白髪美少女×ゴスロリ=最強
一瞬、本気で言葉を失った。
「ど、どうです……か?」
俺の目の前には、アッシュが立っている。恥ずかしそうに体をよじり、両手を胸元で合わせている。顔は真っ赤に染まり、心なしか瞳も潤んでいた。
そして、そんな羞恥心全開のアッシュを包む、漆黒のゴスロリドレス。
フリル、リボンでこれでもかと飾られ、ふんわりとしたスカートの裾が、アッシュが体を動かすたびにひらりひらりと揺れている。
純白の髪をツインテールにしており、黒のヘッドドレスには真紅の薔薇のコサージュが付いている。
「な、何か言ってくださいよぅ……」
アッシュが何か言っているが、生憎と耳に入ってこない。というか、聴覚が動いていない気がする。
視界の中で、アッシュが手で口もとを隠した。フリルな袖は少し余っており、萌え袖状態に。フリル萌え袖か……。
肌の露出はほとんどない。手先と顔の部分が出ているだけ。スカートはひざ丈で、そこから露出している部分はニーソが覆っている。
「へ、変じゃない……ですよね?」
アッシュが、自分の恰好を確認しようとしたのか、くるりとその場でターンをした。その瞬間、スカートの裾がふわりと浮かび上がり、真っ白な太ももとそこに走るガーターベルトが……。
「ごふっ!」
「り、リュー!? ど、どうしたんですか一体!?」
は、破壊力が……。つ、強すぎる……。
「や、やっぱり似合ってませんよね? ごめんなさい、すぐに着替えて……」
「それを脱ぐなんてとんでもない!」
メニューを開き装備を変えようとしたアッシュに待ったをかける。なんてもったいないことをしようとしてるんでしょうか、この娘さんは。
俺がいきなり出した大声に驚き、ビクッとして止まったアッシュをもう一度じっくりと見つめる。言い方が悪いが、なめるように見る。
「ふむ……」
「な、何ですか。その美術品を見つめる鑑定士見たいな目は……」
「美術品……。確かにそうだな。今のアッシュは、完成された一つの芸術だな」
「ふえぇ!?」
人形のような、という言葉があるが、今のアッシュはまさにそれだった。……いや、見た目だけなら確かにそうだ。アッシュの整い過ぎなくらい整った顔立ちと今の恰好の組み合わせは凄腕の人形職人だろうと作ることは叶わないであろうと断言できる。
そこに、慣れない恰好をしていることによる『恥じらい』が混ざり合った今……。言葉では言い表せないほどの可憐さを生み出している。
いや、可憐さだけじゃない。無垢な少女のような純真さの中に、確かに艶を感じさせるような。香りづけ程度の淫靡さが、アッシュの女性的な魅力を何十倍にも引き上げているのだ。
まぁ、なんかいろいろとごちゃごちゃと並べてみたが、要するに何が言いたいのかと言えば――――。
「アッシュ」
「ひゃ、ひゃい! な、なんでしょうか……?」
アッシュへ、まっすぐに視線を向ける。胸の内にあるこの感情を、たった一言の言葉に押し込んで、圧縮して、目の前の少女にぶつける。
「―――――めちゃくちゃ似合ってる」
「はう!?」
ぼふんっ! と湯気がでそうなレベルで顔を真っ赤にするアッシュ。褒められ慣れてないので照れてるのだろうか?
そんなアッシュには悪いが、これは誉めずにはいられない。というか、この状態のアッシュに賞賛を送らないのは、いろんな意味で間違っていると思う。
他人のあれこれに点数をつけたりするのはあまり好きではないのだが……これは言わせてもらわねば。
百点満点中、一億万点です。
限界突破も致し方ないですね。
「悪いな、こういう時は、何か気のきいたセリフが言えるといいんだろうけど……。今のアッシュを見てると、どうしても可愛いだとか綺麗だとか。そんな単純な言葉しか出てこなくてな」
「はわッ!?」
「しかし、ここまで似合うとは……。似合わないなんて微塵も思っていなかったけど、いい意味で予想を裏切られたって感じだな」
「ふにゃ!?」
「うーん、初対面がこの格好だったら、アッシュに一目惚れしてたかもな。最初に見た時なんて、一瞬何も言えなくなったし」
「ふぇええええええ!?」
っと、思ったことをそのまましゃべってたな。こんなにいろいろ言われてもアッシュが困るだけだろうに……って、あれ?
こてん、と首を傾げた俺の視線の先には、顔どころか少しだけ除く首筋や、手の先までを朱に染めたアッシュが、両手で顔を覆いながらしゃがみこんでいた。
何やら「あー」とか「うー」とか、唸り声を上げてるけど……。大丈夫?
そんなアッシュにどうしていいかわからずに手を伸ばしたり引っ込めたりしていると、少しだけ肌から赤みが引いたアッシュが、顔を覆っていた両手を外し、上目遣いにこちらを睨んでくる。
睨んでくると言っても、まったくもって怖くない。赤く染まった頬とうるんで輝きを増した瞳。拗ねたような子供っぽい表情。そして上目遣い……。
ドクン、と心臓がはねた。
そんな俺の内心の動きなど知らず、アッシュは恨めし気な声で話し始める。
「リュー……。リューは、あれですか? 私を殺したいんですか? あんなこと言われたら、恥ずかしくてこそばゆくて……でも、凄くうれしくて……。嬉しすぎて、死んじゃいそうです。心臓がばくばく言ってますし、体中が熱いです。溶けちゃいそうなくらいです。私なんかにこんな……」
「アッシュ、それは違う」
アッシュの言葉を途中で遮る。しゃがみ込むアッシュと視線を合わせるために、地面に膝をつく。そして、アッシュの潤んだ瞳を真正面から見つめる。
「アッシュなんかじゃない。アッシュだからだ。俺だって、アッシュだからああ言ったんだ。今すぐにどうこうしろとは言わなけど……。できれば、自分を卑下するのはやめてほしいな」
何度でもいうけど、アッシュは可愛いんだから。と笑いかける。この可憐で自分に自信のない少女の抱えているものが、少しでも軽くなることを願いながら。
少しの間、俺とアッシュは黙ったまま見つめ合っていた。俺もアッシュも、二人とも視線をそらさなかった。
そして、アッシュの表情が……フッ、と柔らかく微笑みを形作った。
笑みを浮かべた唇がそっと開かれる。
「………はい。頑張ります」
……情けない話なのだが。
アッシュがそう言った瞬間に浮かべていた笑み。
その笑みを見た俺は、馬鹿みたいな顔で、見惚れていたのだった。
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