最終エンディング 『Ⅱ』の世界へようこそ!
某日。
某所。
某世界。
某ショップ、商品棚前。
「なあ、このゲーム知ってる?」
「ん? ああ、知ってる知ってる」
「クソゲーだってな」
「良ゲーって評価だな」
「へ?」
「ん?」
「何か話噛み合ってなくね?」
「あー、そうか。今クソゲーの時期かな」
「え、どういうこと?」
「このゲーム、発売から一週間おきにクソゲーとバカゲーと良ゲーで評価が循環してるんだよ」
「は?」
「えーと、確かこのサイトで……。ほら、評価見てみろよ」
「うわ、一番上と一番下しかねえ。何だこれ。極端すぎるだろ」
「感想欄も見てみ。これがわかりやすいわ。同じ人が投稿してるから」
「『前作プレイ済み。現在10時間プレイ。まず言いたいのは最悪のクソゲー。前作のシックな要素全部ぶち壊して、何がしたいのか、本気でわからない。何でわざわざファンを敵に回すのか。スタッフはマジで全員クビになってほしい。紆余曲折あって、奇跡の発売決定となったときは感無量だったのに、全部裏切られた。もうこのシリーズは完全に終わってるし、終わらせてほしい。スタッフは何で開発再開できたかわからないとか言ってるらしいけど、マジで謎。こんなことなら発売中止でよかった』。うわあ、腹筋ベコベコだな。……で、その後は……『以前ここで酷評した者ですが、すみません、訂正させてください。クリアしました。このゲームは決してクソじゃないです。最初クソだと思ったけど、だんだん面白く感じてきて、今二周目始めてます。自分でもうまく説明できないんですが、最低でも良ゲーはあります。前作と全然違うと思ったけど、根っこは同じでした。食事も忘れてプレイしてます。楽しいです。改めてこのゲームのファンになりました。早くプレイに戻りたいからこのへんでやめます』……あのさ、この人やばくね? 内容じゃなくて、雰囲気が。文章も要領を得なくなってるっていうか」
「こっちもやべえぞ」
「『コレジャナイコレジャナイコレジャナイコレジャナイコレジャナイコレジャナイ……』えぇ?『コレコレコレコレコレコレ……』ウッソだろこいつら!? え、なにこれやばい宗教? 人の理性を壊すゲームなの?」
「まあ、これはアンチと信者のお遊びだと思うけどな。『Ⅰ』の時、なぜか超荒れてたし」
「ああ……。こんだけ評価割れてると、アンチも元気だろうな」
「で、どうする?」
「何が?」
「このゲームやるなら、おれ貸すぞ」
「え、おまえ持ってるのかよ!?」
「発売日に買ったからな」
「うえっ、よく手出したな。一度は発売中止になったんだろ? ネットの評判見てからだろ、そういうのは……」
「ん、まあ……」
「? 何だよ」
「昔、このゲームの『Ⅰ』をすげえ勧めてくれた友達がいてさ。それで初めてやったんだけど」
「へえ」
「そいつ、ホント好きだったみたいで、何聞いてもぱっと答えてくれるんだよ。普通にプレイしてたら気づかないようなとこも説明してくれてさ。あー、そういうことなんだ、って色々理解するうちに、すっかりこのゲームのファンになっちまったんだ」
「ええやんそいつ。だから発売日に特攻したのか。で、おまえ的にはどうだったの?『Ⅱ』」
「これじゃねえ! ……って思ったね。最初は」
「おまえもかよ! じゃ、おまえの友達もがっかりしたろうなー」
「ああ。コレジャナイ! って言ってるだろうな。でも……」
「でも?」
「あいつ、このゲームほんとに好きだったからさ。コレジャナイとか言いつつ、途中で投げたりしないで絶対最後まで楽しもうとすると思うんだよ。何か自分で勝手に設定補完したりしてさ。ほら、あるだろ。脳内補完? 考察? そういうの」
「あー。あるある。おれ考えるの苦手だけど、あれは見てて楽しいわ」
「そう思ったら、おれも楽しまないと損だなーって思って。で、色々考えながらやったら……」
「やったら?」
「おれの中では最高のバカゲーになった」
「バカゲーかよ!」
「評価は人それぞれだ。まあ、前作とはだいぶ違うけど、本気で作られてることは間違いねえよ。ストーリーもわりと王道だし、自由度はかなり高い。どう感じるかは、やったヤツ次第だな」
「あーだから評価割れてんのか。よし、逆に興味湧いてきたわ。貸してくれ」
「あいよ」
「あと、その友達にも礼を言っといてくれ。おまえが説明してくれなかったら、絶対やらんかったわ」
「ん? あー……。もうしばらく会ってないんだ。おれ、引っ越したから」
「あ、そうなのか」
「どうしてっかな、あいつ。続編絶対楽しみにしてただろうな。楽しんでくれてっといいんだけどな……」
「ああその気持ち、なんかわかるわぁ。先にハマってたヤツが冷めると、何かこっちまでがっかりするっていうか、白けちゃうんだよあ」
「それ。特にさ、おれ、人が何かを好きになるってこういうことなんだって、そいつで初めて知ったからさ」
「なおさら嫌いにはなってほしくねーわな」
「そうなんだよ。勝手な言い草だけどよ」
「ま、大丈夫だろ。おまえがそこまで言うヤツなら。案外、誰も知らねー深みまでハマって、世界一楽しんでるかもしれねーぞ」
「だといいな」
「そう思っとけ。んじゃそろそろ行こうぜ。早くそのゲーム借りたい」
「ああ。行くか。すげえ語りたいけど、とりあえず、軽くヒントだけ教えとくわ。〈ヴァン平原〉って最初のエリアがあるんだけど、そこではな……」
――コレジャナイ!『Ⅱ』の世界へようこそ! 完
THANKYOU FOR READING!
最後まで読んでいただき、どうもありがとうございました。
前作の倍という長い時間がかかってしまいましたが、やりたいことばかりを放り込んで、毎話毎話とても楽しく書くことができました。
読んでくれた皆様にも、楽しんでもらえたら幸いです。
感想をくれた方々、お気に入り登録・評価してくださった方々、長い時間のお付き合い、どうもありがとうございます。
皆様のおかげで、作者はいつもわくわくしながら投稿できました。
特に、毎回のように感想をくれる方々とのやりとりは刺激的で、時にはそこからいただいたアイデアを作品にしれっと活かすこともできました(曇りなき盗人の目)。そういう意味では、何だかみんなでこの作品を遊んでいるような気分でした。
もし、まだこの作品に感想を書いたことがないという方がいらっしゃいましたら、完結記念にどうぞ、たとえ一言でもいいので、是非お話を聞かせください。
もちろん、もう何度も書いてるよ! という方からもお待ちしています。
あと、また最初から読んだからまた書くわ! という奇特な方がもしこの星に存在するのなら、当然のごとく大歓迎でございます!(必死)
そしてもし楽しんでいただけましたら、どうぞ評価の一つもしてやってください。お願いします何でもしまふくろう。
……ということで、約二年という長時間お付き合いいただき、あらためまして、本当にありがとうございました。
この作品が、皆様の貴重なお時間を埋める、意味のある一時となれますように。
さて次回作についてですが、諸事情につき投稿日がまだわかりません。
一月、二月空いてしまうかもしれませんし、一週間後にしれっと始めているかもしれません。
投稿の際はツイッターか活動報告でお知らせしますので、よければそちらの方の登録もお願いいたします。
次の作品でまた皆様とお会いできることを心から願っております。
それでは、また!
伊瀬ネキセ




