表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
238/280

第二百三十七話 100万bloodトラップコンボ

 ――罠を仕掛ける。これまでで最大級の。


 僕の頭の中でもっとも輝いた作戦が、この街の流儀に沿っていたのは、ある意味で必然的に思えた。

 多くの種族が揃う史上稀なこの街で育った、何よりも新しく瑞々しい力。古い時代の怪獣を打ち倒すにこれほどふさわしいものはない。


 パスティスたちが上空で囮役を続けてくれる間、僕は大急ぎでリーンフィリア様のところに戻った。

 正確には、突撃隊のところへ。


「女神様、彼女たちを僕にください!」


「<〇><〇>」


「いや言葉足らずでした! 彼女たちの力を僕に一時的に預けてください!」

「わたしたちを?」


 軍曹が訝しげに聞く。

 僕は作戦の概要を早口で告げる。


「〈雪原の王〉の角を折って、防御手段を奪う。それから、竜たちで高空からの魔法攻撃で心臓を撃ち抜く」


 作戦はシンプルだった。この土壇場での作戦なのだから、むしろシンプルさこそ重要だ。


「そのための前段階として、仲間が罠を使ってヤツの足を止める。突撃隊に頼みたいのは、角を折る際の攻撃役だ」

「……我々のアンサラーではあの角を破壊できないぞ」


 軍曹はすべらかな額にしわを寄せて言った。確かめるまでもなくあの七支刀は〈雪原の王〉本体よりも硬い。だからこそ武器にもなり防具にもなりえているのだ。

 が。


「これを使う」


 僕はベルトポーチからある物を手に取って見せる。

〈アグニ〉〈アルマス〉〈ヴァジュラ〉の樹鉱石。


「何これ?」


 天使たちがざわめく。


「これをアンサラーのディスプレイに滑らせることで、火、氷、雷の属性弾が撃てるようになる。でも今回使うのは、これを各属性一発ずつ同じ場所に当てた時に発生する裏ワザ――第三のルーンバーストだ」


 これが、ここにいる僕たちにしかできない本作戦のキモ。

 十挺以上からなるアンサラーでの同時ルーンバースト。

 空間座標に固定された超濃縮魔力攻撃体ならば、あの七支刀の威力にかき消されず攻撃できると信じた。


 僕は樹鉱石を拳で砕き割り、破片を天使一人一人へと渡す。


「ほう」

「へー、きれー」

「こんなので弾が変化するのか……」


 興味津々に樹鉱石を眺める彼女らに告げる。


「そのサイズで効果を発揮するのは一度が限界らしいから、くれぐれも使う順番を間違えないでね」

「ふん、そんなマヌケはいない」


 軍曹が鼻を鳴らして言った。それから、わりと大きめの〈アグニ〉の石を見つつ、


「オメガは、アンサラーのオーバーヒートまでの猶予を異常に減らすことで、一発の威力を高めたりしているようだが、いけ好かなかった。戦いは何が起こるかわからない。自ら継戦能力を削るなどと、バカげたやり方だ。だが、女神の騎士。これはいいな。アンサラー本来の機能はまったく衰えないスマートな改良だ。気に入った。こんな工夫ができるとは、おまえは頭がいいな」

「僕一人の知恵じゃない。いつでもね」


 笑って返す。


「リーンフィリア様。我々は……」

「わかりました。みんな、攻撃時は騎士様の指示に従ってください。この場を離れることを許可します」

『はっ!』


 これで攻撃側の準備は整った。

 次は、罠班だ。


 アディンに飛び乗り、超兵器倉庫があった場所へと急ぐ。

 そこでは、仲間たちが懸命の発掘作業を行っていた。


 お目当ては、ここに保管されていた超兵器パーツの集合体、インゴットだ。

 それで〈雪原の王〉を足止めするだけの強力な罠を作らなければいけない。


 倉庫自体は完璧に倒壊していたけれど、ドルドやアルフレッドらパワー組によってインゴットを掘り出すこと自体は成功したようだった。


「アルルカ、どう?」


 空での囮役から作業班にシフトしていたアルルカは、しかし暗い顔を僕に返してきた。


「大部分のパーツがオシャカになってる。幸いイグナイトは無事だが、パーツが圧倒的に足りない。カイヤを分解しても、まだ……」


 く……。パーツ不足か。

 超兵器のパーツは、広さに余裕のある北部都市の方にかなり移してしまっている。今から取りに戻るのは、時間的にも情勢的にも困難だ。それでも、やるしかないか……。


 作戦に暗雲が立ち込めた、その時だった。


「あたしがいる」


 弾むような軽さで声が割り込んできた。その場の全員がはっと顔を上げる。


「あたしのパーツを使えばいいよ」

「アシャリス……!」


 声の主は彼女だった。

 ここ最近の〈オルトロス〉との手合わせで様々な個所を改良した体に手を当てながら、小首でも傾げるような調子で言う。


「母さん、みんな、何でそんな不安そうな顔してるの? あたしは機械だから、大事な部分が残っていれば平気。それが機械の強み。そうでしょ?」

「た、確かにそうだが、パーツとして分解されてしまったら、おまえはひどく脆く……とても危険な状態になってしまう。うっかり瓦礫の破片が当たっただけでも、どうなるかわからない」

「危険なのはみんな一緒だよ」


 アシャリスは大型マニピュレーターをアルルカの肩に置いた。


「ここにいるみんなも、ここにいないみんなも、みんな命がけで戦ってる。安全な場所なんてない。そしてそれを、そのこと以上に恐れる必要はない。それがドワーフ戦士ってものでしょ」


 彼女に豊かな表情があったのなら、ウインクでもしていそうな声音。アルルカは硬く目を閉じ、自分の中で何かが固まるためのわずかな時間を置いてから、アシャリスの手に自分の手を重ね、うなずいた。


「わかった。でも安心しろ。おまえは必ずわたしが守る……!!」


 そして彼女は目元を乱暴に拭い去ると、その場の全員に聞こえる凛々しい声を解き放った。


「よし、みんな作業に入ろう! 時間はないぞ!」


 罠はあっという間に完成した。

 元々、モニカたちが使っている罠はアルルカがデザインしたこともあり、基本理念はそのまま運用できたからだ。


 この間、上空にいるパスティスたちは極めて繊細な誘導を行ってくれた。

〈雪原の王〉にこちらの動きを悟らせないよう、常に危険に身を置いて敵の注意を引きつけ続けてくれた。

 そうしてひねり出された時間を、誰一人として無駄にしかなかった。


「マルネリア、罠の準備いいか!?」

「大丈夫。いつでもいけるよ!」

「アンシェル、突撃隊は!?」

「みんな撃ちたくてうずうずしてるわ」

「OK! ではこれより、〈100万ブラッド作戦〉を開始する!!」


 さあ、仕上げの時間だ。


序盤からbloodを稼げると罠作りが楽になるぞ(攻略本感)


DLC天使「兵が三体やられたか。まあいいや。どうせ駒の中では最弱」

アンシェル「ライフで受けるわ」

ディノソフィア「まあ『信頼』かけときゃええじゃろ」

シリアスさん「誰かツッコめよお!!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ