通よりずいぶん仲の良い幼馴染でしかない。だから、流にぃがどこの誰と仲良くなろうと、それを否定する権利なんてものは、わたしにはない。


 だから、この感情はただの『我儘』でしかない。自分の思い通りに物事が進んでくれないことに腹を立てる、小さな子供と同じだ。


 ……流にぃにFEOをあげたのは、間違いだったかもしれない。

 今までなら、わたしの目の届かないところに流にぃがいるということが、ほとんどなかった。家でも学校でも、すぐそばに流にぃがいてくれた。

 けど、FEOの中では、ほとんどわたしの目の届かないところにいる。今まで気にしてこなかったそれが、今になってとてつもなく不安に感じられている。

 ……流にぃを、ずっとわたしのそばに……。ふふふ……。……はっ! 邪念が漏れてしまった……気を付けよう。


 むぅ。けど、朝の態度は流石に悪かったかもしれない。流にぃは「しょうがないな」みたいな反応しかしてなかったけど、やりすぎた感はある。あのくらいで流にぃが怒ったり嫌ったりしないことは分かっているけど、いい印象を与えることが無いのは明白。……うん、ちゃんと謝ろう。気持ちの整理も、だいぶついた。


 すぐにFEOにログインして、流にぃを……リューにぃを探す。掲示板の目撃情報によると、『大樹の草原』にいるみたいだ。珍しいことに同行者がいるみたいだけど……誰だろう?

 そう思いながら、一人で降り立った『大樹の草原』。時折エンカウントするモンスターを水の槍で貫き、氷漬けにして倒しながら、『リューにぃせんさー』に従ってリューにぃを探す。……む、こっちか。


 ふっふっふ、わたしほどのリューにぃますたーになれば、今どこにいるのかを感じ取ることなど容易いのだよ……。なんてことを考えながら、草原を進んでいき……ほどなくして、リューにぃを発見した。



「リューさん、お願いします! ボクを一人前にしてください! そのためならボク、何でもしますから!」


「……よし、じゃあ。徹底的にやろう。一切の手加減は無しだ」


「の、望むところです! どれだけ激しくてもかまいません!」



 ……銀髪の女の子と密着して、そんなやり取りをしているリューにぃを。



「……………………………………リュー、にぃ?」








 その子は、だあれ?


 どうして、そんなにくっついてるの?


 なんでもって、ふたりでなにをするきなの?


 ……ねぇ、りゅーにぃ。



 

 ちゃんと、しょうじきに、おしえて?

次回、修羅場。(たぶん)



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― 新着の感想 ―
[一言] 思うんだけど、幼なじみの位置を確保してそこにあぐらをかいてる段階で幼い妹以外にはなれないと気づかない段階で無理だと思う 彼女にするには面倒だし
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