2話 影の人
ミロクが目をさますと月の犬が戻ってきた。
何処に行っていたのか、せっかくの白い毛並みが煤まみれだ。
町から聴こえてくる音に気がついたミロクは月の犬の煤をパタパタと掃い
音の方へ走り出した。
蒸し暑い日。
歩いているだけでも汗が出てくる。
音の方へ走って行くと若い音楽家が演奏している。
町の人間は変わらず、何もないかのように音楽の前を通り過ぎる。
「お客さん少ないなー。とうちゃんみたい。」
ミロクは通り過ぎる人間を眺めながらボソッと呟いた。
美しく無機質な音が熱気と供に渦巻いている。
熱気に心をうたれたミロクと月の犬はホゥっとため息をつく。
ところが音楽家達が涙を流し、演奏を止めた。
月の犬は演奏者のところへ走り、きょとんした顔で質問をするのだ。
「どうして演奏をやめちゃったの?」
「お兄さん達の音すごくかっこよいのに。」
歌を歌う男が泣いている。
「僕らの歌う意味を考えて泣いていたんだ。」
男たちは泣き止まない。
演奏を止めても町は何も気にせず進んでいる。
「音楽に意味はあるの?」
月の犬が首を傾げて質問した。
「僕らが音楽を演奏して沢山の人達が離れていったんだ、、。」
「親も愛した人も。僕らの演奏を誰も気にせずに時が過ぎてゆくんだ。」
ミロクが男の手をとり語り掛ける。
「わたし音楽を聴くと違う世界に飛んで行けるからすごく好きなんだ。」
道行く人々は手もとを眺めながらこちらを気にせず歩いている。
「誰も横の人に興味が無いこの町が嫌い。」
「でも、お兄さんたちが歌ってくれる音がこの町から生まれるなら、この町も好きになれるよ。」
蒸し暑さは涙なのか汗なのかわからない幻を魅せる
男達は意味を探すかの様に楽器を手に取り、影の世界へ溶け込んで行く。
男は溶け込む途中、何かを思い出し、ミロクと月の犬の方に振り返る。
「意味は無いのかも知れない。」
小さな種を手渡し消えていった。
彼らが歌ったステージに貰った種を植えたミロクは
こんもりと盛り上がる地面を眺め町に情調を感じ、
「孤独の惑星を彩るには音楽が必要だね」と月の犬は土の香りを楽しんだ。
ミロクと月の犬は”父ちゃんを探す為、また歩き出した。




