表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソロ神官のVRMMO冒険記 ~どこから見ても狂戦士です本当にありがとうございました~  作者: 原初
二章 ランクアップ編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

103/250

先輩と後輩

 ひとしきり騒ぎ終えた俺と後輩は、空が赤く染まってもまるで衰えることのない暑さに体力を奪われ、疲労困憊といった様子でベンチにへたり込んでいた。



「……ハァハァ、こ、これじゃあ休憩の意味がまるでないじゃないか……。後輩のせいだぞ……」


「……せ、先輩が変なことを言うのが悪いんっすよ……。私、悪くないっす……」


「……まぁ、これ以上は不毛な争いだ。この辺にしておくか」


「そうっすねぇ……。どうでもいいっすけど、『不毛な争い』って聞くとハゲたオッサンがバトってるところが思い浮かぶのって私だけっすかね?」


「ああ、世界広しともそんなアホなことを考えるのはお前ぐらいだろうな」


「辛辣っすね!? もう、ちょっとしたジョークっすよぉ、ジョーク」


「はぁ……。で? 何の用なんだ?」


「? 何のことっすか?」


「いや、何のことって……。お前、俺に何か用があるから話しかけてきたんじゃないか?」


「別になーにもないっす。しいて言うなら……そこに先輩がいたからっすかね?」


「どこぞの登山家かよ、お前……」



 にひひ、と笑う後輩に俺はため息を吐く。

 こいつとの付き合いももう二年以上になるけど、相変わらずつかみどころがないというか、気まぐれというか……。FEOやってたのも驚きなんだよな。こいつ、あんまりゲームをやったりするイメージなかったし。

 そんなことを思いながら、隣に座る後輩に視線を向ける。

 中性的で整った顔つき。向こうと同じようにツーサイドアップにした艶やかな黒髪。小柄で均整のとれた体付き。汗で白いノースリーブのブラウスが僅かに透けているのが妙に艶っぽい。

 うん、蒼とはまた違った可愛らしさを持つ少女であると再確認。というか、こうして私服姿を見るのはなんだか新鮮だな。

 そういえば……。こいつ、今年高校受験だよな? 今、中三のはずだし……。あれ? 中三の夏休みって、普通受験勉強とかで忙しいんじゃないのか? 俺はそうでもなかったけど……。まぁ、俺が気にすることでもないか。

 そんな風に思考がそれた時、ふと離れた場所からの視線を感じ、そちらを振り返ってみる。けど、そこに人影は見られなかった。公園の外からだった気がするんだがな……。気のせいか?



「おや? どうかしたんすか、先輩?」


「……いや、何でもない。俺の気のせいだったみたいだ」


「よくわかんないっすけど、何でもないなら別にいいっす。それより先輩、ここでこうして会えたのも何かの運命。よかったら、お茶でもどうっすか?」


「またいきなりだな……? 一体、何を企んでいる?」


「企んでるとは失礼っすね。こんなに可愛い後輩ちゃんがお茶に誘ってるんすから、いやっほい! ってよろこぶところっすよ? …………(ただ、せっかく会えたのに、このまますぐお別れって言うのが嫌だっただけ……なーんて、言えないっすからねぇ)」


「まぁ、後輩みたいな可愛いヤツと一緒にお茶できるなら、狂喜乱舞する男がいてもおかしくはないが……後輩だからなぁ………」


「おっと、なんか聞き捨てならないセリフが聞こえてきたっすね。あん? 私だから何だってんすか? 先輩?」


「いや、何かの運命を動機にするなら、お茶なんかじゃ軽すぎる気がしただけだ。俺と後輩の仲だ。そんな大げさなこと言わなくても、お茶くらい誘ってくれれば行くに決まってるだろ?」


「……先輩、ずるいっす」


「ずるいって……何が?」


「全部っすよ、全部。先輩はあれです。ズル先輩っす」


「またわけわからんことを……」


「分かんなくていいっすよ。……(というか、分かられたら恥ずかしくて死んじゃうっす)」



 何やら拗ねた様子でぶつぶつ言い始めた後輩。いったいどうしたというのだろうか?



「えっと……。とりあえず、荷物だけ片づけてくるから、そのあと行くか。いつもの店でいいんだよな?」


「構いませんよー。ってか、ホントに来てくれるんすね……。あ、先輩。私も荷物運ぶの手伝うっすよ。誘ったのは私なんすから、そのくらいはさせてほしいっす」


「んー……。じゃあ、これお願い」


「……これ、一番ちっちゃいヤツじゃないっすか。これじゃあ手伝いにならないっすよ?」


「アホ、女の子に重い荷物を持たせるほど、俺は非常識な男じゃないぞ?」


「……ホントに先輩はズルいっすね」


「なんか言ったか?」


「何でもないっすよ。あと、先輩は非常識な男じゃないかもしれないっすけど、非常識な神官ではあるっすからね」


「……否定できないのが地味に悲しい」











 私―――先崎万桜は、重そうなたくさんの荷物を抱えている先輩の背中を眺める。私の手にも先輩が買ったモノが入った袋があるが、軽いモノしか入っていないのか、全然負担にならない。

 ……ホント、これじゃあ手伝いを申し出た意味がないじゃないっすか。


 私にとって、先輩―――新城流は、その、えっと、いわゆる……す、好きな人……というヤツだ。

 歳は一つ上で、同じ中学で同じ部活に所属する先輩だった。今は先輩は高校生になってしまったので、おなじ学校には通えていない。まぁ、来年には私も先輩と同じ学校に入る予定なので問題無いんすけどね?

 

 先輩は、結構変わった人だ。大人っぽくて子供っぽい。冷静に見えて熱い。いじわるに見えて優しい。正直に見えて素直じゃない。そんな、とらえどころのない人。

 ……そういえば、一つだけはっきりしてるっすね。アホみたいに恋愛感情に鈍いところ。……正確には自分に向けられる恋愛感情にまるで気づかないこと。なんなんすかね、この人。中学時代も、結構人気があったんすよ? 告白しようとしてる子を知ってもいるっす。……最終的に最強のガーディアンに阻まれちゃうんすけどね? それでも、ガーディアンの目をかいくぐり、先輩と親密度アップを狙った人もいたっすけど……そのこと如くが、先輩の鈍さの前に敗れ去りました。ええ、全敗ですとも。なんすかあの鉄壁具合。あれを攻略するの、大変とかいうレベルじゃないっすからね?


 ……こほん、失礼。少し興奮しすぎたみたいっす。すーはー、すーはー……。よし。落ち着いたっす。


 まぁ、先輩を好きになった私が言うことじゃないかもしれないっすね。

 え? 私が先輩を好きになった理由っすか? ……そ、そんなの秘密に決まってるじゃないっすか。絶対に言えないっす。


 けどまぁ……この想いが叶うことを、私はずっと夢見ているっすよ。……先輩の場合、『叶う』じゃなくて『敵う』なような気もするっすケド。


 おや、そろそろ先輩の家につくっすね。じゃあそのあとは……ふふっ、楽しみっすねぇ。




感想、評価、ブックマを付けてくださっている方々、本当にありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ