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夏休み1
「・・・・。」
無表情でピアノを弾く夏休みのある日
むしむしとした暑さの中、私は部屋に篭って練習する。
ひたすら・・・
ただひたすら・・・
こんなに私が頑張っている間、優花は続と笑い合っているのだろうか?
それを考えると、胸の中で黒い渦が動く。
「・・・・。」
考えていると、楽譜にない音を出す。
まただ。
最近、調子が悪い。
ピアノもヴァイオリンも同じところで間違える。
こんなこと初めてだ。
「はぁ・・・」
本日溜息、18回目。
行き詰ると私は必ず溜息をする
「・・・どうした、久しぶりに行き詰った?」
「・・・裕也。」
薄着の裕也が夏休みの宿題を片手に持ち、ノック無しで部屋に入ってくる
裕也らしい。
「寝ているかと思ったけど、練習していたんだな
必死だな。」
「・・・珍しい?」
「あと大会で一ヶ月もあるのに練習するのは珍しいと思った。」
「そ・・・」
素っ気ない態度をとる私に裕也は察したようだ。
「続と優花か?
アイツらは今、宿題中・・
特に優花は毎年おれ等や従兄弟達に手伝わせるからな。
今年は無いといいな。」




