白髪の少女は決意する
ラブコメ書いて砂糖コメされるのってめっちゃ嬉しいっすね。
感想を書いてくれた人たちへ、ありがとう!!
「………………」
「………………」
場所は変わらず、アッシュがいつも使っている工房。
そこで、俺とアッシュはおっそろしいほどの気まずさに襲われてた。アッシュはゴスロリ姿のまま、工房の隅の方で丸くなってるし、俺は俺で、膝に乗せたアヤメを撫でることで何とか精神の安定を保ってる状態だ。
どうしてこうなったかって? あはは、面白い質問だ。
さっきのやり取りがとんでもなく恥ずかしいものだったと自覚したからに決まってんだろうが……ッ!!
自分が口から垂れ流したセリフの一つ一つを思い出すだけで死にそうなほどに恥ずかしい。神に誓って嘘は言ってないし、アッシュに行ったことはすべて本心であることは間違いない。
けど、それとこれとは話が別なのだ。
なんだよ「今のアッシュは、完成された一つの芸術だな」って。アホなのか? 俺はとんでもないアホだったのか?
ほかにも、「初対面がこの格好だったら、アッシュに一目惚れしてたかもな」とかいったよな。いやもうほんとに何なんだ、さっきまでの俺。プレイボーイの幽霊でも憑りついていたのかなー?
仕舞いには、アッシュの笑顔に見惚れて阿保みたいに惚けたなんている醜態をさらすし……。あれ? なんか死にたくなってきたなー。ちょっと『大樹の平原』のドラゴンに挑みに行ってみようかなー?
部屋の隅でうずくまっているアッシュも、あんな今どき少女漫画のイケメンキャラでも言わねぇようなセリフに悶えてるんだろうな……。笑って俺を傷つけないようにしてくれてるのかな? やっぱりアッシュは優しい娘だな。
あはは……。
「…………さーて、穴掘って埋まってくるかなー」
「いきなり自殺の算段を立てないでください!?」
「おー、アッシュ。復活したのかー」
「りゅ、リューがおかしくなってます!? アヤメちゃん! すぐに癒しを! 具体的には頭をなでなでして尻尾と耳をもふらせてあげてください!」
「………………(こくこく)」
俺の膝に背を向けて乗っていたアヤメが、くるりと反転して膝立ちになり、そのまま俺の頭をその華奢な身体で抱きしめた。片方のちっちゃな手が俺の頭を撫で、もう片方の手は俺の手を自分の尻尾へと導いた。
なでなで。モフモフ。なでなでなで。モフモフモフ。なでなでなでなで。モフモフモフモフ。
俺、復活。
「アヤメぇえええええええ! やっぱりお前が一番の癒しだよ……ッ!!」
「………………(ぽんぽん)」
「ふぅ……。良かったです。いえ、絵面だけを見るとリューがロリコン以外の何物でもないんですけど……。とにかく、良かったです」
聞こえません。羞恥で傷ついた俺の心を癒せるのはアヤメだけなんです。
アヤメにこれでもかと撫でまわされ、俺もこれでもかとアヤメをモフリ倒し完全復活を遂げた俺は、いまだに可憐さオーバードライブなゴスロリ姿のアッシュにとある提案をされていた。
「その恰好で、外に出てみたい?」
「は、はい!」
少し緊張した様子でいうアッシュ。その真剣な表情に、俺はふむと顎に手を当てる。
「アッシュがそうしてみたいって言うなら、俺に止める権利なんざないんだが……。その、大丈夫なのか?」
アッシュは人見知りだ。初対面の相手だと、返事をするのさえ難しいと言っていたのを覚えている。それに、人の視線にさらされることも慣れていない。知らない人にじろじろ見られるのが怖いそうだ。
そんなアッシュが、ゴスロリツインテなんて目立つ姿で外に? こういっちゃ悪いが、無茶しすぎなんじゃないかと思わずにはいられない。
だって、ただでさえ人目を惹く超絶美少女なアッシュだよ? そこにゴシックドレスとツインテールの魔力が加わったら……。どうなるかは、想像に難くない。
心配になってそう問いかけると、アッシュは膝に置いた手をきゅっと握りしめ、うつむいた。自分でも、難しいってことは分かっているようだ。
それでも、アッシュはすぐに顔を上げた。まっずぐに向けられた瞳に宿っているのは、強固な決意の色だった。
「私は……」
アッシュはそこで一度言葉を切って、唇をきゅっと結んだ。
「私は…………変わりたいんです。もっと、自分に自信を持ちたい。……リューに褒められたときに、素直に喜べるようになりたいんです。今の私は、リューがせっかく送ってくれる言葉を疑ってしまう。そんな自分が嫌なんです。だから、リューが褒めてくれた。可愛いって言ってくれたこの服を着てるときなら、少しは自信が持てるかなって……」
「それを確かめるために、その服で外に行く……か」
俺が可愛いって言ったのは服じゃなくて、それを着ているアッシュのことなんだけど……。と、どうでもいい思考を挟みつつ、俺は考える。
ふむ……。いい方法と言えば、いい方法なのか? 特に、アッシュ自身が変わりたいと思って、一人で考えた方法だということが大きいんじゃないかと思う。成功すれば、アッシュが自信をつけることにつながるはずだ。
ただ、そうだな……。……うん、そうだよな。
「アッシュ、それって一人でやるつもりか?」
「えっと……。はい。そ、そのつもりです」
「でも、一人だと何かあった時どうするんだ? 前だってナンパにあってただろ?」
「そ、それは、そうですけど……」
アッシュはちょっと視線を逸らした。考えてなかったのか、頭から抜け落ちていたのか……。まぁ、いいか。
「アッシュ、俺にも手伝わせてくれないか?」
「え……? で、でも。これは私のワガママみたいなものですし、リューの手を煩わせるわけには……」
「そんなことは気にするな。俺が、アッシュのために、そうしたいって思っただけなんだからな」
「わ、私のため……。リュー、もしかして私を……」
「ああ、アッシュの友人として。是非とも協力させてほしい」
「…………しってましたもん!! リューのばか!!」
真摯な気持ちで頼み込んだら、なぜか怒られてしまった。
まぁ、そのあと「じゃあ……。よ、よろしくお願いします」と、了承してもらえたので、とりあえずは良しとしましょうか。
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