決闘前のあれこれ
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
なんだか一月くらいかかった気がするレベル上げの三日間が終わり、『狂戦士ん官』なんてふざけた名前の職業に転職した次の日。
日課となったランニングを終え、サクサクと朝食を作り、二人との壮絶な戦いの果て叩き起こし、朝食の食べ、片付けをし、家事を一通り済ませる。夏休みの宿題? すでに終わっていますがなにか?
昼食までの間に、昨日の決闘騒ぎを終わらせたかったので、決闘は11時に、俺と【フラグメント】が最初に顔合わせをした場所でということになっている。
金ツン野郎との決闘……。相手は確かジョブが雷槍士で、レベルは72だったっけ? ……レベル差20もあって勝ち目なんてあるのか? と思ったんだが……。
「レベル差? ああ、それなら心配しなくても大丈夫だぜ。決闘システムの一つに、彼我のレベル差をなくすための機能があるんだ。たぶんそれを使っての決闘になると思うからよ」
「あ、そんな機能まであったんだ、決闘システム」
「けど、ライゴは強敵だぜ? なんたって、PvP慣れしてる。サンクヴィレ……っと、カトルヴィレの次の町な。そこにPvPの聖地たる闘技場があってだな。ライゴはそこのトップランカーなんだよ」
「ますます勝ち目がなくないか……? 俺、PvPなんてPKに襲われた時とヤマトさんって人と戦った二回しか経験ないんだが」
「そこを何とかするのが流にぃくおりてぃ。がんば」
「無茶なことを言うなぁ、お前は」
「わたしは流にぃのかっこいいところが見たいだけ。そのためなら、あんな関西弁やろーなんてどうでも」
「……酷いこと言うなぁ、お前は」
同じギルドのメンバーになんてことを言うんだろうか、こいつは。
もしかして、ギルドのメンバーと仲が悪かったりとか……? いや、外面のいいこいつに限ってそれは無いと思うけど……。
蒼は、必要以上に人とかかわりを持とうとしない。学校生活でも話しかけられれば対応すれば、自分から話しかけるのなんて俺と太陽、後はよほど親しい者だけだ。それで何か問題が起こってるわけじゃないし、そんな蒼を見て学校の連中は「ミステリアス」だの「神秘的」だの……。蒼の本性を知っている身からすれば、「誰?」と首を傾げたくなるような評価を受けている。
って、学校での蒼のことはどうでもいい。それよりも今は、蒼のギルドでのことだ。ここは太陽に話を聞くか……。
「なぁ、太陽。蒼のやつ、ギルド内で誰かと仲が悪かったりするか?」
「蒼が? うーん……。まぁ、男連中とはあんまり喋ったりしないかな。マオとは結構仲がよかったと思うぞ。サリアたちとも仲が悪いってことは無かったはずだ」
「それなら安心か」
「……パルケスはきらい」
「ちょ、蒼!?」
……まぁ、おおむね大丈夫ってことで。そしてパルケス。あの神経質そうな銀髪は蒼に嫌われてましたか。なんとなくザマァ。
「ところで、話は変わるんだが。【フラグメント】のメンバーって、全員がギルド結成時のメンバーなのか?」
「んにゃ。初期メンバーは俺と蒼とサリア、ローズ。マオの五人だな。後はそのあとの『【フラグメント】加入試験PvP大会』で入って来たメンバーだ」
「……あんだって?」
なんだその……『【フラグメント】加入試験PvP大会』って。
二人の説明によれば、名前のまんま、【フラグメント】への加入をかけたPvP大会らしい。
数か月前、アップデートによってギルドシステムが解放されてすぐのころ、太陽と蒼の二人は、パーティーメンバーと一緒にギルド【フラグメント】を創設した。そのころからプレイヤーの中で英雄のような扱いを受けていた二人が創り出したギルドということで、加入希望のプレイヤーがわんさか集まったらしい。連日二人の元にプレイヤーが押しかけ、そりゃもう大変だったらしい。
ただ、来る人来る人全員が、良い人とは限らない。【フラグメント】の方針にふさわしい人かどうか、それを見極めようと思った太陽たちは、何かいい方法はないかと考えた。その末に思いついたのが、「戦ってるところを見れば、大体のことは分かる」という太陽の感覚に頼ったPvP大会だった。バトルロイヤルとトーナメントの二回に分かれたPvP大会は一週間にも及んだらしい。激闘に次ぐ激闘。大番狂わせや名勝負がいくつも生まれ、プレイヤーの間では伝説として語り継がれているとか。
そんなんでいいのか! とツッコミたくなるが……。まぁ、金ツン野郎とパルケルを除けばいい人が集まってるところを見ると、二人の試みは成功したと言っていいだろう。
「へぇ、そんなことが」
「……大変だった。わたしのファンを名乗る連中。よく分からないストーカーども。太陽狙いの女プレイヤー。太陽狙いの男プレイヤーとか、ロクでもないのがいっぱいだった」
「……へぇ、そんなことが」
「うう……。筋肉……。マッチョ……。うわぁあああああああ」
太陽が何かのトラウマをほじくり返されたかのような声を上げながら、頭を抱えてしゃがみこむ。そうか……。この幼馴染は、同性にまでモテるのか……。まったくもって羨ましくねぇ。
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