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半世紀の契約  作者: 篠原 皐月


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第22話 約束

 殆ど惰性的に室内へと入った美子は、部屋の中央に向かって歩きながら、興味深そうに周りを見回した。

(へえ? こういう所って初めて入ったけど、結構まともかも。もっとけばけばしいのかと思っていたけど、色調も落ち着いているし)

 しみじみとそんな事を考えていると、ドアに近い方から声がかけられる。


「おい、コートを掛けるから、こっちによこせ」

「あ、……はい、お願い」

「ああ」

 秀明がさっさと着ていたコートとスーツの上着を脱ぎ、ネクタイも外して纏めてハンガーに掛けているのを見た美子は、慌てて和装コートを脱いで渡した。それを秀明がハンガーに掛けて、目の前のクローゼットにしまっているのを見て、漸く我に返る。


(ちょっと待って! 怒りに任せて思わず入っちゃったけど、どうして私、こんな所に居るのよ!?)

 傍目には落ち着き払っている様に見えながら、美子が内心で激しく動揺していると、クローゼットの扉を閉めた秀明が、今度は慣れた動作で冷蔵庫を開け、中を覗き込みながら尋ねてくる。


「何か飲むか? あと食事がまだなら、ルームサービスも頼めるが」

「いえ、結構よ。踊り納めが終わってから、教室の皆で軽食を摘んで来たから」

「そうか? それなら好きに飲ませて貰う。そこに座れ」

 そして素早く缶を一本だけ抜き取った秀明は振り返り、立ったままの美子に手振りで場所を指し示した。そこを見た美子は、僅かに口元を引き攣らせる。


「座れって、ベッドなんだけど……」

「椅子の座り心地が悪そうだ」

(何で断言……。しかもどうしてジンジャーエールなわけ?)

 戸惑う美子には全く構わず、秀明は彼女の横を通ってベッドの縁に座り、早速缶を開けて中身を飲み始めた。言われた事に困惑はしたものの、わざわざ目の前に椅子を引いて来て座るのもどうかと考えた美子は、結局無言で秀明の横に座った。

 しかし彼女がさり気なく二人の間に、自分の持参したバッグを置いたのを横目で確認し、秀明はジンジャーエールを飲みながら、彼女に分からない程度の笑みを漏らす。それとほぼ同時に美子が身体を斜めにしながら、本題に入る様に促した。


「それで? お話と言うのは何ですか? さっさと済ませて頂きたいのですが」

「ああ、話か……。そうだったな。深美さんからの手紙が、先日無事に自宅に配達されてね。あれを投函したのは美子だろう? どうもありがとう」

「……いえ、どういたしまして」

 なにやら勿体ぶった口調の割には、分かり切った内容であった為、美子は一瞬肩透かしを食らった気持ちになった。そんな美子に軽く笑いかけながら、秀明が話を続ける。


「嬉しかったが、ちょっと驚いたな。一瞬、『あの世から届いたのか?』とか馬鹿な事を思った」

「叔母達にも同様の人がいて、『驚いたわよ、美子ちゃん』と苦笑しながら電話してきた人もいたわ」

「そうか。俺だけじゃなくて良かった。それで、俺への手紙の中身だが、全く深美さんが容赦なくて。あれこれ耳に痛い事が、書き連ねてあったな。一々尤もだから、否定もできないし。まあ、俺を息子同然に思ってくれていた故だろうし、苦笑しながら読んだが」

「……そうですか」

(何なの? わざわざそんな話をする為だけに、こんな所に呼び出したわけ?)

 くすくすと笑い出した秀明を見て、美子は半ば呆れたが、本題はここからだった。


「ところで手紙と言えば、美子の分だけ預かって無かったとか?」

 秀明が横のテーブルに缶を置きながら、チラリと思わせぶりな視線を投げかけて来たと同時に、美子は顔を強張らせて情報の発信源を尋ねる。


「それ……、誰から聞いたの?」

「君の可愛い妹達四人から」

(あの子達! 何をベラベラと喋ってるのよ!!)

 あっさりと即答されて、美子は怒り心頭に発したが、秀明が更に神経を逆撫でする様な口調で問いかけてくる。


「その事についての感想は?」

「……何よ。そのしたり顔は?」

「仲間外れみたいで、ショックを受けて無いのかなと。赤の他人の、俺でさえ貰ってるのに」

 既に分かっている事をわざわざ口にされた事で、美子の忍耐力は早くも限界に達した。そして勢い良く右手を振り上げた彼女は、狙いを離さずに秀明の頬を打って怒鳴りつける。


「悪かったわね、貰ってなくて!! ええ、仲間外れよ。得体の知れない息子もどきだって貰ってるのに!! どう言う事よ、ふざけるんじゃないわ!」

 怒りに任せてそう叫んでから、じんわりと両目に涙を浮かべた美子は鼻をすすりながら両目を擦ったが、かなり派手な音が出たにも係わらず、秀明は頬を押さえたりせず平然としたまま、素っ気なく言い返した。


「別に泣き出すほどの事でも無いだろう。改めて何か言うことが無い位、美子が深美さんの考えを分かってて、信頼されてたって事なんだろうし」

 宥めているのか切り捨てているのか分からない口調のそれに、美子は益々苛立ちを募らせながら怒鳴り返す。


「うるさいわね! そんなの当然よ! 妹が四人もいればお母さんだけで手が回る筈もないし、一緒に面倒見てたし、家の事だってしてたし! だからいつも私は後回しで、年上だからって我慢させられてたもの!」

「そういう感覚は、生憎と分からないな。俺は一人っ子だったし」

「薄っぺらい言葉でも、一応分かるって言いなさいよ。この無神経男!」

「悪いな。デリカシー皆無で。うん、お母さんの側で頑張って来たんだよな? 偉い偉い」

 小さく笑いながら頭を撫でる様に伸ばしてきた秀明の手を、美子はすかさず払いのけて、再度彼の頬を打った。


「余計ムカつくわ!! もういい、とっとと消えてよ!! 馬鹿ぁぁぁっ!!」

 そこでとうとうベッドに突っ伏して盛大に泣き出した美子を眺めた秀明は、何故か少し安堵した様な顔付きになってから、徐に言い出した。


「それで……、さっき言ってた深美さんからの手紙なんだが……」

「……ふぅっ。なっ、何よ? まだ何か嫌味を言うつもり!? どこまで性格悪くて暇人なのよ、あんたはっ!!」

 美子は何とかしゃくりあげるのを止めて顔を上げ、秀明を鋭く睨み付けたが、ここで彼は予想外の事を言い出した。


「実は美子宛ての物は、俺が預かっているんだ。ちょっと待ってろ」

「…………え?」

 目に涙を浮かべたまま、当惑して固まった美子をその場に放置し、秀明は立ち上がってクローゼットの方に向かった。そしてベッドの上に起き上がった美子が唖然として見守る中、自分の鞄の中から大き目の封筒を取り出し、それを手にしてベッドに戻って来る。

 そして元の様に座った秀明が、封筒の中を覗き込んで一通の封書を取り出し、それを美子に向かって差し出した。


「これがそうだ」

「は?」

「ほら、渡したぞ。無くすなよ?」

 まだ状況判断ができずに呆けていた美子の手に、秀明がその封書を握らせた途端、一気に正気に戻った彼女は驚愕の叫び声を上げた。


「え、えぇぇぇぇっ!? なっ、何で、どうして、あんたがこれを持ってるのよっ!!」

「俺宛の物の中に、同封されてた」

 軽く手にしている封筒を持ち上げて見せると、美子が驚きを抑え込んで考え込む。


「そういえば、確かに窓口で他の物と一緒に料金を計算して貰った時、どうしてあなた宛ての物だけサイズが一回り大きいのかしらと思ったけど……。そうじゃなくて! じゃあどうして届いた時点で渡してくれたり、教えてくれないのよ! 意地が悪過ぎるんじゃない!?」

 美子にしてみれば当然の糾弾だったのだが、秀明は小さく肩を竦めて弁解した。


「すぐに渡したいのは山々だったんだが、同封されていた深美さんからの手紙で『美子が大泣きしたのが分かったか、秀明君が泣かせたら渡して頂戴』と指示されていたからな」

「何なのよ、それはっ!!」

「嘘じゃない。ほら、これがその事が書いてある部分だ」

 封筒から取り出した何枚かの便箋のうち、該当箇所を抜き出して秀明が差し出した為、美子は封筒を傍らに置いてそれを受け取り、内容を確認し始めた。そして確かに母の筆跡である事を確認した美子が黙り込むと、秀明が溜め息を吐いてその内容について言及する。


「お前があまり自分の感情を表に出さないタイプなのを、深美さんが随分心配してたみたいだな。自分の葬式で色々頑張り過ぎて神経をすり減らしたり、無制限にストレスを溜め込みそうだと懸念したらしい。だから変わらず淡々としている様なら、俺に『人間サンドバッグかサッカーボールになって、ストレスを発散させてあげて欲しいの。秀明君なら美子を怒らせるのは得意でしょう? 怒ったら泣くと思うし、宜しくね』だと」

「…………」

 黙り込んだ美子の手の中で、秀明宛ての便箋がぐしゃりと音を立てて皺になった。そして怒りを溜めこんでいるかの如く、無言のままボタボタと便箋に涙を滴り落とさせている美子に、秀明がのんびりとした口調で声をかける。


「取り敢えず、泣くか怒るか、どちらかにした方が良いと思うぞ?」

 その台詞で色々振り切れたらしい美子は、便箋を放り出し、泣き叫びながら両手で秀明の胸をボカボカ叩き始めた。

「ばっ、馬鹿ぁぁぁっ!! 持ってたのなら、さっさと出しなさいよ! 本当に底意地悪いわね!」

「ああ、俺の性格が悪いのは自覚があるし、周囲からもそう思われてるぞ?」

 そこで今度は、美子は胸倉を掴んでがくがくと前後に揺すり始める。

 

「開き直る気!? この間、私がどれだけ惨めな思いをしたと思ってるのよ!?」

「分かった分かった。ほら、好きなだけ殴るなり蹴るなりして良いぞ?」

 両腕を広げて無抵抗をアピールした秀明に、美子が盛大に噛み付いた。


「私、そんなに乱暴者じゃ無いわっ!!」

「そうか? 初対面で蹴りを入れられたが」

「一々、言い返してくるんじゃないわよっ!!」

「それに今、随分叩かれたし」

「叩かれる様な事を、しているからでしょうが!!」

 そんな調子で散々叱り付けた後、怒る気力が無くなったのか美子は秀明にしがみついて「うえぇぇっ」と泣き出し、秀明は一瞬驚いた顔を見せたものの、苦笑して背中に腕を回して軽く撫でてやった。

 そのまま愚痴と文句と悪態交じりの泣き声が暫く続いていたが、次第に美子の泣く勢いが弱まり、頃合いを見て秀明が冷静に声をかけた。


「少しは落ち着いたか?」

「……う、はい。すみません」

 我に返って、顔を付けていた部分の布地が自分の涙でしっとりと濡れているのを認識した美子が、気まずそうに身体を離して頭を下げると、秀明が何気ない口調で言い出した。


「それなら寝るか。結構良い時間になったし」

「え? 帰るんじゃないの!?」

 まだ深夜と言えるほどの時間でも無かった為、思わず慌てて問い返した美子だったが、それに秀明は盛大に顔を顰めて言い返した。


「これから? その化粧の崩れた酷い顔で? それ以前に、俺は明日までは仕事なんだ。勤務時間が終わっても色々忙しかったから、もう移動するのが面倒だ。このまま寝て、明日早めに起きて移動する」

「……申し訳ありません」

 本気で嫌そうに顰められた顔を見て、美子は神妙に頭を下げた。すると秀明が立ち上がって歩き出す。


「じゃあ、皆から預かっておいた物を渡すぞ」

「皆からって?」

 戸惑う美子には構わずクローゼットまで行った秀明は、今度は鞄をそのまま持って来て、机の上に持参した物を並べ始めた。


「美恵ちゃんと美実ちゃんからは、美子が普段使ってるクレンジングや化粧品のセット」

「あの二人だったら知ってるわね……」

「美野ちゃんからは、伸縮性の着物ハンガー」

「……気が利くわね」

「それから美幸ちゃんは、パジャマって言ってたな」

 さり気なく言われた内容に、美子は微妙に顔を引き攣らせた。


「あの子、何を準備してるのよ。じゃあ皆は、私が今日ここに来てるのは……」

「当然、了承済みだ。社長には適当に誤魔化しておくからと言っていたしな」

「……そうですか」

 大き目のポーチやビニール袋、紙袋を説明付きで出された美子は、妹達には今夜の事は筒抜けかと、盛大な溜め息を吐いた。それを見た秀明は、自身の濡れているワイシャツを軽く摘み上げて見下ろしながら、バスルームに向かって歩き出す。


「結構濡れたからちょっと気持ち悪いし、シャワーを浴びがてら着替えてくる」

「あ、はい……、どうぞ」

 思わず反射的に頷いてから、美子は改めて渡された物をしげしげと眺めた。


「もう、あの子達ったら、何を考えてるのよ。確かにアメニティグッズはあっても、使い慣れた物の方が良いから嬉しいけど。着物用のハンガーは、本当に助かったわね」

 それから手早く帯を解いて着物を脱ぎ、ハンガーを伸ばして着物や帯を掛け、紐などの小物を手早く纏めた美子は、長襦袢に腰紐を締めた状態になってから、美幸が寄こしたという紙袋に手を伸ばした。


「じゃあせっかくだから、これを着ようかしら」

 そして中身を取り出そうとした美子は、縁を留めてあるシールを剥がして中を覗き込み、意外そうに首を傾げた。


「……え?」

 疑問に思いつつも中に入っている布地を掴んで引っ張り出した美子は、明らかになったその代物を見て、こめかみに青筋を浮かべる。

 胸下で切り替えて、フレアーが広がっているハイウエストのワンピースタイプのそれは、色こそ光沢のある明るいアイボリーではあったが、そもそも生地自体がしなやかで薄く、デザイン的にもオフショルダー仕立ての胸元とミニ丈の裾が、幅広く透けているレースのラインになっており、間違っても一般的なパジャマとは言い難い代物だった。


「美幸……。あの子ったら、一体何を考えてるのよっ!!」

 元通り袋の中にそれを突っ込み、怒りに任せて叫んでから、美子はこの間すっかり忘れていた物の事を思い出した。

「そうだ、手紙!」

 慌ててベッドに戻ると、そこに放置されていた封筒を発見し、美子は思わず安堵の溜め息を漏らす。


「良かった。家に帰って、落ち着いたら読もう」

 そしてバッグの中に、美子が渡された封筒をしまい込むと、手早くシャワーだけ浴びて来たらしい秀明が、部屋に備え付けの前開きタイプの寝間着に着替えて、バスルームから出て来た。


「このまま掛けておけば、朝には乾いてるよな? 出勤前に、一度家に戻って着替えるし」

 ブツブツとそんな事を呟きながら、着ていた服を抱えて出て来た彼は、手早くクローゼットにワイシャツやスラックスを掛けてから、何となく無言で彼を凝視していた美子に向き直り、不思議そうに声をかける。


「何を呆けてるんだ? 風呂を使って良いぞ?」

 それを聞いた美子は、弾かれた様に立ち上がった。

「あ、ええと……、疲れたから顔を洗うだけにするわ」

「そうか。じゃあ、先に寝てる」

「……おやすみなさい」

「おやすみ」

 そしてさっさとベッドに入って掛布団に潜り込んだ秀明を眺めてから、美子はコスメ用品を手にしてバスルームへと向かった。


(ええと、本当に大人しく寝るわけ?)

 備え付けのヘアバンドを使って顔を洗い、いつも通りのケアを行いながら困惑しきりの美子だったが、恐る恐るバスルームから出て来て相手の様子を窺っても微動だにしていない為、段々腹が立ってきた。


(何かもう、熟睡しているみたいだし。一人で変に意識した私が、馬鹿みたいじゃない。じゃあ手を出して欲しいのかって言えば、そうじゃないけど……)

 秀明と自分、双方に理不尽な腹立たしさを覚えながら、美子は寝る為に長襦袢姿のままで掛布団に潜り込んだ。


(この人にしたら、別に私なんか相手にしなくても、不自由はしないんでしょうけどね。全くムカつくったら)

 そして腹立たしさで眠れないかもと密かに思っていた美子だったが、色々目まぐるしく状況が変化して精神的に相当疲れていたのか、布団に潜り込んで五分もしないうちに、正確な寝息を立て始めた。それから十分程して、実は寝ていなかった秀明は、隣で寝ている美子を起こさない様に慎重に上半身を起こす。


「さて……、寝たよな? あと一つ、やっておかないと」

 そう呟いて床に降り立った秀明は、テーブルの上に置いておいた携帯を片手に、バスルームへと向かった。そして脱衣所に入るなり、電話をかけ始める。


「夜分恐れ入ります、社長」

「全然恐れ入っている様に聞こえないのは、俺の気のせいか?」

 打てば響く様に返って来た声に、秀明は思わず笑ってしまった。


「それは気のせいですよ。しかし、如何にも待ち構えていたと言う感じで、出ないで貰えますか? それにもういいお年ですし、そろそろ夜更かしは翌日に響くのでは?」

 茶化す様なその物言いに、昌典が気分を害した様に言い返す。


「平気で電話をかけてきた人間が何をほざく。第一、俺はまだ五十代前半だ。それよりも」

「以前言われた事は、遵守していますから。安心して、お休みになって下さい」

「……本当だな?」

 若干疑わしそうに確認を入れて来た昌典に、秀明は相手に聞こえる様にわざとらしく溜め息を吐いてから言葉を返した。


「社長に嫌われたくありませんから。深美さんの次に、社長の事は好きですし」

「深美の次だと?」

「はい」

「それなら美子は?」

 その問いに、秀明は一瞬真顔で考えてから、彼なりに正直に答えた。


「……社長の次でしょうか?」

「もういい。寝る」

 そこで唐突に通話が終了された為、秀明は「微妙に怒らせたか?」と苦笑しながら携帯を耳から離した。


「さて、寝るか。睡眠不足で仕事にならないなんて事、社長が許す筈も無いしな。確認の為に、わざわざ俺の部署に乗り込んで来そうだし」

 そしてベッドに上がって再び掛け布団に潜り込んだ秀明は、寝返りを打ったのか、いつの間にか自分と向かい合う形で熟睡している美子の顔を眺めながら、物憂げな表情で囁く。


「二回目だからな……。俺は本当に平気ですよ、深美さん」

 そして秀明は、可能な限り睡眠時間を確保すべく、静かに両目を閉じて眠りについたのだった。



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